■Hardcore Will Never Die But You Will/Mogwai
![]() | Hardcore Will Never Die But You Will (2011/02/15) Mogwai 商品詳細を見る |
最早轟音系ポストロックバンドとして説明不要の不動の地位にいるMogwaiの2011年発表の7枚目のフルアルバム。傑作1st「Young Team」でタッグを組んだポール・サヴェージと再びタッグを組み製作された作品だ。前作は自らのルーツに回帰し、ロックバンドとしての力の強さと不動かつ豊かな美しい旋律を聴かせる傑作であったが、今作はそのバンドとしての強さは変わらず、もっと多様なアプローチを見せてくれた作品になった。しかしながらファンの間では評価が分かれそうな問題作でもある。
今作の音は紛れも無いMogwaiそのものな音であるのは間違い無い。しかし未だかつてない位にポップになった作品でもある。Mogwaiはその轟音の向こう側にあるシリアスな旋律こそが核になっているし、それは今作でも揺らがない物として存在しているけど、Mogwai特有のダークさは後退した印象を受けるし、今までに無くクリアな作品になっている。第1曲「White Noise」からしてタイトル通りのクリアでたおやかな音が比重を占めている楽曲になっているし初聴で驚きを受けた人も多いと思う。しかしその音は紛れも無いMogwaiの音であるし、自らの旋律だけで勝負した曲とも言える。それでいて奥行きを感じさせるサウンドスケープは健在だ。しかしMogwai特有のシリアスなダークさを孕んだ楽曲も健在。第3曲「Rano Pano」は冒頭から歪みまくり引き摺る様なリフで始まる。だがそのダークさから少しずつ光が差し込む様な展開だし、今までに無い位にクリアでもあるのだ。前作からの流れを感じさせてくれる第5曲「San Pedro」の高揚感と疾走感は聴いてて非常に気持ちの良い音になっているし、第2曲「Mexican Grand Prix」のボーカルを入れ、シンセライザーの旋律と感情豊かな旋律がバンドとして美しい流線型を描いている楽曲だし、間違いなく新境地とも言える方向性だ。今作は今までに無く多様な音を導入しているけど、作品全体として非常にクリアなのだ。だからMogwaiのダークさに惹かれていた人にとってはパワー不足を感じてしまう部分も少なからずあると思う。だがMogwaiの核になっている純白の旋律は今作のクリアな音とリンクしているし、Mogwaiが新たな境地へと踏み込んだ証拠でもあるのだ。第8曲「How To Be A Werewolf」の天へと昇っていくかの様な音像と少しずつ差し込む光へと導かれる様な楽曲であり、今作でのMogwaiの進化を一番強く感じさせてくれる名曲だ。
今作はMogwai特有の音圧と轟音とダークさこそ後退してはいるが、新たな方向性と透き通った旋律が響き渡る作品になっているし、新たなアプローチをしてもMogwaiとしての核は絶対に揺らいでいない。今作でのポップにすらなったと言える変化からMogwaiは次の作品でどのようなアプローチを仕掛けてくるかは非常に楽しみであるし、そこに更なる進化があるのは間違いない。