■2015年12月
■瞼ノ裏 vol.2 新世界標本 release tour final(2015年12月23日)@新宿Antiknock
今回はそのリリースツアーのファイナルだが、ハードコアのバンドは全く呼ばずに様々なジャンルからwombscapeと共振するバンドを集めたイベントとなった。そしてこのツアーファイナルを最後にオリジナルメンバーであるギタリストkijo氏が一旦バンドを離れる事になる。現編成でのwombscapeのラストライブでもある。
wombscapeで素晴らしいギターを弾き、バンドにとって絶対不可欠な存在であるkijo氏の離脱は長くに渡ってこのバンドを追いかけてきた僕にとっても寂しい物はあるが、その勇姿を笑顔で見届けるべく今回足を運ばせて頂いた。
・浅ハカニ吠エル
エモヴァイオレンスを基調とした音に独自の演劇的世界観を含ませた異形のバンド浅ハカニ吠エルからイベントはスタート。以前観た時はベースレスで、個々の表現力の高さはあったが、どうしても低域の音の弱さを感じてしまうライブだったが、コントラバスとしてホンダリョウ氏が加入。ずっと4人になってからの彼女たちを観たかった。
結論としてコントラバスの加入は大正解であったと思う。ただ重低音を加えて音の厚みを増幅させるだけで無く、独特の音の淀みや苦味を加える事に成功したと思う。
新曲「シロツメクサ」は勿論、他の楽曲も以前ライブを観た時と見違えるまでになり、ポエトリーと叫びによる中性的なナイトウ嬢のボーカルが生み出す不気味な世界観も、ササキ氏の攻撃的極まりないギターも含めて音全体がよりガツンと胸の辺りに響く物になった。
バンドとして大きくパワーアップを果たし今後に期待だったが、イベント当日のライブ後にまさかの解散発表。この日のステージが浅ハカニ吠エルのラストステージとなってしまった…
最後のアウトロでの「永遠にさようなら。」の言葉はそういった意味であった事を知り、非常に悲しい想いだ。バンドのこれからの飛躍を感じるライブだっただけに解散は惜しい…
・MERMORT
MERMORT sounds filmからMERMORTへと改名し、新たなるプログレッシブサウンドを提示した2ndアルバムをリリースしたMERMORT。この日はTableの岩清水氏をベースに迎えての編成のライブ。ドラム前に布を設置し、そこにVJを映すだけで無く、上手と下手には「NO WAR」の文字を映したディスプレイと拳銃の画像のディスプレイを展示する視覚的にも挑発的なセッティング。
しかし前にライブを観たのはMERMORT sounds film時代だったけど、暫く観ない間に化物みたいなバンドになった。ギターとキーボードが変態なんて言葉じゃ片付けられない音の連続を繰り出し、捻じ曲がり捲った波長を生み出す。基盤となるリズム隊の技量も凄まじいからこそ音が自由に変化していく。基礎的なフォーマットはプログレッシブなインストではあるけど、他に類を見ない音の情報量に押しつぶされる。
元々激情ハードコアの人間がその先の音をどこまでも理想的に提示したのがMERMORTだと思うし、曲も決して短くない筈なんだけど、一曲一曲があっという間に過ぎ去っていく。彼らが提示しているのは紛れもなくカタルシスを積み重ねに重ねた衝動であり、言葉が無い音楽であるからこそ、音でどこまでも語る。
30分近いセットは本当にあっという間に終わってしまったし、欲を言えば一時間はMERMORTの音に酔いしれていたかった。彼らのライブは全く新しいトランス体験なのだ。
・Archaique Smile
こちらもライブを観るのはかなり久々になってしまったArchaique Smile。今年はライブ活動を殆どしていなかったらしいが、そのブランクは全く無し。そしてバンドが新たなる実りを季節を迎えつつある事を感じるライブアクトだった。
彼らの音楽性は正統派の轟音ポストロックであり、ツインギターが織り成すオーガニックな轟音の旋律は健在。だけどこれまでのArchaique Smileは非常に幽玄な音であったが、それを後退させずに音がより重くソリッドに変貌していたのが驚いたし、手法自体はこれまでと大きく変わった訳では無いとは思うけど、体感する音は完全に別のバンドになっており。素晴らしいバンドでありながら、何処か優等生的でもあった彼らがその文脈から少しずつ脱却しようとしているのだ。
しかしながら改めてArchaique Smileはライブでこそ体感したいバンドだと今回思った。音源のクオリティも十分高いけれども、この幽玄で壮大な世界はライブで体感してナンボ。彼らも言葉が無い音楽を鳴らすからこそ、音が詩人となるバンドだし、だからこそよりストイックでアグレッシブさが増した今のArchaique Smileのライブには確かな説得力があると思う。
今年は活動自体かなり控えめではあったが、来年のライブと来るべき2ndアルバムへの期待が膨らむライブであったし、Archaique Smileが目指すオリジナリティは何処に到達するか今から楽しみだ。
・Presence of Soul
そして轟音要塞Presence of Soul。しかし何度ライブを観てもアンプの壁と大量のエフェクターの要塞には視覚的な面でも圧倒されるが、音の方は更に圧倒的。日本が生み出したYear Of No Lightだと僕個人は思っているが、本家にも負けない濁流の轟音をライブでは生み出してくる。
先日本当に久々のリリースとなった「All Creation Mourns」も素晴らしい作品であったが、このバンドも音源だけじゃ全ての魅力は伝わりきらない物があり、是非ともライブでこそ体感して欲しいバンドだ。音源ではシューゲイジングな轟音が際立つ音作りになっているけど、ライブは全ての音がブラックネスでありヘビィネスである。音量面も耳に痛い音は全く無いのだけど、音の壁が目の前に生まれているのと、岩石を放り投げられ激突する感覚を覚える。
メンバーそれぞれの演奏自体は非常に丁寧ではあるけど、その冷静さの中の熱情が見えた時には既にPresence of Soulの音に飲み込まれてしまっているのだ。
そんな極限のヘビィネスを繰り出してラストは神秘的でありレクイエムの様な悲哀を描く優しく切ない轟音大曲なのだから色々とズルい。ラストのトリプルギターのトレモロの嵐は本気で震えた!!
