■Risk Revival/HOT CROSS
![]() | Risk Revival (Dig) (2007/02/20) Hot Cross 商品詳細を見る |
数多くのバンドに絶大なる影響を与えたUS激情の雄であるHOT CROSSの07年発表の2ndにしてラストアルバム。1stでも独自の激情を展開していたが、今作では更にバンドのアンサンブルを明確にし、ダークさを削ぎ落とした結果、肉体へと訴えるポストハードコアな作品になった。マスロック色のあるピロピロとしたギターフレーズと小刻みな変拍子と不協和音というスタイルは前作から変わってはいないが、それをより明確に鍛え上げた作品に仕上がっている。
はっきりと言ってしまえば今作は激情系の枠からは大きくはみ出して完全にポストハードコア色の強い物になっているし、Drive Like JehuやFUGAZi辺りのバンドが好きな人に有効なサウンドになっている。だが持ち前のテクニカルなサウンドは健在であるし、キメの乱打は相変わらずといった所。不協和音中心でリフを構成していながらもよりキャッチーかつハイテンションになったのが今作だ。第1曲「Exits and Trails」からギア全開のポストハードコアサウンドが咲き乱れ、ギターフレーズも思いっきり高速回転をキメていたりする。しかしその中で哀愁のエモーショナルを感じさせる辺りは流石といった所。第2曲「Turncoat Revolution」に至っては完全にマスロックの域に到達しているパートから正統派のポストハードコアへと雪崩れ込むし、さり気無いコーラスワークの歌心もしっかり感じさせながらも基本はハイテンションかつハイボルテージのサウンドだ。キメと緩急を上手に取り入れながらもハードコアの直接性をより大事にしているし、既存の激情を全力で捨て去ったからこそ生まれた音だ。メロディアスなフレーズを鳴らしながらもジェットコースターの様な疾走感と絶妙のキメが耳に残るポストハードコアな1曲である第7曲「Kill The Name」、今作で最も激情のカラーが強い性急な楽曲でありながらもポリリズムのキメが咲き乱れまくりでドラマティックなメロウさも感じさせる第12曲「Blame Truth」とHOT CROSS印のサウンドが貫かれている全13曲はよりエモの接近しながらも1stでも見せ付けていたビロビロの不協和音のギターフレーズの絡みと変拍子が生み出すドライブ感を鍛え上げた物だ。激情の枠を超えたサウンドへと彼等は見事に到達してしまったのだ。
HOT CROSSは今作を最後のその歩みを止めてしまったが、メンバーは現在もそれぞれのバンドで活動しているし、HOT CROSSが残した功績は大きいのだ。彼等は激情だけでなく、カオティック・エモ・ポストハードコアの視点から見ても屈指のバンドであったし、そのハードコアとしての底力はとんでもない物であった。ジェットコースターの様な高速のビートと、乱打されるギターフレーズの圧倒的なポテンシャルには圧倒されるし、彼等の存在を無視してUS激情は語れないと思う。1st同様の今作も屈指の傑作だ。