■フォーク/Discharming Man


フォークフォーク
(2011/09/21)
Discharming Man

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 元キウイロールの蝦名氏のプロジェクトであるDischarming Manの2011年発表の3rdアルバム。前作「dis is the oar of me」にてバンドでありながらオーケストラとも言うべき壮大極まりないエモーショナル絵巻を展開し、大傑作に相応しい出来であっただけに今作でどの様なアプローチになっているかは非常に気になっていたが、今作では必要最小限にまでに音を削ぎ落とし、ありのままの歌と純度100%の旋律のみで勝負した作品だ。バンドのアンサンブルこそ強靭であるが、本当に素朴で剥き出しの歌とメロディのみが今作には存在する。



 音自体はポストロック的な構成の楽曲が今作には多く、引き算の方法論によって必要な音のみで最大レベルの感情とメロウさを表現した作品だと言える。一つ一つの音の静かな波動の様にじんわりと響く感触を持っており、爆音に頼らずともその旋律のみで感情を優しく刺激していく。そして蝦名氏の歌が史上最大レベルで悲しみも憎しみも全て肯定するかの様な優しさと強さを以って響いてくるのだ。バンドとしての音が最小限の構成になったからこその、歌を最大限に生かす音になっていると同時に純粋にその旋律や骨組みの強度も強靭な物になったのだ。第1曲「カッコウが鳴いている」のポストロック的なアレンジと少ない音だからこその絶対的な歌と旋律が絶対の物になっているし、第2曲「blind touch」のDischarming Man印の静謐さからの感傷に満ちた楽曲がより確かな説得力を手に入れ鳴らされているからこその涙腺を静かに刺激していくかの様な青さも、今作を語る上では絶対に外す事は出来ない。第7曲「今」のスロウな旋律から徐々に熱量を高め終盤で轟音バーストする楽曲でも蝦名氏の歌の温度は全く変わっていないし、今作で最も性急な第8曲「disdoor」も加速する音とは裏腹に、他の楽曲と全く変わらないテンションで歌も旋律も紡がれている。本当に全ての音が包み込むかの様な優しさを孕んでいるし、全ての歌がどう聴いても蝦名氏の歌であり、その平熱のテンションとの裏にある感情と熱情が胸を熱くさせてくれる。そのイノセンスが最も強く出ている大作である第9曲「funnyborn」にて静かに語りかけるテンションの歌と湿り気のあるアコースティックギターの旋律の物悲しさが融和し、静かな熱量を少しずつ高めるストーリー性の強さ。本当に最小限のコードしか使用していないのに感情的な音とドラマティックさを鳴らし、飲み込まれそうになる感情の坩堝に支配されそうになってしまう。



 もう元キウイロールなんて肩書きがいらないし、それほどまでに今作では蝦名氏の歌もバンドのアンサンブルも揺ぎ無い物になったのだ。深度と透明なイノセンスを極限レベルにまで引き上げたからこその今作、本当に純粋な歌と旋律だけでここまでの作品を蝦名氏は作り上げたのだ。エモ・ハードコアを経過したからこその強度と、裸のままのアコースティックさが極まった今作、Discharming Manはまた大傑作を生み出してしまった。2011年最重要作品の一つだと断言したい。



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