だけど一つだけ文句があるなら折角wombscapeとの対バンだったから、wombscapeのRyo氏がゲストボーカルを務めた「Genom」もプレイして欲しかった!!いつかの機会に是非ともPoSとRyo氏のコラボもお願いします!!
・wombscape
そしていよいよkijoさんのラストステージとなるwombscapeのライブ。「新世界標本」リリースから全国を駆けずり回った彼らの集大成とも言えるライブであったが、これまでの数多くのライブで鍛え上げた「新世界標本」の楽曲たちは完全にバンドに馴染んでいたと言えるだろう。
セット自体は「新世界標本」を曲順に演奏するという物ではあったが、「真白な狂気」といったハードコア色の強い楽曲はより尖りきった音へと変貌を遂げていて、バンドの成長を強く感じさせる物に。
個人的に凄く心に残っていたのはkijoさんが終始何かがこみ上げそうな表情でギターを弾いていた事だ。wombscapeというバンドはボーカルでコンポーザーのRyo氏を中心としたバンドではあるが、kijoさんのギター無しではwombscapeの楽曲は成立しないとさえ思っているし、wataru氏とsatoru氏のリズム隊の存在も勿論大きいけど、kijoさんのギターの表現力は天才以外の言葉が思い浮かばないのだ。
最早wombscapeを象徴する楽曲にまでなった「正しい愛が正しい絶望に変わるまで」のRyo氏の歌と凍えるまでの美しいkijoさんのギターが生み出す視覚的美しさはこの日のライブで一つの完成形を見た。そしてラストの混沌の絶望の瞬間は感極まりそうに観ていてなったよ。ほんの少しだけRyo氏が声を詰まらせそうになりながら歌っていた瞬間も含めて、アートしての音楽じゃ無くて、感情としての音楽を見た気がする。
そして本編終了後にこれで終わりかと思ったら、kijo氏の使用していたアンプの一台が下手側に移動され始める。そしてそこには見慣れない男がセッティングを始めているじゃないか。その男はこの度新たにwombscapeの新ギタリストとしての加入が発表されたHiroki氏だ。そして5人編成で今年に入ってから全くプレイされていなかったwombscapeの看板曲「黒い絵具」をプレイ!!
まさかの2部構成で昔からwombscapeを追いかけていたファンにとっては嬉しいサプライズだったと思う。先程までと変わってwombscape流のカオティックハードコアを展開し、kijo氏のノイジーなギターがアンチノックを埋め尽くし、ライブは終了。こうして約三ヶ月半に及ぶ「新世界標本」リリースツアーは終了した。
まさかの浅ハカニ吠エルラストライブ、そしてwombscapeからkijoさんの離脱と色々な節目となった夜ではあったが、ハードコアに囚われない5バンドが生み出したまた違う激音のぶつかり合いは非常に心に残るものだったと言える。
wombscapeからkijo氏は離れてしまったけど、僕個人が勝手に思っているのはまた一年後辺りにkijo氏はフラッとwombscapeに戻ってくる気がする。wombscapeはHiroki氏を新ギタリストに迎え、来年も活動を継続していく。これからの展開はまだアナウンスされていないが、これからも素晴らしい音楽を作り続けていくだろう。
浅ハカニ吠エル、kijoさん本当にお疲れ様でした。また何処かで会う日まで!!
■CYCLAMEN presents 音ノ結 vol.2(2015年12月19日)@渋谷CYCLONE
この日はSikTh来日公演等もあり、数多くの企画が被りまくりな激戦日ではあったし、それぞれの企画者は集客などかなり苦戦していたとは思うけど、この日のサイクロンは他の何処にも負けない熱さがあった。
・forgivs
先ずは福岡のforgivsからイベントはスタート。このバンドは今回初めてライブを拝見させて頂いたのだが、オートチューンを巧みに使ったスクリーモバンドバンドといった趣。ドラムの男性もスクリームを聴かせるが、叙情的でヘビィなサウンドでは無く、寧ろ女性ボーカルの豊かな表現力を聴かせるバンドだと思った。
アグレッシブで混沌としたアンサンブルではあるけど、キャッチーな歌メロを存分に生かし、高揚感を与えるライブとなっていた。初見だし、決して普段聴くタイプのバンドでは無かったけど、でもそんな好みだとか関係なく、胸を打ち抜く真摯なライブと美しい歌声に惚れ惚れさせて頂いた。
・kallaqri
お次も地方からの刺客。レペゼン青森激情ハードコアkallaqri。異物感と下手したら人によっては不快感すら感じてしまうであろう薄気味悪い不気味なメロディがkallaqriの大きな魅力だけど、そんな独創的なセンスすら吹き飛ばすライブのテンションが凄い!
ツインベースで片方のベースはベースなのにギターの音がする偽物のベースだとかって部分はこの際関係無い話なのだ。こうした変則的な要素以上に、kallaqriはハードコアとして理想的なバンドだ。音源でも十分にテンションの高い音を提示するが、ライブはその上を余裕でいく。
kallaqriのライブは決してただ音源通りに演奏しますよな発表会には絶対にならない。飛び散る汗も決死の表情も含めて、その瞬間にしか見る事が出来ない衝動、その瞬間にしか感じる事が出来ないカタルシス!!それはkillieがライブで提示しているあのハードコアの衝動と同じなのだ。そうだkallaqriはライブでこそ真価を発揮する。
kallaqriは何度観ても限界を軽々しく突破してくる。kallaqriのタフネスは底を尽く事が本当に無いと確信出来る!!
・THE CREATOR OF
ここで空気を完全に変えてしまったのは御大・THE CREATOR OF。サイクロンでのライブは実に一年振りとかだったけど、このバンドはサイクロンとの相性は最高で、蜜月の関係だと言えるだろう。
後光のみの神々しい証明や、持ち前の美轟音をダイナミックに発信出来る音響環境も含めてサイクロンで観るTCOは別格だと言える。
この日は「Pass Away」のオーガニックな音像から始まり、「Wind Up」と「You Are」で悲哀を生み出してからの、「Black Star」でループする音の高揚感で締めくくられたが、このバンドに関してはポストロックというカテゴライズも最早不可能だろう。ライブ毎により複雑に変化していくアレンジ、爆音のダイナミズムとミニマルな繊細さの狭間をすり抜け、独自の神秘的な感覚を音で構築しながらも、一本の筋となった美しいメロディ。ポストロック的美轟音、TOOL的プログレッシブさ、そしてグランジ的な音の歪み、全てひっくるめてTCOには必要不可欠な物だ。
今年はマイペースなライブ活動の一年ではあったが、よりライブのクオリティも上がり、バンドは完全に一枚岩になって来ている。そうなると早く4thアルバムのリリースを心待ちにするしかないじゃないか!!来年も引き続きTCOは追いかけて行きます!!
