■Aesthethica/Liturgy
![]() | AESTHETHICA (エスセシカ) (2011/07/20) LITURGY (リタジー) 商品詳細を見る |
ここ最近になって益々多様化が進んでいるブラックメタルというジャンルであるが、ブルックリンのLiturgyはその多様化していくブラックメタルの前線にいるバンドであり、ブラストビートやトレモロリフといったブラックメタル要素をしっかりと持ちながらも、その先にある純白の神々しさすら感じさせてしまうバンドだ。最近はブラックメタル側からシューゲイザー要素や音響的要素を積極的に取り入れるバンドが増えたが、この2011年発表のLiturgyの2ndである今作はその流れが益々拡散し、より豊かな音楽性を見せ付けている事を証明すらしていると思えるのだ。
まずブラストビートやトレモロリフといったブラックメタルの基礎となっている要素は確かに持っている、しかしその音質はかなり良いし、演奏もシャープで非常に鋭いものとなっている。更にバンドサウンドの中にエクスペリメンタルな要素をブチ込んでいる事によって本来のブラックメタルとはまた違う不穏でありながらも光と闇が瞬時に交錯していくかの様な音が簡単に思い浮かぶのだ。楽曲の展開も単調さからは程遠く、ドラマティックであり、ツインギターのトレモロリフの音がその世界に重厚さを与えている。その神々しさを感じさせる音は陰鬱でありながらも、トランス出来るトリップ感覚すらあるのだ。
それにしても楽曲の基盤となっている旋律がまた不思議な物であるのだ、不協和音であるのに、メロディアスさすら感じさせ、かといえば不穏の轟音とも取れる不穏の音。しかしその掴みどころの無い旋律こそがLiturgyの大きな魅力と言っても良いだろう。更に曲によってはマスロック的なキメを多用するパートが登場する曲もあったり、陽性のキャッチーさを仄かに感じさせる旋律が登場したりと、本当に雑多な要素を持っているバンドだと言える。そしてそれらを超ドラマティックでありながら感情移入を許さない冷徹さで鳴らしているのだ!
ブラックメタルというジャンルは最早簡単に括る事が出来ない位に多様化が進んでいる。そういった流れの中でLiturgyの様なバンドの登場は必然といっても良いだろう。王道のブラックメタルからはかなり程遠いバンドではあるし、最早ブラックメタルの枠組を考える必要性すら無いバンドではあるが、Liturgyの持つ超ドラマティックであり冷徹な世界はブラックメタルの進化を象徴しているのでは無いかと思ったりもするのだ。