■Garten Der Unbewusstheit/Corrupted

大阪が誇る日本最強激重スラッジバンドであるCorruptedの実に6年振りの3枚目のフルアルバム。今まで発表された2枚のフルアルバムがワントラックの超長尺曲だったのに対し今作は全3曲となっている。しかしながら3曲で60分越えのスケールは相変わらずであるし、へビィでありながらも芸術的な美しさを持つ音を鳴らすコラプの真骨頂は今作でも発揮されているどころか、更なる進化を遂げている。冷徹な音の世界へと誘われる事は間違いないであろう。
今作はコラプの中でも屈指のフューネラルさを持った作品であるし、静謐なパートで極端に少ない音が作り出す緊張感は神経の一本一本まで刺激する脅威となっている。第1曲「Garten」から29分近くに及ぶ大作であるし、序盤の静謐なギターのクリーンな音色と、今にも消え入りそうなハイハットの音のみで作り出す荒涼とした風景は寒気しか感じない位に悲しみの音色を奏でている。2ndでもこの様な作風を見せていたのだけれど、より高まった表現力を今作では痛感するし、長時間の静寂を打ち破り、hevi氏の悲しみと痛みに満ちたボーカルと歪んだギターリフの鉄槌が下った瞬間のカタルシスはやはりかなりの物。しかしながら今作はヘビィである事には変わりは無いのだけれども、それに加えて人間の負の感情をより刺激する旋律も明確になっているし、それに加えて徹底した芸術的な美しさも加速しているから恐ろしい。アンビエントパートでのhevi氏の語りに聴き手は正座で聴き入るしか無くなり、再びそれを打ち破る美しさとヘビィさと悲しみがMAXになった轟音の洪水に飲み込まれるだけだ。徹底した美意識と緻密さをコラプは手に入れてしまったのだ。アコースティックな4分半のインストでありながら重苦しさは全開の第2曲「Against The Darkest Days」を挟み、第3曲「Gekkou no Daichi」へ。この曲はEP「Se Hace Por Los Suenos Asesinos」に収録されているアコースティックな楽曲である「月光の大地」のリアレンジであるが、全く別の楽曲になっており、序盤の静謐かつ緊張感に満ちたアコギのフレーズからコラプのお家芸である、激重のリズムが鳴った瞬間に、破滅寸前のスラッジサウンドがその静謐さを破壊しながらも、その空気感と悲しみは地続きどころか更に増幅している。スラッジどころかフューネラルドゥームの領域に到達した悲しみのヘビィネスが渦巻き、終わり無きフューネラル絵巻へとなっている。今までのコラプも勿論、人間の内面の負の感情をかき集め、それを誰にも真似できないヘビィさで放出していたが、そこに旋律の美しさとより明確になった音の輪郭が加わった事によって、自らの音を完全に次の次元へと到達させてしまったのだ。そして終盤の輪郭を失った轟音が渦巻く瞬間に、聴き手はどこか浄化された感覚すら覚えるのだ。
今作は既に脱退してしまったボーカルのhevi氏とギターのTalbot氏が参加した最後の作品となってしまったが、それでも彼等が長年に渡り鍛え上げた物が今作で極まっているし、それだけに二人の脱退は本当に惜しいが、しかし我が道を歩む事を決めたhevi氏とTalbot氏とは別にコラプは新メンバーを迎えて現在も活動している。今作すら置き去りにする作品を生み出す為にコラプは続いているし、今作で見せた進化と芸術的スラッジ絵巻は絶対に消える事は無いのだ。