・MergingMoon
そして再びヘビィスクリーモなMergingMoon。こちらも初見のバンドだったが、キーボードを加えた編成で、ボーカルの女性は着物姿。メンバーの出で立ちを含めてちょっとV系っぽさもあったり。オートチューンとキーボードの音が華やかさを感じさせたりもするけど、バンドの音は非常にゴリゴリの音。ちょっと昔のMUCCとかあの辺りのテイストもあったりして妙に懐かしく感じたりもしました。
ボーカルの女性はちょっとゴアグラインドっぽいグロウルも含めて極悪なシャウトを聴かせるスタイル。音自体が退廃的なテイストを感じるメロディだからこそこれが妙にハマっている。後ろの方でゆっくり観ていたけど、バンドの雰囲気なども含めて中々重い白いバンドだと思いました。
・Cyclamen
随分と観るのが久々になってしまったし、今回改めてライブを観るのが楽しみだったCyclamen。この日はアグレッシブかつプログレッシブな楽曲は完全に排除し、クリーントーン主体の歌物の曲中心のセット。久々に観たけど、今西氏がステージのドラムセットが本来設置してある辺りで歌っていたり、ドラムが上手に設置されていたりと、ステージングもだいぶ変わったなあ。
この日はメンバーの仁氏がDEADLY PILESのライブだったので、Arbusのドラムの方がサポートで叩いていたけど、違和感も全く無い辺りは流石である。
メロディを聴かせる曲ばかりのセットではあったが、相変わらず演奏技術が半端無く高すぎる!!ディストーションのサウンドやお家芸のピロピロ変態タッピングサウンドが控えめになっているからこそ、逆にメンバーそれぞれの技術と表現力の高さが際立つ。特に「神武不殺」の勝乗君のクリーントーンのタッピングフレーズはいつ聴いても眉唾物だ。
でもそんなセットでもラストはしっかりアンセム「Never Ending Dream」で締めくくり。久々にライブを観たけど、バンドがよりパワーアップして充実の時期を迎えてるのを感じた良いライブだった!!
こうして充実の5バンドを堪能した夜になりました。今回僕が個人的に大好きなTHE CREATOR OFとkallaqriが一緒に殺り合えたのは凄く嬉しかったし、他の人が組まない様な対バンを組んで下さったCyclamen今西さんには改めて感謝です。
本当はジャンルの壁なんて物はとっくの昔になくなっていると個人的には思っている所もあって、そんな壁は誰かが勝手に作っているだけでしか無いと思っている。でもそんな壁なんてやっぱり存在しないって事を今回の「音の結」で改めて再確認出来ました。本当に楽しかった!!
■Guilty Forest&MOCHI presents Under the Surface Vol.1

これを書いている今でもまだ実感は正直無い所もあるんですけど、無事にGuilty Forestとしての初の自主企画となる「Under the Surface」を終了する事が出来ました。
企画告知の際のステートメントにも書いた事ではありますけど、日本には沢山の素晴らしいエクストリームミュージックのアーティストがいる中で、氾濫する情報によって、それらが過小評価されてしまっている現実に対する挑戦、人から見たらアンダーグラウンドと呼ばれてしまっている物を少しでもオーバーグランドへと届けたいという想いから共同主催者のMOCHIとあーだこーだ色々話し合って今回の企画を進めて来ました。
その結果自分たちとしては本当に間違いの無い4バンドに出演して頂ける運びとなれたのは心から嬉しい事であります。
実際当日になるまで、無事に企画を終える事が出来るかという不安はありました。ライブハウスのレンタルから出演バンドへのオファー、フライヤー制作や各種SNSでの告知等、全てが初めての事だったので。
そんな中、ミアツカアキタ氏(オニギリワークス)が最高のフライヤーをデザインして下さり、僕が大好きなハコである二万電圧のスタッフの皆さんの熱い協力、各出演バンドさんが僕らみたいな実績の無い若造にしっかりと応えて下さった事、当日遊びに来ていた友人のフォトグラファーKimihiro Katoが「お前のiPhoneで撮影するよ。」と言ってくれて、結果iPhoneクオリティとは思えない写真が返って来た事、何よりも当日沢山の人が二万電圧へと足を運んで下さった事。全てに感謝してもしきれません。
・Su19b
先ずはSu19bがトップから二万電圧を完全に地獄に染め上げてくれた。今回出演して下さった4バンドは殺人的爆音をライブで放つバンドばかりだったけど、音量と音圧に関してはSu19bが完全に圧勝していたと思います。
パワーヴァイオレンスというジャンルや言葉自体がフリークスだけの物になってしまっているし、多くの人からしたら馴染みが無い物なのかもしれませんが、Su19bはそんなカテゴライズすら無効にする世紀末をライブで生み出してくれたのです。
お家芸である激遅スラッジサウンドと激速グラインドサウンドの連続、それにブラッケンドのテイストを加えたドス黒さ、大地すら揺らす重低音が生み出す感情移入の余地すら許してくれない破滅の音。初見だった人は恐怖すら覚えたのでは無いかと思います。何よりも僕が一番大好きな曲である「World Is Doomed To Violence」をラストにプレイして下さったのは本当に嬉しかった。
今年の1stアルバムリリースまで決してライブも多くなかったバンドだけど、アルバムリリース以降の精力的なライブ活動の後押しも出来たと思いますし、このバンドは東のCorruptedと一部で評されるだけの世界観とライブを提示している。だからこそもっと多くのうるさくて重くてドス黒い音楽が好きな人には1秒でも早く触れて欲しいと心から願います。




・bilo'u
二番手はbilo'u。このメンツの中だとかなり異質に感じた人も多いのかもしれませんが。そもそも異質でオリジナリティしか無い4バンドにご出演お願いした訳ですし、僕たちとしてはbilo'uの出演は必然でした。
この日は都合によりサポートドラマーを迎えてのライブでしたけど、これで普段の編成じゃ無いとか嘘だろっていうライブのクオリティに驚かされてしまいます。
メンバーそれぞれの演奏技術の高さは最早言うに及ばないのですけど、やはりbilo'uは単なるテクニックだけのプログレメタルやカオティックとは全然違うのです。持ち前の演奏技術を徹底して気持ち悪いレベルで観る物の脳髄を粉砕する音の連続で攻めに攻める!!
