■A Waltz with the Seventh Crane/Sleepstream

現在、色々と話題になっているギリシャのポストロックバンドの2011年発表の1stアルバム。リリースはポストロックやアンビエントやモダンクラシカルの音源をリリースしているFluttery Recordsから。今作は静謐さの中からドラマテイックに進行していく王道のリリカルさを前面に押し出したポストロックではあるが、バイオリンを取り入れクラシカルな厳かな空気を生み出し、時にプログレッシブさも醸し出す。1stにして中々幅広いアプローチを見せているし、面白い作品になっている。
第1曲「You Gave Me Butterflies, I Gave You Loss」の冒頭からクリーンでリリカルな旋律のコードストロークが鳴り響き、情景豊かな旋律で進行していく。Explosions in the Sky辺りの影響を感じさせながらも、それに追いつけ追い越せと奮闘するバンドの姿勢も見えてくるし、楽曲を彩るバイオリンの旋律が自らの音のスケールを膨らませてドラマティックに展開。王道のスタイルではあるのだけれど、その美しい旋律をアレンジのセンスには光る物を感じた。しかし第3曲「Sunlight」ではポストロックのカラーを持ちながらもゴシック色の強い旋律が登場し、囁くようなボーカルも入る。静謐かつ緻密なアンサンブルの中で感情を刺激する泣きのギターも登場し、ポストロックとゴシックと時にプログレッシブさも見せる展開には驚いたし、バンドとしての器量の大きさも見せ付けている。そして第4曲「A Waltz With The Seventh Crane」ではヘビィさにも接近し、ダークなヘビィさとリリカルさを融合させ、そこから力強い光を放つドラマを生み出している。勿論、バイオリンの音がその豊かな音色に白銀の色を加え、冬の情景とシンクロする音の風景を生み出している。Godspeed You! Black Emperorを彷彿とさせる音ではあるが、よりシンプルかつタイトなアンサンブルからはパワーを感じるし、今作でも特にお気に入りの1曲だ。最終曲である第7曲「The Light」もタイトル通り、光を想起させるダークさからその空気を打ち破る轟音のワルツを彼等は奏でているし、それはまた感動的である。
まだまだ先人達の影響を感じる部分は多いのだけれども、Explosions in the SkyやGodspeed You! Black Emperorといった先人を超えようとする気迫はこの1stから感じさせて貰ったし、個人的にはフランスのTotorRoの様に大化けする予感も感じていたりする。ポストロックでありながらポストメタルやプログレッシブの要素を飲み込み、ドラマティックな光を描く彼等の音は聴き手の胸を確実に打つだろう。これからの活躍と進化に期待したくなる作品だ。今作は下記リンクのbandcampページにて購入可能。
SLEEPSTREAM bandcampページ