■2016年08月
■Fill Your Boots, Feel Your Beats Vol.2(2016年8月27日)鶯谷What's Up
メロディックパンクという音楽に関して言うと個人的に全然触れて来なかった音楽ではあり、この日観たバンドはダーサテ以外は全部全くの予備知識無しでライブを観たので、いつも以上に拙く簡単に感想を書くといった感じにはなるので、レポと呼べる物にはなってないとは思うが、普段全くそういった音楽に触れない人間の一感想として読んで頂けましたら。
・Slugger Machine
このバンドはどうやら横須賀のバンドらしいが、調べてみたらex.loroのメンバーも在籍しているとの事。
SNUFFY SMILE系統のサウンドの匂いを感じさせてくれるバンドであり、個人的な印象としては疾走感よりもメロディを重点的に聴かせるタイプのバンドで、そのセンスは現在進行形の90sエモリヴァイヴァルな部分にも通じる所があった印象。
バンドの持つ哀愁だったり切なさだったり蒼さといった部分をじっくり聴かせてくれるメロディと随所随所でニクさを感じさせるギターワークも含めて初見ながら楽しませて頂きました。
・Dirty Satellites
大分久々にライブを観るダーサテは今後リリース予定の新曲も含めて現在進行形のダーサテを存分に見せつけるライブとなった印象。序盤は本調子では無い感じこそあったが、ギアが入ったらこっちの物と言わんばかりにバンドの底力を発揮していた。
元々それぞれキャリアがある人たちが集まって結成されたバンドであるが、僕としてはメロディックパンクとか、メンバーの過去のキャリアを抜きにしてバンドも仕事も家庭も含めた日々の生活を謳歌している人々だからこそ生み出せる生活の音としてダーサテは確かに浸透するのだと思う。
その中で確かなメッセージや問題意識を提示しているからこそ、グッドメロディの中にある鋭さがライブではより体現されており、温もりの中に残酷なリアルを忍ばせる事が出来る数少ないバンドなのだ。久々にライブを拝見させて頂いたが、その実力は本物だ。
・Daybreak
サウンドチェックの時点でギターアンプからメタルゾーンの音が聞こえて来て、なんだこりゃ!?となったDaybreakはこの日個人的に一番インパクトがあったバンドだった。
HUSKER DU直系のサウンドであるにも関わらず、それをメタル畑のセンスでズタズタに料理してしまうという傍若無人な事をしてしまっているにも関わらず、曲その物の硬質な古き良きメロディックパンクの匂いが違和感を全く感じさせない。
それどころか、下手したらTRAGEDYなんかが持つ異様なまでの悲壮感を感じさせる楽曲もあると何でもありだと思わせといて、ごった煮にした物をアグレッシブに駆け抜けるサッドネスに昇華したとんでもないバンドだった。
こちらもメンバーの方々はキャリアのある方々らしく、これまで全然チェックしていなかったバンドだが、この日一番大当たりなバンドでした。音源の方もチェックさせて頂きます!!
・Short Straw Fate
伝説的メロディックパンクバンドであるbroccoli(しっかり聴いた事ねえからちゃんと聴かねえとなあ)の曲名からバンド名を拝借した今回の企画の主催である若手メロディックパンクバンド。
このバンドも地盤の部分はUKメロディックその物ではあるけど、そのスタイルを守りながらも型を破る事を模索している感じの印象。
メンバーそれぞれがボーカルを取ったりなんかしつつも、ギターソロが滅茶苦茶渋いハードロック感溢れる物であったり、終盤にプレイしていた楽曲がメロディックパンクじゃなくてファストコアだったりという飛び道具もしっかり用意。
そうでない楽曲もメロディックパンク好きは勿論だけど、エモ好きやハードロック好きまでアピール出来る懐の深さもありと楽しませて頂きました。
ライブ自体もリラックスした感じがありながらも、バンドの魅力を十分に見せつけていたのでは?