そんな十進法すら崩壊した音を和音階で鳴らすけど、ライブでのbilo'uはハードコアバンドとしての魅力も発揮しています。音源だけではピンと来ない人ももしかしたらいるのかもしれませんし、こういった類の音が苦手な人もいるとは思いますけど、bilo'uのライブは変拍子とマッドサイエンティストな音の配合以前に、ハードコアとしての直情的な熱だったりヘビィさを音源よりずっと出すのです。これは実際にライブを観ないと本当に分からないと思う。本当に素直に格好良いバンドなんですよ!!




・ZOTHIQUE
3番手はZOTHIQUE。ここからは45分のロングセット攻勢で更に深く濃くなっていくゾーンでしたけど、個人的にZOTHIQUEのライブはロングセットで観てこそ真価が発揮されると思っていたのもありましたし、実際に45分に渡って金星と地底を飛び交う重低音とキーボードとノイズとリフの嵐、震えました!!
ここぞとばかりに長尺曲をお見舞いしまくってましたが、アンビエントでポストロッキンな美しい高揚感から、煉獄の重低音の暗黒ドゥームまでを行き来出来るZOTHIQUEの音は唯一無二だと思います。ZOTHIQUEの恐怖担当であるキーボードの濁朗氏もいつも以上にタガの外れたパフォーマンスを繰り出していたのも嬉しかったです!!
そんな地獄と天国を行き来する展開から1stのハードコアに爆走しまくる大名曲「The Immortal」の極悪リフの行進が始まった瞬間に僕はガッツポーズをしましたよ!!あらゆる音を行き来しながらもハードコアなZOTHIQUEはやっぱり魂が震えるのです!!
そしてラストの名バラード「Valley Of Tears」はやっぱり何度聴いてもウルッとしてしまいますね。さっきまで超常現象的な音を鳴らしていたのに、最後に行き着いたのはこの悲哀だって思うと涙が止まらなくなります…
今回の45分セットのZOTHIQUEは一人でも多くの人に目撃して欲しかったですし、もっと言えば一時間半とかのセットでも良かったなと思います。ZOTHIQUEという宇宙がそこにあったのです。




・BB
そんな3バンドの異形すぎるライブのとどめはBB以外に考えられませんでした。世代的にはCOCOBATもWRENCHもマイナーリーグも後追いではありますが、時代を作り上げた猛者が現在進行形で誰にも真似させない孤高のダークハードコアを鳴らしているのが僕は本当に嬉しいのです。
今回はカオス感以上にソリッドでシャープな音を提示するライブになりましたが、リフから感じるメロディの退廃的なダークネスはより美しくなり、豪腕極まりないリズム隊の極悪な音に震え、後光のみの照明が照らす中でRyuji氏の衰えるどころかパワーアップしかしていない怒号の連続。凄いよ!!
BBはキャリアに甘えず、寧ろキャリアすら置き去りにしてしまったからこそ生み出せる説得力があります。それはカオティックハードコアとかヘビィネスという単語で片付ける事は到底無理なのです。
個人的には予想外だったモッシュも発生する盛り上がりを見せ、45分の中でより研ぎ澄ます音は観る物を何度も何度もメッタ刺しにし続け。ラストの楽曲でドラマティックさすら放棄した置き去りの怒号で全てを無にする。
もう上手く言えないのですけど、BBの提示する音ってBBにしか生み出せない物ですし、こんな猛者しかいない組み合わせの中で、いやだからこそ実力とかキャリア以上の異次元を提示して下さってたと思います。うん。ヤバい以外の言葉が出なかったですね!!




Photo by Kimihiro Kato
こうしてトラブルも無く無事にUnder the Surface Vol.1を終了する事が出来ました。打ち上げも多くの方が参加して下さり、バンドやお客さんの交流の場として役に立てたのでは無いかと思います。
各出演バンドの皆様が「今回出れて良かったよ!!」とか「このメンツの中に呼んで貰えたのは光栄です!!」って言って下さった事や、他の出演バンドのライブを観て興奮気味に「ヤバいよ!!」って言って下さった事。多くの人が「今日来て良かった!!本当にありがとう!!」って言って下さった事、今回色々担当して下さった二万電圧笹森さんが「今後も継続して行きましょう!!」と言って下さった事は本当に励みになります。何よりも極悪極まりない4マンライブだったにも関わらず、終演後は来てくださったお客さんがみんな笑顔で帰って下さった事が何よりも嬉しいのです。
まだまだ未熟ですし、何もかも初めての事だったので、至らぬ点は多々あるとは思います。ですけど、今回の企画で学んだ事は「改善したり工夫したりする点は積極的にやっていくけど、自分たちの掲げる信念は絶対にブレずに、深いまま少しずつでも広げていく。」という事でした。
外タレが出る訳ではありませんし、決して派手に打ち出せるイベントでは無いのかもしれません。ですけど、今まで誰もやって来なかった事をこれからもっと打ち出していきたいですし、他の人が今まで絶対に組まなかっただろう対バンを組ませて頂き、「Under the Surface」でしか体験出来ない物をもっと打ち出していきたいと思います。何よりも第一回で間違いの全く無い4バンドに出演して頂けた事が一番なので。
次回の「Under the Surface」ですが来年の夏前には開催したいと思ってますので、色々決定しましたらGuilty Forestや各種SNSで告知させて頂きます。だから今回来て下さった皆さんも、来れなかった皆さんも、まだ「Under the Surface」を知らない人も次回来て下さい。来てくれた方は友達とかにこんなイベントあるんだぜって教えてくれたら嬉しいです。
来てくれた皆さん、出演バンドの皆さん、二万電圧の皆さん、ミアツカさん、そしてMOCHI本当にありがとう!!!!!

お疲れ様でした!!!!!
