■NO ALBUM 無題/bloodthirsty butchers
![]() | NO ALBUM 無題 (2010/03/10) bloodthirsty butchers 商品詳細を見る |
孤高のまま突き進んでいくジャパニーズエモのカリスマであるブッチャーズの2010年発表の目下最新作。03年に田渕ひさ子が加入して4ピースになったブッチャーズはついに一つの形になり、決して揺らぐことの無い不動のカルテットとしてのブッチャーズがついに完成したと言っても間違いないであろう。現在進行形で自らの音と感情を進化させ続けるブッチャーズにしか鳴らせない音。それのみが存在する大傑作だ。
今作の楽曲は王道のブッチャーズそのものな楽曲ばかりが並ぶ。大河の流れの様に揺ぎ無い優しい旋律と歌に満ちた楽曲の数々は確かな強さを持っている。尖った感覚は決してないし、ブッチャーズらしい爆音はどうしようもない優しさと旋律が鳴り響き、本当にただ単純に心に刺さる旋律と感情を嘘偽り無く鳴らした純粋な感情としてのロックがここに存在しているのだ!第1曲「フランジングサン」の感情を揺さぶるアルペジオが鳴り響いた瞬間に心がじわじわと燃え上がる様な感覚に襲われてしまう。透明度の高い楽曲は一歩一歩歩みを進めるような強さを確かに感じるし、間違いなくブッチャーズそのものの音だ。第2曲「散文とブルース」も滴り落ちる汗の感覚すら生々しく感じる透明度と確かな感情と優しい旋律が一気に胸を締め付ける名曲だ。第7曲「ノイズ」の伸びやかな音と哀愁を皮切りに今作は一気に感情の高まりを高めていく。特に第9曲「ocean」からその音は一気に加速していく。冒頭のストロークの一音目が鳴った瞬間に世界が一気に優しい青に染まり、透明度の高いアルペジオは一気に豊かな色彩感覚と景色と匂いが五感を刺激していく。この楽曲はブッチャーズの大傑作「kocorono」に収録されている「7月」に匹敵する感情の洪水が存在するのだ!しかも「七月」で鳴らされていたのは立ち尽くしたままの悲しみであったが、ここにあるのは少しずつ不器用でみっともなくても歩き続ける確かな強さだ!この瞬間にブッチャーズはカルテットとして完全な音を手に入れたと言っても間違いが無い。揺ぎ無き強さと進化だ!そして第10曲「curve」の美しさで心が涙を流してしまう。どうしようもない位に美しいのだ!
ブッチャーズには「kocorono」という自ら作り上げてしまった大傑作が十字架の様に存在していた部分が少なからずある。しかし今作でブッチャーズはその十字架を完全に壊し、新たな次元にある透明で純粋な強さを持つバンドに完全な形で進化を遂げた。ここまで優しい音に満ちた作品は存在しないとすら思ってしまう位だ。ひさ子が加入してから試行錯誤を繰り返していたブッチャーズであったが結局行き着いたのは真っ直ぐに自らの音を鳴らすというスタンスであったし、だからこそ最強のブッチャーズが新たに幕開けたのだ!この壮大で力強い音が存在する限り、僕はブッチャーズを追いかけ続けるだろう。そんな2010年の大傑作だ!!