そんな感じで普段うるさい音楽のライブばかり行っている人間が全然違う畑のライブに遊びにいった雑極まりない感想文ではありますが、新しい発見も多く、楽しませて頂きました。
それにしても最初から最後まで女性客がゼロだったのは笑ってしまったけど。
■sekien - ENSLAVE ONE TO ONE STRUGGLE GIG(2016年8月13日)@新宿dues
共に同世代であり、東京と姫路と活動のフィールドこそ違えど共にDIYなやり方でその名を広めてきた実力派ライブバンド。その決戦は新宿duesという何の誤魔化しも出来ないライブスペースで昼間からの大一番。新宿東口のあの一室で行われた本気の喧嘩は一体どちらに軍配が上がったのか?
・ENSLAVE
先攻はENSLAVEから。お世辞にも広いとは言えないduesのステージにメンバー6人もいるとかなりの人口密度ではあったが、ENSLAVEはあくまでもいつも通りのライブを展開する事に徹していた気がする。
ボーカル以外スピーカー無し、楽器隊の音はアンプからの生音、だからこそバンドの真の実力が試される環境の中でENSLAVEは長年に渡って鍛え上げたライブバンドとしての本領を見せつけただけに過ぎない。
2マンライブではあったがライブは30分程、その30分の中で自分たちの音とメッセージをどこまで伝えられるか。泣きに泣きまくりなメロディと疾走するビートが生々しい荒さで炸裂する中、JEEP氏は何度もフロアに降りて雄叫びを上げ、PGさんはステージにその二本の足でしっかり立ちながら救いの叫び繰り出す。
ENSLAVEという魂の探求者6人組はハードコアパンクの真の本質である「反逆・反抗・反撃」をその言葉と音に託しているだけに過ぎない。だからこそリアルなメッセージと音を放つ事が出来るのだ。
・sekien
後攻は姫路ハードコアsekien。サウンドチェックの時点で生音とは思えない音量で炸裂するドラムの音に恐怖を覚えたが、実際にライブが始まったら生音で繰り出されているとは思えない強靭な音が繰り出される。
1stアルバムのトップを飾る「絡繰」からライブは始まり、キラーチューンである「sacrifice」の悲壮感で一気に心が持っていかれる。自他共にネオクラストのバンドとして認知されているsekienというバンドだけど、僕はネオクラストという文脈だけでsekienは計り知る事は出来ないと思っている。
sekien流のブラッケンドクラストである「岩漿」は現行のブラッケンドとは明らかに違う音の感触、完全にバンドサウンドで再現されたsekienの新機軸インスト「開花」、爆裂感全開なライブでその名を広げたsekienではあるが、膨大なる世界中のハードコアパンク(特にクラスト全般)を吸収した上で吐き出すのはENSLAVE同様に反逆者の音だ。
「航路」の疾走感の中の異様な緊張感、本編ラストの「残照」のドラマティックさ、アンコールにて珍しく簡単ではあるけどMCをしてからの「夜明け」の怒りの音、そしてアンセム「六六六」までsekienも約30分の中で自らの怒りを音に託して出し尽くす渾身のライブを見せてくれた!!
