■サ・ヨ・ナ・ラ・セ・カ・イ/SPIRAL CHORD
![]() | サ・ヨ・ナ・ラ・セ・カ・イ (2008/03/05) SPIRAL CHORD 商品詳細を見る |
元COWPERS、元NUMBER GIRL、200MPHのメンバーによって結成されたポストハードコアバンドSPIPAL CHORDの08年発表のEPである。前作の「脳内フリクション」にあった爆裂ガレージサウンドは健在であるが、より歌心ある楽曲が増え楽曲の幅も広がった良作といえるであろう。不協和音のコード進行とバーストするギターリフは健在であるが、後期COWPERSの様なエモーショナルな要素も強くなっているのも見逃せ無い。
ベースリフの印象的なイントロから始まる第1曲「Distance To Substance」からバンドの変化は伺える。爆裂ガレージサウンドから、シャープな鋭角サウンドに変化し、歌の部分に比重を置いているからこそ、即効性の強いエモーショナルさと掴み易い楽曲の輪郭が全面に出ている。前半の3曲はコンパクトでありながらも、突き刺す鋭角さはゲンドウならではのアプローチだ。バンドの肉体性をシャープにしたからこそ無駄の無いキレが存在している。それは前身バンドであるF.I.Xのセルフカバーである第5曲「Stero Type」からも伺えるであろう。
バンドの音楽的変化がより顕著なのは第4曲「Spiral Double」だ。レゲエ調のリズムとビートがメインの楽曲でありながら、サビではしっかりエモーショナルハードコアな音をしっかり聴かせる良曲だと言える。ラストの第6曲「!!!!」のミドルテンポのノイジーな激情サウンドもバンドの進化を強く感じる。
ただ一つだけ残念なのは前作に比べて音質が向上した事だ。シャープになった楽曲に合わせてだとは思うが、このバンドの魅力の一つとして音質の悪さも含めたライブさながらの暴発寸前の緊張感があるので、楽曲の洗練によってその要素が薄くなったのは少し残念だ。楽曲自体の完成度は高いだけに、前作にあったローファイな音質と粗暴さはもっと出して欲しかった。
そしてバンドは今作を発表後、突然の活動休止を宣言する。今作で彼等の進化を強く感じただけに、その先にある音は聴きたかった。日本のオルタナティブロックの強者達の鳴らす不協和音塗れの爆裂な世界は決して消える事は無いが、どんな形でも良いから竹林現動という日本のオルタナティブロックを引っ張った男の次に鳴らす音を僕は待ち望んでいる。