■All the Dread Magnificence of Perversity/Gnaw Their Tongues
![]() | All the Dread Magnificence of Perversity (2009/09/08) Gnaw Their Tongues 商品詳細を見る |
Gnawは本当にこの世の負の感情を全部集めて放出させているかの様なおぞましい負の塊を発信している。オランダのMoriesによるノイズもブラックもアンビエントも飲み込んでしまった黒のみが存在するズタズタの暗黒絵巻を描くGnaw。09年発表の1stアルバムである今作も止まる事を知らない黒と血と嘔吐物で全てを埋め尽くしてしまうかの様な本物の苦痛が鳴り響く拷問ノイズ地獄と言っても過言では無い。
今作には安らぎなんて言葉はまず存在しない。聴き手に苦痛を与えるかの様なノイズがかなりローファイな音で四方八方から聞こえてくるし、音の輪郭なんてまず掴む事は出来ない。殺伐とした音圧に潰されそうになるし、何重にも重なった音は痛々しさばかり伝わってくる。ボーカルも憎しみに満ちた叫びを見せ付けているし、本当に徹底して負の感情をおぞましく描いているのだ。旋律なんて全く存在しない暴虐の独りオーケストラだ!しかしながらこの醜悪さの向こう側には計算された美意識も確かに存在しているのを忘れてはいけない。絶叫と嘔吐物といった美しさを何も感じさせない醜さに満ちた音しか鳴っていない筈なのに、その音が重なり合う事によって一種のカタルシスと美しさが見えてくるのは確かである。。狂気の沙汰は加速すればする程に、醜さすら超えてしまう事を証明していると言い切ってしまいたい位だ!そして終わり無く続く奈落の地獄絵図を聴き通した後の開放感とカタルシスもある意味今作の魅力である気もしてしまう。
この世におぞましさを感じさせる音楽は数多く存在するが、ここまで徹底的にそればかりを鳴らす音楽は滅多に無いであろう。正直言って今作は何回も繰り返し聴く様な作品ではないし、快楽的要素なんて皆無な拷問作品に違いは無いのだけれども、この音は人間の内面に潜む醜さを表現した音だと思う。この世には様々な音楽が溢れているが、この様な快楽性の無いアート的な作品も存在価値があるし、今作の音にカタルシスを感じる人も確かにいる筈だ。絶対に一部の愛好家以外には受け入れられない音楽ではあるけれど、だがその漆黒と汚物に満ちたカタルシスは確かな物である事だけは間違い無い。