土曜の真昼間という時間でありながら企画自体も大入りの大成功となり、ENSLAVEとsekienの2マンという一大決戦はこれから伝説として後世に語り継がれていくだろう。
sekienの年内での活動休止は本当に残念だが(1stアルバムが今後が本当に楽しみな出来だっただけに)、歴史は形を変えながらも続いていく。何よりも2016年8月13日の真昼間の新宿で行われたこのGIGが今後多くの人々の間で語る継がれる一戦となった事は間違い無い。
僕自身はENSLAVEとsekienのどちらが勝者となったか判断は出来ないが、共に聴衆を圧倒するハードコアパンクを見せつけてくれた事、それだけで良いとすら思う。
■いいにおいのするKrallice Japan tour 2016 東京編2(2016年8月6日)@渋谷TSUTAYA O-NEST
国内サポートはこれまで数多くの海外の猛者を招聘し、今回のKrallice来日を実現させたVampillia、台湾・中国ツアーを成功させ、いよいよヨーロッパに殴り込みを仕掛けるCOHOLといった国内勢に加え、Seefeel・Locustのメンバーとして知られるMark Van Hoenもソロで初来日を果たして共演するという贅沢極まりない一夜。
Kralliceは本国アメリカ以外で殆どライブを行っておらず、今回の来日公演は貴重な一夜。という事もあってか当日のnestは大入りとなり集客的にも大成功だったのでは無いだろうか?ブラックメタルから電子音楽までという異様な一夜は果たして日本のエクストリームミュージック愛好家にどんな衝撃を与えたのか。これは一つの事件のドキュメントだ。
・Mark Van Hoen
ハナからMark Van Hoenのライブという非常に贅沢な感じで始まったが、僕個人としてはLocustが大好きな事もあり、Markがソロではどんな音を鳴らすかは凄く楽しみだった。
音としては少し洒落た感じもするエレクトロニカ・アンビエントなサウンドとなっており、音だけで世界観を感じさせる物。VJを使用してのライブという事もあって、音の世界観への陶酔具合は中々の物。
同時にブレイクコア方面にも足を伸ばした音の鋭利さも際立ち、インダストリアルなエグさもサウンドに内包されていたのが個人的に凄くツボを突いて来る。幻想的なサウンドアプローチに中に隠された攻撃的電子音の連続に思わず心が踊ってしまう。
ライブ自体は30分程ではあったが、のっけからかなり楽しませて貰った。多方面で活躍するMark Van Hoenの実力を肌で体感したよ。
・COHOL
個人的にはKrallice以上に楽しみだったCOHOL。今年の2月の2ndアルバム「裏現」リリースツアーのファイナル以来実に半年振りの日本でのライブとなったが、海外公演を経てCOHOLというバンドは更に強靭になって僕たちの元へと帰ってきた。
転換こそ時間がかかってしまったが、その分最高のライブでお返しするぜとばかりによりソリッドで切れ味の増した音で攻めにかかってくる。「下部構造」、「地に堕ちる」といったライブでお馴染みとなった曲の精度もパワーアップを果たし、特に現在のCOHOLのキラーチューンである「暗君」は三位一体のサウンドがより正確さも鋭さも増して襲いかかってくる凶悪な物に。
ITARU氏の「沢山仲間増やして帰っ来たぜ!!}という激熱MCもフロアを大いに盛り上げ、何度も何度もフロア中から突き上げられるメロイックサインはCOHOLと共にシーンを作り上げているという瞬間をダイレクトに感じさせるピュアネスその物だった。
個人的に「裏現」で一番大好きな「急性期の終わり」を今回聴けたのが心から嬉しかった。ライブで全くプレイしていなかった楽曲ではあるが、COHOLの持つブルータルなエグさも壮大なストーリーも全て内包したエピックさすら感じる大名曲は今のCOHOLだからこそ演奏する事が出来たのかもしれない。
その音楽性もライブも素晴らしいが、COHOLにはブラックメタルとか激情ハードコアとかという陳腐なワードは必要ない。全てが熱き魂を持つ仲間と共に作り上げる物語であり、誰もがその物語の当事者なのだ。音楽を愛する者達と生み出す熱き一大巨編。それがCOHOLというバンドだ。
・Vampillia
今回の主催の大阪のやらかし集団Vampillia。セッティングが終わっていざライブかと思ったらKralliceのメンバーが登場し、一瞬Vampillia+Krallice!?と思わせる演奏が始まったが、普通にミッチーが登場しツッコミを入れるなんて茶番を繰り広げつつしっかりライブをスタートさせる。
去年とかは毎回毎回色々なネタを仕込んでいた印象が大きかったが、この日のライブはお馴染みの脚立芸以外はネタ要素は殆ど抜きにしたVampilliaの音楽的実力を存分に発揮したライブとなったと言える。
お馴染みの「Ice Fist」から最新シングル収録の「fuck you」まで彼らの中でもアグレッシブに攻める楽曲中心のセット。その中でも多人数楽団ならではの音の奥行の深さまで自在に表現するライブパフォーマンスは相変わらず高いクオリティ。ネタ的な部分がどうしても目立ってしまう彼らだけど、ネタ的な要素をほぼ封印する事によって彼らのバンドとしての実力の高さが垣間見える。
終盤はKralliceのドラマーを迎えてのスペシャル編成でのライブもサプライズとして展開され、ただでさえ完成度の高いVampilliaのライブに更にビートの凄みを与える凄まじさを見た。どこまでも全力で音楽も馬鹿もやれるバンドだからこそ毎回毎回のライブに確かなドラマが存在する。このバンドはまだまだ色々やらかしてくれる筈だ!!
