■Lapsus/Light Bearer

UKのネオクラストバンドであるFall Of Efrafaのメンバーが在籍する6人組Light Bearerの2011年発表の1st。そして1stにしてこいつらはとんでもない大傑作を生み出してしまったのである。僕が初めてISISやNEUROSISを聴いた時と同じレベルの衝撃を今作からは感じたし、ポストメタルやアトモスフェリック・スラッジといったジャンルの音はこいつらの存在によって完全にネクストレベルへと導かれたと言って間違い無いだろう。The Oceanの事をISISの損失を埋めるバンドと僕は言ったけど、こいつらもISIS解散以降を確実に担うだけの存在だ。
NEUROSISとSigur Rosの融合とまで言われている彼等の音は激重かつ壮絶なスケールで描くスラッジリフの洪水と、鉄琴とやピアノやストリングスを取り入れた甘美な音色と、静謐なパートで幾重にも重なり合う音の幽玄のハーモニー、それらが天をも突き破る力で非現実すら超越した音のストーリーを描き出している。スラッジと北欧ポストロックを単に掛け算しただけでは絶対に生まれない音だし、それらを細胞レベルで緻密に練り上げて作り上げたからこそ生み出せる音は壮絶な激情として聴き手の耳に捻じ込まれる。SE的な役割の第1曲「Beyond The Infinite」からこいつらは格の違いを見せ付けてくれる。ドス黒いスラッジリフと幽玄のストリングスの音色が現実世界を超越し、魂の音色として君臨する。第2曲「Primum Movens」からその本領を更に発揮。14分にも及ぶ楽曲の中でいきなり穢れの知らないギターのアルペジオが至福の音色を奏で、ポストロック勢の猛者達にも負けない豊かな音色からそれを打ち破る激情のシャウトとスラッジの轟音の洪水が生み出すコントラストは芸術レベルなんて言葉じゃとてもじゃないけど片付けられない。激情を描く芸術、正に激術の域に彼等は到達している。激情のスラッジサウンドであるが、その轟音に潜む旋律は序盤と全く変わらない幽玄の音であり、その美しさからタイトなドラムの叩きつけるキメと共に至福の音色から漆黒のへビィネスへと変貌する瞬間のカタルシスから終盤で鉄琴とストリングスが再び激重の音を天へと導き、耽美なピアノのアウトロで終わる。この曲を聴いただけでこいつらの凄さを否応なしに痛感させられたし、とんでもないレベルの感動と衝撃を覚えた。こいつらは決して漆黒の闇にも純白の至福さにも染まらない音を奏でており、穢れなき美しさで心を揺さぶる旋律と、それを更に際立たせるストリングスやピアノの存在といった北欧ポストロックにも通じる神秘的な音と、ハードコアとスラッジの粗暴さを突き詰めた末のへビィネスが轟音のリフと共にドス黒い激情として叫び掻き鳴らす肉体性と精神性、これらがぶつかり合った末に生まれた美も醜も祈りも憎しみも飲み込んだポストメタルだ。第3曲「Armoury Choir」もリリカルかつ不穏の旋律から大地を揺さぶるへビィネスで進行し、15分にも及ぶ長さの中で組曲の様に展開していく楽曲のストーリー性、その未曾有のサウンドが全てを浄化すらしている。自らの漆黒の激情を前面に押し出した第5曲「Prelapsus」でもバンドとしてのハードコアさを感じるし、それでいてその漆黒の音すら最終的には煉獄からの開放へと帰結していくのだから本当に感服するしか僕には出来ない。終盤でクリーントーンのボーカルすら開放し、それが魂の解放へと僕達を導いていく。スラッジサウンドも激術の轟音へと変貌し、クリーントーンと低域シャウトのコントラストがまた美しい。そして最終曲である第6曲「Lapsus」は17分半にも及ぶ今作の中でも一番の大作だ。激情もスラッジもポストメタルもハードコアもポストロックも全て飲み込んだ先の闇と光の音から激情と激重が純度500%で融和するカタルシスへと雪崩れ込み、その先にあるのはストリングスとピアノの天上の調べ。長い旅路の先にある救いの様でもあり、壮絶な物語のエンディングとしてこの上ない物。その余韻に引き込まれた瞬間に、今作の凄みを改めて体感する。
激情も、激重も、芸術性も、美しさも、スケールも、全てが他を置き去りにしてしまうだけの壮絶な音楽が生み出したストーリー。あらゆる要素を緻密に練り上げた末に生み出された至高のポストメタル。1stにしてこんな大傑作を生み出してしまった事も単純に驚くしか無いのだけれども、闇も光も暴き、それをとんでもない画素数で描く超大作の絵画の様な作品でもあるし、人間の心にある感情を全て放出した先の魂の叫びにも胸が打たれっぱなしになった。へビィネスと柔らかな音色の先にある新世界へと誘われるのは必至だ。文句無しで2011年の最重要作品。ポストメタルは新たな次元に間違い無く到達した!!