■秋/rowthe

水戸出身で現在都内で精力的に活動をしている5人組の激情バンドであるrowtheのライブ会場で販売されている3曲入りシングル作品。rowtheはその超高次元の音塊を描くライブが特に素晴らしいのだけれども、音源の方でもその音はしっかりとパッケージされている。それにrowtheの魅力はストレートなロックバンドとしての音を鳴らしながらも、ツインギターが立体的に絡み合い緻密に練り込まれた音、季節であったりとかそういった物を日本語詞で歌い、その侘び寂びを感じさせる日本人ならではの心象風景を描く旋律、末山氏のクリーントーンの歌と、歪んだシャウトを巧みに使い分け、エモーショナルな激情をダイレクトに放つボーカルスタイル。それらが組み合わさって心に沁みる歌心を見せつけながらも、ヘビィなリフが鳴らす旋律と空間的な歪みがそれをより高次元の音に仕上げているのだ。
第1曲「雲居の空」と第2曲「秋」は繋がった楽曲であるのだけれど、「雲居の空」のメロウで美しい旋律がその風景であったり季節を想起させ、そこから徐々にその熱量を高めていき、そのドラマティックな熱量を保ったまま「秋」ねと雪崩れ込む。疾走感溢れるストレートな音と末山氏の歌が見事にマッチし、胸を掻き毟る激情とパッションが溢れ出す音になっている。ロックバンドとしてのスタンダードな音を鳴らしながらも、決してそこに甘えてなんかいないし、そのエモーショナルな感傷を高次元の立体的なサウンドで組み合わせた物だからこそ、そのスケールの大きさに圧倒される。
第3曲「双月」は更にグッとその歌心を見せ付ける1曲。末山氏はボーカリストとして独自の歪みを感じさせてくれる人であり、その感情や風景を楽器隊の音とシンクロさせ、その焦燥感をより確固たる物にしている。似た様なボーカリストがまずいないし、スタンダードなスタイルを取っていながらも、その歌は微かな感情の変化やそういった物をしっかりと伝えてくれる物である。rowtheはバンドとしての確固たるスタイルを確立しているが、それに加えて末山氏のボーカリストとしてのカリスマ性やそういった部分がよりrowtheの音は決定的な物にしているのだ。
僅か3曲入りのシングルであるが、rowtheの鳴らす世界観は確実に伝わってくる物であるし、その情緒豊かな音と歌には本当に虜になってしまうだろう。しかしながら音源以上の音を鳴らすライブはもっと素晴らしい物がある。音源完全再現であり、それに加えて空間を一気に支配する轟音の洪水がrowtheの神秘性を更に高めているのだ。やはりこのバンド、一筋縄ではいかない。