・Krallice
そしてその実力が遂に白日の目に晒される事になったKrallice。メンバーご登場するや否や大きな盛り上がりとメロイックサイン。多くの人々がKralliceのライブを目撃したくて仕方なかったのだ。
セットは最新作を中心に実に70分程に及ぶ地獄セット。まずは6弦ベースを弾き倒しながらボーカルも平然と取るベースの演奏技術の凄まじさにド肝を抜かれ、更には地獄のトレモロを無慈悲に叩きつけるツインギター、弦楽器隊のアグレッシブな演奏を安定した演奏で支えるドラムと「こいつら本当に人間か!?」と疑いたくなるライブの出来の凄さに漏らしそうになる。
ブラックメタルらしい世界観的な物すら徹底的に排除し、人間離れした演奏による不条理の連続を70分も浴びていたせいで脳が情報を処理し切れなくなってパンクしそうになる。
取っ掛りこそあるが全くノレない。目の前で繰り広げられるトレモロ地獄に口をポカンとさせて呆然と眺めるだけになってしまい、曲間のレスポンスこそ凄かったが、観ていた人々はあまりの常識外れのライブに呆然とするだけになってしまったと思う。
初期の曲もプレイしていたが、初期の楽曲も現在の楽曲も人間的要素は徹底して削ぎ落とし、気合いが入った演奏すら理解困難の混沌へと突き落としてくる始末。
70分に渡って轟音を浴びて満身創痍になってしまったが、ライブ終了後はなんとも言えない開放感というか、憑き物が取れたみたいな気分になった。毒で毒を解毒するみたいな感覚すらあった。
これを書いている今でもKralliceのライブは理解不能の領域ではあるが、一つだけ言えるのは本当に凄いライブを目撃してしまったって事だけだ。
全ライブ終了こそ遅い時間にはなってしまったが、沢山いたお客さんの誰も帰らずに最後まで混沌の地獄を満喫していたのが印象に残っており、まだまだエクストリームミュージックも大きな盛り上がりを作ることが出来るんだなって改めて実感できたのも今回個人的に嬉しかった事でもある。それとたくさんの人と普通にコミュニケーションを取っていたKralliceのメンバーはステージとギャップを感じる位にフレンドリーな印象だった。
4年越しの約束を果たして下さったいいにおいチームの皆さん、本当にお疲れ様でした。次は是非ともLiturgyを呼んでください!!
■THREAD(2016年8月5日)@小岩bushbash
この日出演した3バンドは個人的に大好きなバンドという事もあり、金曜の小岩ではあったが全力で駆けつけさせて頂いた。流行り廃りなんかに全く流されない3つの核のぶつかり合いは果たして何を生み出したのか?
