■Heavy Methyl/SINE
![]() | HEAVY METHYL (2010/03/03) SiNE 商品詳細を見る |
nemoの本間氏を中心にPLUGDEAD、LimitedExpress(has gone?)、Maiysha、shobu、toddleというオルタナシーンの猛者が集結して結成されたダブバンドSINE(シネ)の2010年発表の1stアルバム。SINEは既存のダブとは全く違う音を模索しているユニットだ。その音はダブとハードコアの異種交配とも言うべき音になっており、更にはノイジーさも付加された新鮮な音を鳴らす意欲作になったと言えるだろう。レーディング~マスタリング・エンジニアに益子樹氏(ROVO)を迎えており、益子氏の仕事もSINEの音をより明確な物にしているのも見逃せない。
言うなればSINEの音は本当にジャンクな音だ。隙間を埋め尽くすノイズとサックスの不穏さと、ハードコア・オルタナ通過のギターフレーズ、ハードコアとダブを行き来するグルーブ、ダブ処理を惜しみなく施したかと思えば、一気にノイズ塗れのハードコアさが表に出たり、楽曲によってそのアプローチを使い分け、未整理なジャンクさでありながら、確実にハードコアダブとしか言えないSINEの音を成立させている。ダブのグルーブ感とハードコアな攻撃性が融合してより肉体へと効果のあるゆらめきとアグレッシブさが高まった音は直接的でありながらも、じわじわと脳内に入り込んで行くかの様な感覚を覚えてしまう。第2曲「夢魅たて」なんかはそんなSINEのサウンドコンセプトが凄く分かりやすく伝わってくるし、自在にダブ・ハードコアを行き来し、更に雑多な要素を詰め込んだジャンクさも非常に魅力的な1曲になっている。フリージャズ要素を盛り込み、メンバーそれぞれの演奏が火花を散らす緊張感に満ちた第4曲「ボーダー」、青臭い旋律とノイジーさが際限無しに加速するハードコアさに、真夏の秋霜感のレゲエサウンドをミックスした第6曲「回想ホログラム」、アグレッシブなグルーブとダブ処理が見事にマッチした、縦からも横からも揺るがしてくれる不穏のダンスナンバーである第7曲「HACHI」と今作の音は本当に縛りの無い物であるし、豊富なアイデアを柔軟に生かし、それをシーンの猛者共がグルーブ感と緊張感でぶつかり合うハードコアさこそが今作の魅力だ。
それぞれが確かなキャリアを持つ猛者が集結したバンドであるが、それぞれの経験を最大限に生かしながらそこから更に新しい音を生み出していくSINE、その自由度の高いダブサウンドは百戦錬磨でありながらも、大人になりきれない大人達の青臭さすら感じさせてくれる。ハードかつドープなこの音は病み付きになります。