■5ive/5ive
![]() | 5ive (2002/11/26) 5ive 商品詳細を見る |
マサチューセッツのスラッジデュオである5ive(ファイブ)の02年発表の1stアルバム。ギターとドラムのみという最小限の形態のバンドであるのだが、そのたった二つだけで全てを塗りつぶす悶絶重圧殺スラッジを描き出しているバンドだ。とんでもなくヘビィな音を鳴らしているのは勿論なんだけれど、こいつらはそれだけじゃなくその音で時空軸や空間の歪みを最大レベルまで引き起こし、この世界の磁場を完全に狂わせてしまう。まさに超次元宇宙行きスラッジコアだ。
まずその音に一片の油断なんか全く無い。必殺のスラッジリフが作品全編を通してその空間を埋め尽くし、その濁流が容赦無く耳から視界までもを支配するドス黒い煙を噴出している。そしてドラムも凄まじい、一発一発の音が頭上に投げ落とされる岩石の様な破壊力を持っているし、それが常に聴き手を襲うのだから本当に人を捻り潰せる音なのだ。それでいて正確無比のタイトさでその音と音の余白すら聞かせる空間支配の音でもあるし、そこに引き摺り這い回る粘着質な感触もあるのだから本当にタチが悪い。第1曲「Burning Season」からほぼワンリフでの進行にも関わらず、その圧倒的破壊神具合とギターとドラムの殺し合いみたいなぶつかり合う音がとんでもない衝撃波を巻き起こして、それが宇宙を生み出すビッグバンとなっているのだ。第2曲「Orange」もEW級の煙たい音塊が酩酊感を生み出し、聴き手がそのサイケデリックな感触で脳髄がやられた所をスラッジリフで粉砕という完全犯罪級の殺戮方法を確立していまっている。その音はストーナーであり、サイケデリックであり、トランス感覚を生み出している。それをドラムとギターのみで生み出しているのが5iveの恐ろしさだ。第4曲「Jules Verne's Dream」、第5曲「Bicycle Rider」の螺旋を描く宗教的な音階からの、完全にラリってバッドトリップしてしまうかの様な感触もまたおぞましい。第6曲「Cerrado」なんてその破壊力を完全に開放し、その肉体を完全に粉にしてしまうかの様なスラッジハンマーが振り注ぐ危険地帯。そのオーバーキルなヘビィさから負のトランス状態へと導きそして飲み込んでいく化け物が口を開き涎を垂らしながら全てを食らい尽くしていく。
Electric Wizard以降のサイケデリックドゥームとしてはイタリアのUfomammutやLentoもEWすら食い殺す勢いの殺気とヘビィさを見せ付けてくれていたが、こいつらも完全にそれだ。ぐにゃぐにゃに捻じ曲がった時空を生み出し、その中で終わり無く渦を巻く煙たさと音塊、全てを飲み込む濁流と振り落とされるスラッジハンマーと噴出する酩酊の煙が三位一体となり聴き手の全てを破壊し奪い尽くしていく大量殺人者としか言いようの無い皆殺しの音楽がこれだ。それをギターとドラムだけでえ生み出せるこいつらは本当に恐ろしいバンドだと思う。1stにしてドゥーム・スラッジの大傑作。