■HEART OF EVIL/GUEVNNA
LongLegsLongArms Records (2016-10-21)
売り上げランキング: 300,710
ex.CoffinsのボーカリストであるRyoを中心に2011年に結成されたアーバン・ストーナー・ロックバンドGUEVNNAの2016年リリースの1stアルバム。
国内外問わずに激情系ハードコア/ネオクラストの音源をリリースする3LAからリリースされた事に驚いた人も多いはず。
当初はスラッジ要素の強い楽曲中心だったが、前作EP『Conspiracies』からその音楽性を大きく変えている。
今作は前作EPにて新たに提示した路線をさらに突き詰め、アーバン・ディスコ・ストーナーを色濃くアピールした快作だ。
ストーナー/スラッジ要素は今作でも確かに残っているが、今作でより際立つのはダンサブルなビート。
BONGZILLAテイストもしっかり感じさせつつ、ツインギターのリフとリードの絡み、土臭さあふれるフレーズなのに不思議とバンドが提示するアーバンな空気を堪能させてくれる。
タイトル曲となっている第3曲『Heart Of Evil』は4つ打ちのビートで踊らせるグルービーさとリフの煙たさが不思議なバランスで共存。アッパーでダイナミックな音に自然と体が動く。
第5曲「Parasitic」に至ってはよりダンサブルな要素を全面に押し出し、サビのボーカルとリフの掛け合いの所に吉幾三風味の合いの手を入れてしまっても違和感のない、日本人好みするダンスビートのディスコチューンだ。
また単にダンサブルな曲で攻めるだけで終わってないのも今作の注目すべき点。第4曲『Last Sleep』はスラッジ色の強いドープな一曲で、聴き手をズブズブと沈めていく。かと言ってエクストリームには絶妙に振り切らないバランスで楽曲が成り立つのは、楽曲そのものの練り込みがなせる技だろう。
ガッツリとストーナーに疾走する第7曲『Daybringer』からブルージーなフレーズの哀愁に酔いしれたと思えば、最後に今作一番のヘヴィなサウンドで爆走するカタルシスで締めくくられる第8曲『Burn』まで聴きどころがたっぷり。
ストーナー/スラッジといったエクストリームミュージックを大胆にアッパーに変貌させながらも、それらの音楽に対する敬意も忘れないバランスで成り立つヘヴィ・ロックはこれまでありそうでなかった物だろう。
また今作には歌詞カードこそ付いてないが、全8曲それぞれの楽曲をイメージしたアーティストANUSTESの手によるアートワークカードが付属しており、音だけでなくヴィジュアル面でも聴き手を楽しませてくれる。
都会の夜の情念と狂騒をストーナー・ロックから表現した大胆でありながらも妖艶でいてポピュラーな一枚だ。