■Monochrome/Rorcal

スイスの極悪激情系スラッジコアバンドであるRorcalの1曲入りの作品。08年発表。僅か1曲でありながら35分に及ぶスケールの大きい作品であり、アンビエント・ポストロック・スラッジコアが渦巻く超轟音作品であり、その壮大さで鳴らされるのは全てを粉砕する破滅的ハードコアだ。そのカタルシスは美しさを感じさせながらも、矢張り憎しみと悲しみに満ちている。
まず序盤はダークアンビエントな音がSE的にくぐもった空気を作り出し、聴き手に不安を与えていく。そこからポストロック的静謐さをもったリズムとぐにゃりと歪んだギターフレーズと淡々とドゥームな音階を鳴らすベースが不気味に終わり無く響く。そしてそこから一気に轟音の激重リフが全てを埋め尽くす。しかしただ単純に破壊力に任せた音を鳴らすのではなく静謐で厳かな空気をしっかりと受け継ぎながら、その音圧を強めているのだ。ハードコアの破壊力を徐々に高めていきながらも、NEUROSISを彷彿とさせる様な美意識に満ちた壮大さ、血反吐を吐く勢いでシャウトを続けるボーカルと女性ボーカルの美と醜の対比もまた耽美な美しさを生み出し、そのドス黒い世界が聴覚を侵していく。
そしてまた静謐なポストロックパートに移行する中盤は女性ボーカルの儚い歌声と、徐々に燃え上がっていく音が次第に激情の音に変わってく。そしてそのまま再び狂気と殺気に満ちたシャウトが木霊し、楽器隊の音が破滅をとんでもなくドラマティックに奏で始める。ポストメタル的なアプローチでありながら粗暴さと美しさがギリギリのバランスで同居し、そしてドラマティックかつ耽美に響く。そしてそこから悪夢の様なスラッジ行進曲へと変貌。フリーキーなサックスの音はとんでもなく不気味だし、終わりの無い悪夢の様な感触が脳髄を蝕む。そして引き摺る様に虚無と破滅を少ない音数でありながら、一音の重さが尋常じゃ無いギターリフとドラムが完膚無きまでに粉砕していく終盤。そしてその熱量が漆黒の炎として全てを巻き込み、破壊した先のサックスとキーボードが織り成す穏やかな虚無で今作は終わる。
スラッジコアの枠をしっかりと守りながらも、その先にある音を今作では鳴らしているし、そこにドラマティックな構成と展開を交える事によって無慈悲な破壊力を持ちながらも漆黒の激情を鳴らす事に成功している。こいつらの音はNEUROSISのそれをしっかり吸収し消化しながら、よりハードコアな粗暴さで鳴らされている。破滅のカタルシスがそこには存在しているのだ。
また今作は下記の公式サイトのDISCOGRAPHYからフリーダウンロード出来る様になっている。
http://www.rorcal.com/doom/