・Su19b
トップバッターは神奈川産ブラッケンドパワーヴァイオレンスことSu19b。照明はほぼ無しでステージは真っ暗な状態でのライブはSu19bの暗黒の音と見事にハマる。
この日は他の2バンドは40分以上のロングセットだったので、Suは25分程度でライブが終わってしまったのだけは心残りではあるが(折角だしSuも40分セットで観たかった!)、25分間に詰め込んだ濃密な重低音地獄。体感する音から感じるのは尋常じゃない威圧感と圧迫感。既存のパワーヴァイオレンスには無いデスメタルの影響下の血腥いドロドロとした感触。食らってしまえば一撃で即死しかねない音にも関わらず、ひと思いには殺してくれずに嬲り殺していく。
極端な速さと遅さと重さがあればパワーヴァイオレンスであるという事をSuは真っ向から否定し続ける。音の暴力とはただ強ければ良いだけでは無い。徹底して無慈悲で感情を無くした殺人鬼になる必要があるとSuは提唱していると僕は思う。
感情移入させずに音だけで惨劇を生み出すSuは言葉は悪いがサイコパスの音楽だ。カテゴライズさせないヴァイオレンスとブラッケンドの真髄がSuのライブにはある。極限の重低音の黒さに震えるライブとなった。
・Coffins
二番手は一週間振りにライブを観る運びとなったCoffins。前回の220のレコ発の時のアッパーなパーティ感も凄かったが。この日はいつも通り粛々とやらせて頂きますなモードのCoffins。
ここ最近のライブはアッパーなモードでブチ上げるライブが多かったが、渋さを感じさせるライブを繰り出す事が出来るのもCoffinsの大きな魅力だろう。バンド側のテンション自体はかつてに比べたらアッパーな方向ではあるけど、デスメタルバンドとしての真髄の部分を丁寧に出している印象がこの日はあった。
Coffinsはオールドスクールデスメタルの核を守りながらも、それ以外の部分は枠からはみ出すバンドであり、下手したらパワーヴァイオレンスなんかにも通じる音を鳴らしている。だからここ最近のライブはモッシュも普通に発生するが。今回の様に客がじっくりとCoffinsの音と向き合う感じのテンションのライブになるとデスメタルの血の匂いを丁寧に出してくれる。そんな振り幅があるからCoffinsの音は信頼できる。
終盤はここ最近はプレイしていなかった曲もプレイしつつラストは代表曲「Evil Infection」でしっかり締め括り。どんな場所でもCoffinsらしさをブレずに出してくるからこそCoffinsは心から信頼出来るのである。
・NEPENTHES
トリは先日GREENMACHiNEとEternal Elysiumと共にツアーを回ったばかりのNEPENTHES。ラスボス級の猛者と共にツアーを回ったネペは更に一回り大きなバンドへとパワーアップを果たした。
ステージで煙草を吸う姿すら見事に様になる爆音ロック五人衆のグラムでギラギラとしたオーラだけで健全な青少年と婦女子が触れたら虜になるであろう。そんな色男達が鳴らすのはギミックなんて何一つ無いロックンロールだから惚れない訳が無い。
哀愁を全開にしながらミドルテンポでブルージーに奏でるサウンドからストーナー色を押し出したロックチューンまで行き来し、それらの雑多さを全てロックへと帰結させる。ロックスター根岸氏をはじめネペのメンバー全員の演奏とオーラが余計な能書きが不要なサウンドしか奏でていない。だからこそネペのライブは純粋なロックキッズの気持ちで観る事が出来る。いや観るなんて大人しい物じゃなくて、心の底から叫びたくなり、拳を突き上げたくなるエネルギーをガンガン放つ。
根岸氏はステージの返しのスピーカーをフロアまで持ち出すという暴君っぷりを発揮したりとフロアをガッツリ盛り上げていたが、最後の最後は他のメンバーもフロアのお客さんと拳をぶつけたりハグしたりと最高のロックショウを作り上げた喜びを分かち合っていた。
本物ののロックバンドにカテゴライズは必要無い。ネペはこれからもロックを食い尽くした化物として想像以上の景色を見せてくれるだろう。
終演こそ23時近くと大分遅くはなってしまったが、最後の最後まで誰も帰らずに激烈なる3マンを目撃していた事実が今回のイベントの素晴らしさを表していた。平日の金曜のハコ企画で比肩する者がいない猛者を呼び、大きな盛り上がりと磁場を生み出すブッシュバッシュはこれからも極東の爆心地として更に多くの人々に愛されるライブハウスとなると確信している。
