■YOLZ IN THE SKY/ヨルズインザスカイ
![]() | YOLZ IN THE SKY (2007/04/04) YORZ IN THE SKY 商品詳細を見る |
ヨルズインザスカイ(以下ヨルズ)は00年代の関西から登場したNo Waveのジャンクさを継承し、それをダンサブルな16ビートの悪夢として鳴らす人力ダンスバンドだ。今作は07年に危険音源発信レーベルとして名高いless than TVからリリースされたヨルズの1stアルバムである。初期Sonic Youth、P.I.L、等の80年代初期のバンドの影響を消化し、00年代の混沌のダンスミュージックとして鳴らすヨルズは4ピースのシンプルなバンド編成とは裏腹に、硬質のジャンクロックなギターの感触、無機質なビート、それに乗るハイトーンのボーカル、混沌へと向かう悪魔がヨルズの音だ。
ヨルズはテクノとポストパンクのビート理論の独自解釈によるジャンクなビートが先ず大きな持ち味である。不協和音の音階を行き来するベースラインと金属的な音色のドラムのビートは人力でありながらも、機械的なビートを叩き出している。そのビート理論とNo Waveなノイジーかつジャンクなギターの音はカオティックなダンスミュージックとしての猛威を発揮する。第1曲「Master Bait Wave」からジャンクなハンマービートと蠢くベースがビートを生み出し不協和音のギターとハイトーンボーカルによって悪魔のダンス天国が生み出されている。ヨルズの音は無慈悲なジャンクロックであるが、その楽曲はどれもダンサブルな曲であるのだ。ノイジーな音の中で反復するビートが相乗効果となって踊れるNo Waveミュージックとなっている。それはいけない物をキメて覚醒と酩酊が同時進行する脳髄から神経へとヨルズの音が伝達して肉体を動かす。第2曲「地下室のピエロ」の耳に残る必殺のアーミング駆使のギターリフと性急なビートの変則的な音がスリリングなキラーチューンにもそれは大きく現れている。ミニマムなビートのDNAの様なノイジーなギターが特徴的な第4曲「デタラメ」なんかはヨルズのルーツとなっているNo Waveの時代の音の空気を継承した上で、それをより混沌へと向かわせる楽曲だ。徹底してジャンクさとダンサブルなビートは今作で貫かれているが、第7曲「赤い雨」はそのヨルズ印の音を10分以上にも及ぶ尺で感傷的な旋律も盛り込みながら終わりへとフラフラ導かれる名曲だ。
ポストパンクとNo Waveとダンスミュージックとジャンクロックの理論を配合し、それを00年代関西の混沌の音として唯一無二のダンスミュージックとして表現した今作であるが、その奇妙な歪みを生かし、その断層から混沌へと手招きするピエロが眼球剥き出しで血塗れで踊る悪夢のダンスミュージックは正に危険信号その物だ。その混沌と共に肉体が朽ちるまで踊るだけだ。