■Opiate Sun/Jesu
![]() | Opiate Sun EP (2009/10/27) Jesu 商品詳細を見る |
実験作であり1曲50分にも及ぶ大作であった「Infinity」から間を空けずにリリースされた09年発表の4曲入りのEP。「Infinity」とは違い、これぞJesuと言うべき幽玄の音で埋め尽くされたへビィさを感じさせながらもメランコリックな旋律が聴き手の心をそっと暖かくする様な作品だ。へビィロックと美しい轟音の融合というJesuの生み出した方法論で作られた作品だが、細やかな部分での緻密さや一つ一つの音が優しく染み渡る様な透明度の高さはやはり健在だ。
今作はかなりシューゲイザー的な音が多い作品であり、インダストリアル的な殺気はやはり皆無であるのだけれども、緩やかなBPMの中で郷愁の旋律を奏でるへビィさを持ちながらも色彩豊かな轟音と、電子音がその旋律にさらに色彩を加えていく。ジャスティンの歌もその音とリンクし、センチメンタルな感触で淡々と歌を紡いでいる。リフの作り方自体は音数を絞っているし、一つのリフがどこか引きずる様な残響によって空間を埋め尽くす轟音になっており、へビィロックの血肉を感じさせながらも、その旋律はやはりそのへビィさ以上に美しさが勝る。淡々と紡がれる音の中で長い雨が降り注ぐ情景の中に淡い光が差し込む様なオーガニックさも感じさせてくれるし、その光の色彩が煌く瞬間に聴き手には大きな感動がもたらされるのだ。轟音の雨の中で無数の光が差し込み陽性の旋律とセンチメンタルな郷愁が胸を打つ第1曲「Losing Streak」から完全にJesuの世界へと引き込まれるし。クリアなトーンと郷愁の音を淡々と紡ぎながらも、轟音のカーテンが生み出すスケールの大きさとその中でどこか物悲しさも感じさせ、胸を少しずつ熱くさせられてしまう第2曲「Opiate Sun」と第3曲「Deflated」のメランコリックさも堪らない。唯一インダストリアルなへビィさを感じさせる第4曲「Morning Light」こそダークさを感じさせるが、それでも幽玄の音の粒子が見えてくる様な音が渦巻き、その漆黒の音からシューゲイジングする轟音の嵐が闇すらも吹き飛ばし、新たな光へと導いてくれる様は本当にドラマティックだ。
今作はこれぞJesuとも言うべきへビィロック×シューゲイザーな王道のJesuの作品であるが、よりメロディアスになり、よりスケールの大きい感動を聴き手に与える説得力も増した作品に仕上がったと言える。Jesuでも屈指のキャッチーさであるが、それでも幽玄でありながらどこかへビィな音は健在であるし、だからこそ神秘的であり感動的な光の音楽と成り得るのだ。緩やかなBPMの中で紡がれる音の世界はJesuだから出来る美しく涙溢れる感動のへビィシューゲイザーだ。