■Limbo/ZOTHIQUE

地底から金星までを行き来する這い寄りながらも彼方へと飛び立つ東京のサイケデリックドゥームカルテットZOTHIQUEの最新音源は1曲20分のバンド史上最大の超大作となった。
今作は年明けの2016年から商品として流通する物だが、2015年12月初頭の東名阪ツアー限定で無料配布され、僕はアースダム公演の方で今作を入手させて頂いたので一足先に紹介の方を書かせて頂きます。
ZOTHIQUEは2013年の1stリリースから毎年アルバムのリリースを重ね、異常な創作意欲を感じさせるバンドだ。2015年にリリースされた3rdアルバムである「Faith, Hope And Charity」で既存のドゥームを逸脱してしまった。
そしてそれから半年弱というスパンで届けられた今作は「「Faith, Hope And Charity」」のJAH氏作曲の「Venus」二部作の流れをより突き詰めたインスト曲。最早ドゥーム要素は消え去ってしまっている。
20分に及ぶ大作ながら前半10分はアンビエントパートという構成。フロントマンの下中氏はそこでピアノもプレイしている。
延々と持続音のくぐもったノイズとピアノのみで10分近くに渡って繰り広げられるアンビエントさはこれまでのZOTHIQUEのアプローチには無かった物だと言える。
そんな前半とは対照的にバンドサウンドになってからの後半は「Faith, Hope And Charity」で金星まで到達したZOTHIQUEがその先へと飛び立って行く瞬間を音にしている。ドゥーム要素は正直に言うとほぼ皆無だと言えるが、煌くキーボードの音に導かれながら、力強くビートがエンジンを鳴らし、ギターが美しく光り輝くメロディを奏でる。そこにはダークさといった要素は全く無く、ポジティブな前進の瞬間を見た。しかしキーボードとギターの音色が溶け合って輪郭を無くし、最後の最後でブラックホールでも飲み込めない新たなるコスモとなり新たなる秩序を生み出す。
たった1曲ではあるが、これまで以上にコンセプチュアルアートな1曲となっている。Limboとは「カトリック教会において「原罪のうちに(すなわち洗礼の恵みを受けないまま)死んだが、永遠の地獄に定められてはいない人間が、死後に行き着く」と伝統的に考えられてきた場所」との意味であり、地獄でも天国でも無い場所の事を指すみたいなのだが、その分かりやすい天でも地底でも無い場所を今作では言葉を借りずに音のみで描いているのだろう。しかしそんな辺境地が実在の宇宙よりも宇宙的であり、地獄よりも深く、天国よりも上にある場所だと思わされてしまう辺り、流石はZOTHIQUEだ。
■ZOTHIQUE & Legion of Andromeda(2015年12月6日)@新大久保EARTHDOM
スタートが20時30分という事もあって非常にのんびりとした感じでアースダムに向かったし、フロアの人々もそんなまったりした空気で開演を待っていたけど、いざ蓋を開けたら地獄と宇宙しか無かった。
・Legion Of Andromeda
先攻はLegion Of Andromeda・ギターとラップトップ兼ボーカルのインダストリアルデュオだが、このバンドのライブが何から何まで拷問だった。
アースダムの入口にも注意喚起の張り紙がされていたが、照明はストロボライトのみが永遠と点滅を繰り返す物。視覚面で既に完全に拷問。来ているお客さんの中にはサングラスを着用している人が何人もいたり。
そして音はビートとリフが終わりなく反復する冷徹極まりないインダストリアル。機械的なビートが終わり無く繰り返され、ギターリフも若干の変化はあるけど、基本はリフ使い回しスタイル。音の使い方自体は確かにミニマルかもしれないけど、これライブで観てミニマルな感触は全く無い。
ギターの音が一々重すぎるのもあるが、爆音で不快感を前面に出した音はその手のフリークス以外は逃げ出すの間違いなし。ボーカルの方は上半身裸でラップトップを操作しながら憎悪を剥き出しにしたボーカルを繰り返す。
基本的に曲のスタイルも楽曲の中で大きな変化は無いけど、反復される原始的憎悪は何故か妙に癖になってしまうし、機械的なビートとリフに体と五感が慣れてくるとそれが何故か快楽的に錯覚してしまうのもある。だけどそれは彼らの音が観る物の脳髄を壊死させてしまっているからだろう。
45分程ストロボの点滅の中で繰り返される破滅的インダストリアル、最後はメンバー二人がエフェクターを操作して生み出されるノイズの洪水の中、ボーカルの方が何故かチ✩ポ丸出しになり「サンキュー!!!!!!」と叫んで終了。その瞬間にやっと救われた気持ちになったよ。
完全に嫌悪感と不快感に塗れたライブだったが、それすらも快楽に変えてしまうドMの心を理解し尽くしているライブは衝撃的だった。
・ZOTHIQUE
後攻はZOTHIQUE。今回は一時間に及ぶバンド史上最長のロングセットだったが、このバンドはロングセットでより良さが伝わるバンドだと思っているから、今回のロングセットはZOTHIQUEが大好きな僕としては本当に嬉しい!!
先ずは今年リリースされた最新作「Faith, Hope And Charity」からのセットでスタート。これまでのZOTHIQUEを完全に裏切りネクストステージへと到達させたインスト宇宙アンビエント「Venus I」の時点で意識はトランスの世界へと導かれる。下中氏のギターがとてもマーシャルアン直とは思えない音の広がりを生み出し、濁朗氏のキーボードが生み出す宇宙と混ざり合う。JAH氏とKoji氏のスロウなビートも重さでは無く広がりをグルーブに託す。これがハードコアを起点に始まったバンドの音だとは僕は信じられない。完全に金星までZOTHIQUEは到達してしまっているじゃないか!!
でもそれだけでは勿論終わらない。「The Tower Of White Moth」の爆走ハードコアで持って行かれた意識を粉砕しにかかる。濁朗氏は暴れ狂いながら文字通りキーボードを叩き、下中氏がドスの効いたボーカルと共にリフを刻み倒す。プリミティブなヘビィネスに満ちているのに、爆走感すら覚醒の音へと変えてしまうZOTHIQUEは化物だろ!!
