■黒斑の侵蝕/heaven in her arms
![]() | 黒斑の侵蝕 (2008/01/09) heaven in her arms 商品詳細を見る |
激情系若手ハードコアバンドheaven in her arms(バンド名は恐らくCONVERGEの名曲から取ったと思われる。)がその圧倒的な存在感を見せ付けた1stアルバム。1stアルバムでありながらもHIHAは既に他の追随を許さないバンドである事を見事に証明している。
第2曲「痣で埋まる」からブラックメタル的なトレモロリフで埋め尽くされ、トリプルギターの轟音と、ブラストビートと、ケント氏の狂気と闇に満ちた言葉で埋め尽くされる。自分の中で蹲る負の感情を一気に加速させてしまいそうだ。破壊に向かう狂気ではなく、内で増幅するタチの悪い狂気が素晴らしい。
第4曲「鉄線とカナリア」ではポストロック的な静謐で美しいアルペジオが重なり合って、リズム隊も音数は少なめでタイトに、じわじわと広がっていく美しいサウンドが徐々に激しさを増していく様は、一瞬envyの名曲「Awaken Eyes」を思い出したが、envyの様に闇の中から光を求めるのではない、闇の中で闇を求めるかの感覚なのだ。
頭から狂気値を振り切った激情と、目まぐるしい展開が秀逸な第9曲「明度八の偏愛」、昨今のシューゲージングブラックメタルを彷彿とさせる第11曲「赤い夢」は何処までも優しい奈落への子守唄の様だ。
既存の激情系ハードコアの枠に囚われず、下手したらポストロック・自殺系ブラックメタル等に通じるサウンドは圧倒的な個性だ。そしてHIHAは2ndアルバム「幻月」で更なるダークサイドに足を踏み入れる事になるが、既存のバンドの物真似バンドが筍の様に登場するシーンの中で、先人たちを圧倒する勢いでシーンを更新していくHIHAの一番最初の名作だ。
黒と鮮血で染められた、深い闇と病みの世界を是非体感して欲しい。