■LOSTAGE/LOSTAGE
![]() | LOSTAGE(DVD付) (2010/06/02) LOSTAGE 商品詳細を見る |
奈良県から全国にこの鋭利なオルタナティブサウンドを爆音で発信するLOSTAGEの2010年発表の4枚目のアルバム。前作までLOSTAGEは4ピースであったが、メンバー脱退により今作から3ピースとなっている。ギターが一人いなくなってしまったというピンチとメジャーレーベルとの契約を終了しインディーズでのリリースというピンチ、その二つのピンチを乗り越えた先にあったのは、ギターが一本になってしまったからこそ、よりギターリフの殺傷力と存在感を強め、その逆境をバネに自らの音の精度を高めたと言える。
今作はまさに引き算で制作された作品だ。音数が必然的に少なくなったからこそ、今までの音からの変化は本当に大きい。ツインギターの絡みこそ無くなってしまったが、そのギターリフはさらにざらついた感触で聴き手の耳に入ってくるのだ。第1曲「ひとり」からもそれは伺える、イントロから一気に持っていかれ音圧とリフの力が増したギターリフはよりダイレクトに突き刺さる物へと変貌を遂げている。それでいて侘び寂びのある旋律の流れと展開は感情にダイレクトに直結するのだ。第2曲「断層」も少ない音だからこそ、鳴らす音の強度を強め、一つ一つの音に音圧と迫力を加速させ、より鋭角な音を見せ付けてくれている。
更には楽曲の幅もこれでもかと広げてきた印象を今作からは感じる。第4曲「裸婦」のZの根本潤のサックスの音とそれと共鳴するかの様なダブ的なベースラインと土臭い臭い空気を楽曲全体で発しながらも、それをあくまでもオルタナティブロックとして鳴らしたそれは新境地だと言えるし、第6曲「TOBACCO」のストレートでありエモーショナルであり風通しの良い疾走感は本当に気持ち良い。そして終盤の情緒豊かでありながらもざらついた金属感触はまた素晴らしい。第7曲「喉」のダウナーであり、くぐもった感触から一気に歪んだ音へと変貌していくそれや、第8曲「眩暈」の微熱の熱量もまたナイス。そして最終曲である第9曲「夜に月」でそのエモーショナルな哀愁を暴発させていくのはLOSTAGEだからこその音だ。
バンド最大のピンチを乗り越えたLOSTAGEはその音の精度を高め音楽的な懐も深くし、より孤高のオルタナティブバンドへと進化した事を今作で見事に証明した。何よりも今までの作品とは覚悟の違いといった物が今作からは伝わってくる。90年代USオルタナを起点にして始まったLOSTAGEの音はその覚悟を以って更なる尖りきった殺気と感情を鳴らす物になったのだ。今こそこのバンドはもっと多くの人に聴かれるべきであるし、今の知名度と立ち位置はLOSTAGEの音楽に比べても全然だとすら思う。もっと多くの人にこの音が届いて欲しい限りだ。