這い回るリフとキーボードとグルーブが重くのしかかる「Hijra」のヴァイオレンスさも、キャッチーさとサイケデリックさの衝突地点「Faith, Hope And Charity」も曲としては全然ベクトルが違うのに、重く飛べる音であり続けろというZOTHIQUEのライブでの持ち味が完全に活かされた事によって全てが必然に変わる。
そして今後もZOTHIQUEを代表するであろう名バラッド「Valley Of Tears」の全ての音が泣いているのに全ての音が狂ってしまっている、狂気と哀愁の泣き笑いと下中氏の男気溢れるボーカルには先程まで観る者を飛ばす音しか放っていなかったZOTHIQUEからのラブレターと僕は受け取らせて頂いた。
終盤は1stと2ndにゲストボーカルで参加した西東京ハードコアGOUMの久美さんをゲストボーカルに迎えてのコラボ。2ndで一番衝撃的な逸曲「Hypnotic Kaleidoscope」では下中氏がギターをクリーントーンで弾き、物悲しさばかりが滲み出る中、久美さんがクリーントーンで童謡の様でありレクイエムの様な美声を披露。しかしその美しさすら崩壊した瞬間に、久美さんはその美貌からは想像も出来ない鬼神のボーカルで叫び散らす!!ZOTHIQUEメンバー4人の音も完全にタガが外れてしまい、制御不可能な状態!!久美さんは下中氏のマイクスタンドすらなぎ倒し、ZOTHIQUE本体すら食ってしまうパフォーマンスを見せてくれた。この特別極まりないコラボは燃えたよ!!
本編終了後に直様アンコールへ、久美さんがなぎ倒したマイクスタンドをしれっと直す濁朗氏を見てほっこりしたが、最後は初期の名曲「Alkaloid Superstar」のブルージーさと壊れた音が飛び交う宇宙ですら無い何かへと旅立つ。下中氏のギターのチューニングが狂っているのすら太陽系の先へと飛び立つ起爆剤となり、狂乱のままバンド史上最長のロングセットは終了。いやマジで凄い物を観た!!!!!
ZOTHIQUEとLegion Of Andromedaのロングセットの2マンライブは遅めのスタートのライブながらも、たった2バンドで満腹になれる最高のタイマンであり、地底と天上の上下から異世界を生み出す両者のぶつかり合いは新たなる化学反応を生み出した。
何よりもZOTHIQUEの行き着くところは果たして何処なのか僕には全く想像が出来ない。このバンドは既に既存の音とは完全に逸脱した場所にいるけど、それすら捨て去って新たなる地平へと旅立っていくのだろう。
■ONOZATO-san & BUSHBASH presents -TINNITUS(2015年12月5日)@小岩bushbash
REDSHEERとbushbashオーナーである柿沼氏率いる小岩街破阿怒呼亜(小岩シティハードコア)代表ことTialaに加えて、柏が誇る混沌のパーティハードコアDeepslauterと二郎狂い三人によるヘビィロックTwolowの抱腹絶倒4マン。
Deepslauterも昨年最新作のリリースもあり、REDSHEERとTialaとTwolowは今年新作をリリースしライブも絶好調な四者四様の異次元バトルの夜となった。
・Tiala
いきなり小岩のハードコア番長Tialaのライブからスタート!!最新作「Epitome」が既存のハードコアから完全に逸脱してしまった名盤となったが、例え方法論が従来のハードコアと全然違ってもライブじゃTialaはハードコアでしか無い。
柿沼氏はほとんどフロアにて汗だくで怒号を放つスタイルはやはり様になる。しかしそんな柿沼氏のボーカルが乗る楽器隊の音が全て常識外れ。
宇宙を感じさせるギターのトランスする高揚、変態的ラインしか弾かないベース、手数多く肉感的なビートを叩くドラム。4人の音と声の交差地点のミラクルは比喩でもなんでもなく宇宙行きの音。
「Down」の54-71しか比較対象が見当たらないスカスカの音のミニマリズムが生み出す空白で聴き手を貶める楽曲も、「1825」の様な爆発に爆発を繰り返すハイボルテージな楽曲も同居させ、意味が分からなくても踊らせて昂ぶらせる事が出来るのはTaialaがハードコアバンドであり続けているからだ。
ホームであるbushbashでいつも通り貫禄のライブを見せつけたTialaだが、その瞬間にある全てを感じ取らせる音の連続はkillieが提示したハードコアのカタルシスと同質であり、それをTialaは頭脳改革電磁波として爆散させているのだ。強烈さのみで突き抜けた30分!!
・Twolow
ロットデュエルの時間だああああああああああああ!!!!!!!!!!!お次はリフマシマシ二郎系ヘビィロック3ピースTwolow。こちらも1stアルバム「Glutamic Acid」が絶好調!!
Twolowは一点突破型ヘビィロックであるが、バンドのストイックな演奏はやはりライブ映えする物。塚本氏は基礎的なフレーズを何一つ使っていないのにビートの躍動と刺々しさを叩き、亀井氏cのファッティーな極太麺ベースで生み出すグルーブ感と熟練の技はノレるけど一筋縄でいかなさばかり。
何よりもtwolowは長身イケメンフロントマンの水谷氏の存在感が非常に大きいと改めて思う。プレイ自体は余計なギミックを完全に排除したリフ弾き倒しスタイルだが、リフを刻むだけでも絵になる人であり、かの蓮実クレアを彷彿とさせるガニ股騎乗位リフ刻みプレイは観ている人は絶対に目が行ってしまうだろう。
終盤の「Dead Man Working」のラスト一分のご褒美ハードコアパートからの「Turning On」の3ピースの限界突破アンサンブルは観ていて本気で雷が落ちる格好良さ!!ストイックで渋いスタイルだと思わせておいて、グランジとヘビィネスの衝動に満ちた音は男の子なら泣いて喜ぶでしょ!!ごっそさんです!!
