■Mass III-IIII/Amenra

ベルギーが誇る激情ポストメタルバンドであるAmenra。世界でも屈指のドス黒く激重の音を放出する極悪極まりない怪物バンドの06年発表の「Mass III-II」と08年発表の「Mass IIII」をコンパイルしたディスコグラフィー的作品が今作だ。今作は2011年に日本のレーベルであるTokyo Jupiterからリリースされ、今作でAmenraは本格的に日本に上陸を果たした。また全曲リミックス・リマスタリング、ボーナストラック2曲収録という豪華極まりない仕様にもなっており、激重音楽愛好家は絶対に外せない最重要音源と断言出来るだろう。
Amenraの音はCDを再生した瞬間から瞬く間に漆黒の煙で視界が覆われてしまう位、聴き手の脳内の世界を支配するだけのパワーを誇るバンドだ。5ピースの重厚なアンサンブルは鉄壁であるし、徹底して遅く重く、ヘビィなリフに込められた邪念は凄まじい物であるし、負の方向へとメーターが振り切れた音を激情のままに放出している。しかしただヘビィで邪念に満ちた激情を放出してるだけじゃ無いのがAmenraだ。Neurosis等の先駆者のハードコアの粗暴さも継承しながらも、緻密な構成力と芸術的な音の世界も継承した上で、それをより時空を捻じ曲げるパワーで鳴らしている。空間を埋め尽くすヘビィネスの激震の音から、不穏のフレーズが静謐な中で鳴り響くパートへの落差も激しいし、その中で激情バンドらしい旋律の美しさも感じさせてくれるのだ。「Am Kreuz. 」という楽曲なんか狂気のシャウトと無慈悲なリフが常時降り注ぐスラッジさが重圧殺のバーサーカーとしての猛威を見せつける序盤からヘビィでありながらも厳かな美しさを感じる中盤では美しい女性ボーカルの歌声とパラノった狂気のシャウトが美と醜のコントラストを作り出し、その中でスケールの大きい美しい旋律がスロウなビートに乗って鳴り響いてる。「Silver Needle. Golden Nail」という楽曲も前半ででアンビエントなカラーも取り入れ、後半から一気にスラッジな音を展開するという構成になっているし、基本的な音は激情スラッジをポストメタルな緻密さでドス黒いまま暴発させるというスタイルであるが、アンビエントなどのカラーも効果的に取り入れ、その楽曲の中での落差を見事に物にして、それがAmenraの粗暴さをより際立たせている。クリーントーンで静かに歌うパートもあり、楽曲の中でテンションを効果的に変えているのもポイントが高い。不穏の音色が無慈悲かつ漆黒のまま淡々と鳴り響く中でクリーントーンのボーカルが聴き手の不安を煽り、焦らしに焦らす前半から暴発のスラッジ激情パートへと繋がり、その中でも不意に静謐なパートを盛り込む「Aorte」なんかも聴き手の精神へと触手を伸ばして侵略するかの様な楽曲もある。「Ritual」のポストロック的静謐な美しさから終わる事の無い悪夢の様な黒の轟音が全てを飲み込む破滅的スケールは異形の怪物みたいな音でありながら、その向こうの旋律に見とれてしまう。後半の野生を剥き出しにするスラッジさなんか本当に荒涼とした世界に立ち尽くしているかの様だ。またボーナストラックとして収録されている「Shapeless Pain Live 23.10」というライブ音源も凄まじくAmenraの漆黒の激情を圧倒的スケールで体現し、意識を持っていかれてしまう事は間違い無しだ。
おぞましい漆黒の音を圧倒的スケールで鳴らすAmenraはベルギーが生み出した怪物そのものだ。何も出来ずに平伏すしか無い暗黒神としての力と猛威、理性的な緻密さ、破滅へと突き進む終わりのストーリー、これらを全て100%の力で発揮した怪物だ。NEUROSISのレーベルであるNeurot Recordingsと契約を果たした事実も頷けるだけの力をAmenraは持っている。偉大なる先人すら喰い殺してしまいそうな恐ろしいバンドである。
今作は下記リンクのTokyo Jupiter Recordsにて販売されており、今作で本格的に日本も漆黒の激重サウンドで飲み込もうとしている。またこちらも下記リンクのTokyo JupiterのページにてAmenraのBiogoraphyが綴られているのでそちらも是非!
Tokyo Jupiter Records
Amenra Biogoraphy