改めて小岩bushbash7周年おめでとうございます。今後も足を運ばせて頂く次第なので、また多くのカタルシスを体感させて頂けたらと心から思います。
■second to none 1st. full album Bab-Ilu release show in Tokyo(2016年7月31日)@新大久保EARTHDOM
東京を代表するエクストリームミュージックの猛者が脇を固めた今回のレコ発だが、僕自身は220のライブを今回初めて目撃する運びに。これまでのリリース音源、そして1stアルバム「Bab-Ilu」を聴いて圧倒され続けていたが、音源でも凄まじい音を実際にライブで体感したら死んでしまうのではないだろうか?そんな期待を抱いてしまうライブは本当に久々だ。果たして群青色で描かれた世界の先には何があったのだろうか。
・TERROR SQUAD
今年頭にはSWARRRMとのスプリットもリリースし、大ベテランバンドでありながら未だに精力的にライブを重ねるスラッシュメタルからのロックスターことテラーはこの日もガッツリとアースダムを持っていった。
スラッシュメタルから始まりながらもそのアグレッシブなライブは正にハードコアパンクであり、メタル・ハードコアの垣根をブチ壊す熱さがテラーの凄さ。、この日もボーカルの宇田川氏はキレッキレで何度もフロアに降りて客に絡みながらも渾身の言葉を叫び散らしていく。
疾走感溢れるバンドサウンドは時にカオスを生み出していくが、太く屈強な幹の様な揺るがない強さ、時には壮大さすら想起させながらもそこにあるのは神々しさでは無く、人間の限界を超えてやろうじゃねえか!!という熱き闘志。限界突破の先にあるのは喜怒哀楽がグチャグチャになりながらも笑顔をフロアに向ける宇田川氏であり、そんな姿を観てフロアの人々も笑顔を浮かべていた。
・Funeral Moth
春に2ndアルバムをリリースしたFuneral Mothだが、この日一番の静寂の美しさを体現するライブ。バンド名通り葬式その物なライブとなった。
プレイしたのはたった2曲。盛り上がり所なんて皆無であり、心拍数が停止したBPMと極端に音数が減ったサウンドスケープ。クリーントーンの美しい音色と地の底から響き渡るグロウルが自然と共存し、退廃的美しさが生まれる。
フューネラルドゥームというただでさえ特異な音楽の特に純粋なエッセンスだけを音にしているモスだけど、実際にライブを体感しているとその美しさは快楽に十分なり得る物であり、ただ漠然とその音を浴びているだけで濃霧の粒子の一部と聴き手は化す。
ロングギターソロが静かに涙を流し、永遠とも思える時間を描き続け、気がついたらライブは終わっていた。沈黙を守りながら演奏を見守っていた聴衆のレスポンスは盛大な拍手であり、自らの世界に人々を引き込むモスの力量に感服した次第だ。
・Coffins
葬式会場と化したアースダムを一変してパーティ会場に変えたのは俺たちのCoffinsだ!!ATAKE氏が加入してもうすぐ一年になるが、Coffinsは全く新しいバンドとして生まれ変わったと言っても過言ではない。
ライブ開始前から既に出来上がった客は悲鳴にも似た歓声を上げ、ライブが始まると即座にピットは阿鼻叫喚。こんな光景はこれまでのCoffinsには無かった。
音楽性が変わった訳では無い。寧ろこれまでのCoffinsだってフロアをアジテートする曲を十分生み出し続けていた。それが大きくアウトプットされる様になったのはATAKE氏がヘヴィなベースを弾き倒しながらフロアを盛り上げる様になったのもあるが、ボーカルのTOKITA氏のパフォーマンスがより攻めのモードに変わったのも大きいと言える。
TOKITA氏は何度もフロアに飛び込んでサーフされていただけで無く、ドスく黒さの渦の中で笑っているかの様な余裕と貫禄を感じさせるまでになった。Coffins加入当時はここまで化けるなんて思ってもいなかったが、今やTOKITA氏は最強のフロントマンの一人だろう。
ATAKE氏とTOKITA氏が場を盛り上げる中、ストイックにタイトなドラムを繰り出すSATOSHI氏、あくまでも自分の軸を守りながらも、メタラー魂を感じるプレイを繰り出すUCHINO氏、今のCoffinsは無敵のカルテットだ。
オールドスクールデスメタルの核を貫きながら、デスメタルの最果てを目指すCoffins。デスメタルでもパーティバンドになれる事を証明してしまっている今のCoffinsは無敵だ!!