・Deepslauter
柏発混沌行きハードコアDeepslauter!!半年振りにライブを観る事になったけど、彼らのテンションは正に天井知らずだと実感させられる。
音としては決してストレートなハードコアとは少し違う位置にあるけど、空間系エフェクターと使いながらもリフは非常にキャッチーで一度聴いたらずっと耳に残りまくる。ベースとドラムも情報過多なまでに手数と音数多く、ドカ盛り感も半端じゃない。
オサム氏のボーカルとパフォーマンスも全力でハイテンション!!バンド側から伝わってくるのは観る者を全員踊らせてやる!!って気迫であり、ショートカットチューンを矢継ぎ早に繰り出してくるのだから休まる暇なんて全く無い。
MCこそは緩さ全開だったが(メンバーの皆さん仲が良いんだなってほっこりしました)、新旧問わずメドレー状態でお送りした柏シティパーティハードコア劇場はやっぱり興奮の連続だ。
・REDSHEER
トリはREDSHEER。今回はいきなり本邦初公開の新曲からスタート!その新曲はREDSHEERの中でも一番ショートな一曲になると思うが、これまでのREDSHEER以上に音の神秘的な美しさの高まりを感じさせる物。言うならばポストメタルバンドの爆発パートだけを切り取ったコスモな世界。だけど冗長さは勿論無く、ビッグバンに飲み込まれる様な感覚に陥る。
「Yoru No Sotogawa」、「Silence Will Burn」、「The End, Rise Above」と3曲続けてキラーチューンを繰り出すが、激音とメロディアスさの爆発の中でKatarao氏の存在は大きいと今回改めて思わされた。
ドラマーとしてのパワーも凄まじいけど、独自のトライヴァル感や音のタメの間の計り方が独特であり、突っ走ってるのに重く複雑にベースとドラムと絡み合う。リズムチェンジも多いのに、ツギハギにならないのはビート全体の空気をKatarao氏がしっかりと汲み取れているのが大きいのではないだろうか。
終盤はREDSHEER屈指の悪夢の叙情詩「Curse from Sad Spirit」の仄暗い水底に全身が沈む負の世界からの「Gloom」のワンリフスラッジ地獄!!前半の曲こそメロディアスな激しさに酔いしれたが、ラストにこの2曲を喰らってしまったら完全に戻って来れなくなってしまうじゃないか!!これぞREDSHEERの描く憎悪なんだろう。
4マンライブと従来のライブイベントに比べたらバンド数こそ少し少ないのかもしれないけど、出るバンドが全部強烈だったらそんなのは関係ないって話でしかない。
それぞれ常に新しい音を創造し続ける熱き現場主義バンドだからこそ、ライブだけで未知の世界を体感させられたイベントになったと思う。
改めてREDSHEER小野里氏とTiala&Bushbash柿沼氏のお力に感謝を。
■Noise Slauter vol.7(2015年11月29日)@新大久保EARTHDOM
かつてBBのRyuji氏が在籍していたCOCOBAT、過去にCOCOBATと共にスプリットをリリースし、奇跡の再結成を果たしたDOOMを迎え撃つ3マン。これは激音シーンの長い歴史を感じさせるだけで無く、確かな事件である。
勿論開演前からアースダムは本当に人で一杯!!多くの人がこの日を楽しみにしていたのだ。
・DOOM
トップバッターでいきなりDOOMである。再結成なんて夢のまた夢だと思っていたし、かつてのメンバーでは無いけどこうしてDOOMのステージを観る事が出来るのが先ず嬉しい。
確かに諸田氏はいない。あの時代のDOOMとは違うのかもしれない。でも何度も聴きまくったDOOMの名曲が目の前でプレイされている事がただ単純に嬉しかった。
藤田氏のギターは好き嫌いこそ分かれるかもしれないけど、非常に独創的なフレーズを奏で、DOOMが日本のカオティックハードコアの始祖である事を裏付ける。古平氏もかつてDOOMのトリビュートバンドに在籍していた意地もあるだろう。諸田氏の影をブチ殺さんとばかりの熱いプレイの連続。PAZZ氏も要塞と化したドラムセットから常人には思いつかないプレイで魅せる。
45分のロングセットでたっぷりと現在進行形のDOOMを堪能出来た。DOOMを愛する人からしたら今回の再結成は色々な感情があるとは思う。だけど序盤から大きな盛り上がりでDOOMに応えるフロアを見ていると、DOOMを単なる伝説で終わらせてはいけないという想いで一杯になってしまう。
DOOMは来年現編成での新作アルバムのリリースを控えている。このバンドを単なる伝説にしてはいけない。15年の年月を経て帰ってきたオリジネーターの新たなる物語は始まったばかりだ。
・BB
主催のBBは10月の二万以来一ヶ月振りのライブだったが、このバンドは化物以外に的確に表す言葉が本当に見当たらない。薄暗く後光のみの照明でメンバーの影だけがステージに存在する中、放つ音は悪夢だ。
今回は45分全7曲のライブだったが、恐らくBBの全てを表現するライブとなり、ただのヘビィロックでは無く、新たなるヘビィロックとしてのBBが過去最高の形で爆発した。
BBに関して言うと常に過去最強のライブしか行わないバンドであり、これまで何度もライブを拝見させて頂いたが、常に一番最後に観たライブが最強のライブとして記憶され、バンドが生き物である事、観る人にトラウマを与える音は常に進化の精神と共にある事をBBは教えてくれる。
それはメンバー4人全員が表現のスペシャリストというのも大きいけど、ただスペシャリストなだけでは無く、それぞれが自らの表現の限界に挑み続けている事、それぞれの音が客は勿論だけどメンバーですらブチ殺すテンションと殺気で放たれている事が全てだろう。
そしてそんな楽器隊3人の音を背中に背負い、仙人であり大妖怪であるボーカリストRyuji氏の圧倒的な存在感、生々しい感情の表現。あらゆる陳腐さが尻尾巻いて逃げるボーカル。そしてそれすらも食い殺す暗黒の中の美しさを描く音。全てが完璧な形でハマっている。
ラストはここ最近いつも最後にプレイしている新曲で締めくくったが、最後の最後の全てを突き放す音の爆発、マイクスタンドをなぎ倒すRyuji氏、圧巻だった…
BBは音以外では語らない。だけどその音のみで全てを語り、全てを殺す。もうそれだけで良いのだ。
・COCOBAT
トリは長きに渡ってヘビィロックを支え続けるCOCOBAT。BBとはまた違ったのはCOCOBATはいつまでも色褪せないバンドであり続けているって事だったと思う。
今回はメンツがメンツっていうのもあったけど本当に昔の曲をたっぷりやってくれるというファンなら大歓喜のセットリスト。勿論いつも以上にテンション高めな人が多かったフロアは大盛り上がり。
ヘビィな音を貫禄で見せつけるCOCOBATの音は2015年になった今でも十分なまでの説得力を持っており、時代を作り上げたバンドだからこそ生み出せる物。
しかしこの日はまさかまさかのサプライズもあった。COCOBATの初代ボーカルであったBBのRyuji氏が飛び入りでゲストボーカルで参加してのCOCOBAT CRUNCH!!これは本当にファンにとっては感無量だっただろうし、間違いなくこの日のハイライトだっただろう。そしてまさかのアンコールもRyuji氏ボーカルによるCOCOBAT!!恐らくもう二度と観れないであろうサプライズに異常な熱気が生まれていた!!
