■Gottesmorder/Gottesmorder

多くの海外の激情系やポストメタルの音源をリリースしているTokyo Jupiter RecordsのTOKYO JUPITER exclusive CDR series。ロシアの激情ポストメタルRekaやスウェーデンの激情ハードコアVia Fondoの音源をリリースし即完売を記録したこのシリーズの第3段としてリリースされたのは、イタリアはピサのポストブラックメタルバンドであるGottesmorderのデビューEPである。Magdaleneのメンバーが在籍するこのバンドはLiturgyやAltar of Plaguesとも共演しているバンドであるのだけれども、今作はデビューEPにして2曲25分の超大作。更にTokyo Jupiter盤限定で次回作のプレビューとなる完全未発表のボーナストラックを収録した全3曲だ。ミックス・マスタリングはLentoのメンバーの手による。また今作は25枚限定プレスの限定盤でもある。
今作はブラックメタルとシューゲイザー・アンビエント要素をバランス良く配合した音となっており、アンビエントなシンセの音なんかも盛り込み、ブラックメタルらしいおぞましさもしっかりと感じさせてくれる。しかしこのバンドの一番の持ち味はそのハードコアな激情要素を長尺の楽曲の中で一つの物語として起承転結のしっかりしたドラマとして鳴らしている事だ。第1曲「Winternight」なんか序盤のアンビエントパートから徐々に視界を覆う神々しい轟音の波、美しい旋律と轟音の中でドラマティックに熱量を高めていく楽器隊の音はブラックメタルでありながら激情その物と言っても全くおかしくなんか無い。野太く力強いシャウトをするボーカルと共にトレモロリフは空間を埋め尽くし、ブラストビートのミサイルと共にクライマックスへと暴走していく。ブラックメタルのカラーをしっかりと出しながらも空間的な音の作り方はかなり緻密であるし、その中で粗暴な激情をダイレクトに伝えるタフネスも持ち合わせているのだから凄い。静謐さから全てを吹き飛ばす嵐の様な音へと徐々に変貌させる構成力もそうだし、何より全ての音が楽曲の中でそれぞれ役割を持ち、一つの壮大な物語となっているのだ。終盤の次元を歪ます轟音は真っ黒な世界に救いの光が差し込むかの様な情景すら浮かんでくる。第2曲「Abyss Of Throats」も同様に11分にも及ぶ壮大な物語であり、鐘の音の様なギターとハイハットの音が厳かに響く中で狂気的なボーカルが入っていくという激情と狂気が入り混じった物であり、その厳かさのまま、それぞれの音の音圧を強め、また一つの物語の熱を高めていく、旋律もメロウさが際立ちポストメタルな感覚によってその音の一つ一つが静かに呼吸し、そこから全てのリミッターがブチ壊れ、音がうねりを上げるという構成はやはり非常にドラマティックであるのだ。ブラックメタルなトレモロリフを空間的に鳴らす事によって生まれる神々しさと極寒の音はWolves In The Throne Roomにも通じるが、こいつらは闇の中に微かに光が混じる混沌である。
多くのバンドと殺り合った経験もあるのか1st EPにして既に圧倒的物語の様なポストブラックを鳴らしているGottesmorderはそのストーリー性のある音楽を最大限に生かす激情として鳴らすバンドだ。多くのポストブラックのバンドが登場し活躍している昨今であるが、こいつらもまたそれらのバンドに負けないポテンシャルを強く感じる。これから追いかけるつもりだ。
また今作は完売し、現在は入手不可になってしまったが、今後もTokyo Jupiterの方で音源が発表される可能性が高いだろうし、下記リンクのTokyo JUpiterのサイトを随時チェックして欲しい。また今作の音はYoutubeの方でもチェック出来るのでそちらも下記リンクから是非!
Tokyo Jupiter Records