■Nadie/Corrupted

日本が誇る暗黒ドゥームを鳴らす孤高のバンドCorruptedの95年発表の初期EP。Corruptedは数多いドゥームのバンドの中でも、ハードコアを遅く重くする事よってCorruptedにしか無い荒涼とした音を鳴らしているが、今作は余計な装飾などは勿論無く、ハードコアの暴力性が剥き出しのままパッケージングされたハードコアとしての強さを持った作品だ。
まず今作はCorruptedの中でも比較的に尺の短い曲で構成されているコンパクトな作品であったりする。第1曲「Nadie」はCorruptedの中でも珍しく5分に満たない楽曲だ。しかしCorruptedの遅く重く暗くなスタンスは健在、あまり良くない音質で録音され、ベースとギターがひたすら重過ぎる低域の主張しまくったフレーズを繰り返し、Chew氏のドラムは楽曲により重さを与え、引き摺るBPMの楽曲に乗るhevi氏のボーカルがその暗黒の意志をえげつないまま拡散させる。第2曲「Bajo De Cero」でも同じハードコアに重きをおいた暴力的サウンドを展開している。第3曲「Esclavo」は今作で最も凶悪な曲になっている。ハウリングのノイズが空間を支配し、全てを塗り潰す漆黒のサウンドを展開している。hevi氏の声も重低音が作りだす黒い煙の中に埋もれてしまっている位に殺人的な音圧とヘビィさを誇っているのだ!ひたすらに鳴るハウリング音と終わりが見えない地獄を繰り返すかの様なリフの繰り返しに飲み込まれてしまいそうになるのは、Corruptedが終わり無き怒りと殺意をそのままサウンドに反映させているからだと僕は思う。そして耳鳴りの様な強烈なハウリング音と共に今作は終わりを迎える。
初期Corruptedの代表作とも言える今作だが、やはりCorruptedの核になっているのは純度の高いハードコアである事が分かるし、それを漆黒のサウンドに仕立て上げたからこそCorruptedにしか鳴らせないドゥームサウンドとなっているのだ。現在に至るまでCorruptedの核の終わり無き地獄の様なハードコアサウンドは決して変わる事無く存在している。彼等程にストイックに人間の負の感情と悲しみを荒涼と鳴らすバンドはいないのだ。