特別な3マンであったし、DOOMとCOCOBATのライブは素晴らしかった。だけど個人的には現在進行形の唯一無二を生み出していたBBのライブにやはり心がズキュンとしてしまった。
早くも来年3月にNoise Slauterの開催がアナウンスされているが、そちらはkillieとOOZEPUSを迎えてのまたまたスペシャルな3マン!!今から震えて待て!!!!!
■ALTER DEPT(2015年11月21日)@新大久保EARTHDOM
それぞれのバンドの歴史やキャリアもあるけど、長きに渡ってブレずに他にないロックを鳴らす4バンドが生み出したのはロックのエロスと妖しさと未知のワクワクであり、そんな陶酔の世界に酔いしれるライブとなったのだ。
・SPEARMEN
今回初見だった3ピースバンド。ベースの方が指に付けるタイプのピックを装着し、激しい爪弾きでベースを引き倒すスタイルが印象に残ったけど、フレーズをループさせ続けるベースラインが生み出す中毒性が妙に心地良い。
ギタボの方はカッティングとフランジャーを駆使したジャンクなギターフレーズを奏で、ベースでメロディを想起させ、ダンサブルなドラムが生み出すジャンクな陶酔。曲も割と長めの曲ばかりやっていたとは思うけど、冗長さは無く、常に踊れるけど、居心地の悪い音をストイックに演奏。
何よりも3ピースの音を活かした鋭角に切り込み続ける音の尖り具合がこのバンドのオルタナティブさを印象づけていた。薄暗く刺し続けるジャンクロックに酔いしれた。
・swaraga
ずっと愛聴していたけどやっとライブを観る事が出来たswaraga。1stアルバムには収録されていない曲ばかりをプレイしていたが(恐らく次のアルバムの曲?)、このバンドの生み出す退廃的空気は1stの楽曲より際立ち磨かれ、より重くなっていた印象を受けた。
アースダムを完全に80年代に変えてしまっていた空気感、のっしりとしたビートの重さ、多数のエフェクターを巧みに使いこなす匠なギターワークの渋さ、静かに刺殺していく音の連続であったが、awaragaは女性ボーカルのReikoさんの存在感は本当に大きい。
その麗しき美貌もあるけど、ただでさえ耽美なswaragaの音に彼女のボーカルが加わる事によって更に妖しい空気を生み出す。40分に渡って繰り広げられた非日常的音の世界に引きずり込まれるライブを堪能。
・BACTERIA
この日一番のダンサブル&轟音を鳴らす主催のBACTERIA・10月の二万で観た時よりもライブの完成度は更に高まり、バンドの好調っぷりを体現するライブ。
轟音で攻めるけどキャッチー、ビートは常に観る者を躍らせるんだけど、同時に突き放す音。バンド歴が長いのもあるかもしれないけど、余計な物を削ぎ落としまくっているからこそのシャープなアンサンブル、刺々しくケミカルで整理なんてされていないけど、必要な音だけで異常な容積と質量をアウトプットしていく。
今回もプレイしていた美しき長尺曲「winter#3」はこの日のハイライトだった。終わりなく繰り返されるアルペジオの寒々しさと寂しさ、轟音パートでも聴かせてくるけど、それ以上にクリーントーンの音で押し潰す精神的な苦しさ。開放なんて一生されないであろうへばり付く様な痛々しさ。それらをひっくるめて悲しみの世界がアースダムに広がっていた。
このバンドはライブを何度観ても他に替えのいないバンドだと思った。こんなに飛べて苦しくなる音は他のバンドは果たして鳴らせるのだろうか?
・割礼
トリは今回のお目当てで5月のワンマン以来にライブを観る事が叶った御大・割礼。
一曲目はまさかプレイすると思ってなかった「怪人20面相」!!山際さんの機材トラブルがあって序盤は本調子では無かったけど、直様本調子に戻したらいつも通り素晴らしき割礼。
今回のライブは普段プレイしない曲中心のレア曲セットであったけど、どの楽曲も音源とアレンジを大きく変えており、現行の割礼により色褪せない割礼の名曲をよりアップグレードして蘇らせていた。
特に現在の4人だからこそ生み出せる重さが前面に出た「キノコ」もまさか聴けるとは思ってなかった一曲。宍戸さんと山際さんのギターがより重く陶酔の音に進化しており、窒息感で埋め尽くす。
多くの人が現在の4人編成の割礼こそが過去最強の割礼だと口にするが、それは大正解であり、過去に胡座は絶対にかかない。自分たちの持ち味の甘く重いラブソングを最低限の方法で最大限に放出するという簡単に見えて死ぬほど難しく、誰も出来ない事を今の割礼はやってのけてしまっている。
だけど、アンコール終了後のいつも通りの松橋さんのMCコーナーでそんな重い空気を平然と壊し、爆笑と暖かい空気でこの日のライブを終了させてしまう辺りも含めて割礼だった。何度ライブを観ても「前観た時の方が良かった。」なんて感情が一切起きない。常に進化を続けるロック、それが割礼だ。
4バンドでありながr、各バンド40分ずつとたっぷり音を堪能出来たし、この日出演した4バンドは流行りなんて物とは無縁であるけど、そのバンドにしか生み出せない空気だったり音を純粋に体現するライブバンドばかりで大満足の一夜となった。
それぞれのバンドのキャリアは長いけど、だけど長年戦い続けている物にしか生み出せない光景がアースダムにあった。やはりロックの一番の魅力って日常世界とはかけ離れた音の世界だと思う。どのバンドも放つ音は重かったけど、でもその先にあったのはロックの異次元でしか無かったよ。