・second to none
待ちに待った220。ステージは彼らのイメージカラーである群青色とは少し違うが青の照明が後光のみで照らされ、青のモノクロを生み出す。そしてライブが始まり最初の一音が鳴った瞬間に空気が一変するのを全神経で体感。
実に一時間以上、フロアのとてつもない熱気に応えてダブルアンコールと、かなりの盛り上がりでライブは幕を閉じたが、その一時間以上のライブの間、一瞬たりとも気を緩める事は許されなかった。
思えば220は異常過ぎるバンドである。90年代ハードコアから登場しながら、その当時から同じスタイルのバンドは皆無、バンドの歴史を重ねる毎に更に孤高の存在と化し、90年代の時点で何でこんな音が出てくるんだという驚きは2016年現在、誰も到達出来なかった世界へと踏み入れている。
220のライブは音源以上に神話的な世界の空気を生み出し、アルバムタイトルである「神の門」の旅路を分子レベルでまで精密に生み出していく。しかしただ圧倒的な音で黙らせるだけでは終わらないのが220だ。激重のツインギターのリフ、常にループする霧状のハウリングノイズ、乾ききったグルーブとビート、リバーヴのかかったボーカルの呪詛。それらがブルータルなリフが刻まれた瞬間に神々しさから破滅の悪意へと変貌し牙を剥く。そうなったらピットは一気に荒れまくり、音もその空間で起きている現象も地獄へと変えてしまう。
中盤の「Wrongside」から「All You Know」の流れには220の音に飲み込まれて陶酔していた全感覚のギアが変わり、本能の中にある殺意や悪意を丸裸にされてしまいそうになり、本編ラストの「The Tale's End - The Method To Calm Your Evil Down -」は音源でもゲストボーカルで参加したANYOの4hoさんが登場し、220が産み落とした神の世界に最後の仕上げとして美しきモノクロの声を添える。4hoさんのボーカル音量が小さかったのだけ少し残念ではあったが、暴力と殺意と救いとアート性が全て帰結した音に殺された。
こんな人を黙らせる音の筈なのに、その神秘の世界の真裏には惨たらしい血溜りが存在し、光と闇・美と醜・青と黒、全ては表裏一体で存在している。その音に黙るしか無くなった人もいれば、ピットで暴れまくる人もいる。
ただこれだけは言える。聴く人や観る人に何の答えも与えず、その音に委ねる事だけを許す220はハードコアの一つの完成型だ。ここまでヘヴィさもグルーヴもコンセプチュアルさもブルータルさも手にしたライヴをするバンドは存在しない。
もし今後近くで220のライヴがあったら意地でも足を運んで欲しいと心から願う。これはライヴでも何でもない、人間の想像を超えた儀式だからだ。
大阪という激音爆心地は本当に数多くの素晴らしいバンドを輩出したが、220はハードコアのままハードコアを超えた先の「何か」を群青色で塗りつぶす表現へと到達した。そして220という化物達をそれぞれの殺り方でブチ殺しにかかった都内の激音バンドもまた違うベクトルでそれぞれ素晴らしいステージを見せてくれた。
とんでもない激音を全身で浴びたから帰宅後は疲れが一気に来てダウンしてしまったが、その疲れは余韻とか心地よさとは全然違う物だった。凄まじい物を体感した事実を体中の細胞が必死で受け止めているからこその疲労だった。こんな体験をするライヴが今後あるかどうか僕には分からない。