■自我と煩悩/屍

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 日本が誇る陰惨さを極めたハードコアバンドである屍の00年発表のEP。HIS HERO HAS GONR等に通じるファストなハードコアサウンドを鳴らしているがダークな旋律とデスボイスをフル発揮し、単純にハードコアとしての肉体性を持ちながらも、その旋律と言葉はどこまでも内側に向かっている、自らに対する憎悪を暴発させるハードコアとして唯一無二であり、ハードコア愛好家以外にも彼等の音に惹かれる人は多い。



 第1曲なんていきなり「憎悪」という直球なタイトルを冠してしまっているけれど、タイトル通り憎悪を激情として吐き出すハードコアの毒素に満ちているし、メロディアスでありながら硬質のリフの応酬と巧みにブレイクを盛り込んだ楽曲構成なんかはハードコアバンドとして優秀であるし、音は正統派なハードコアサウンド。音の厚みも絶妙であるし、何よりもメロディアスさに特化したハードコアは胸を熱くしてくれる。しかしそれらは全てボーカルの板倉氏の救いようの無い絶望を際立たせる為の物であるし、それらの要素があるからこそ屍は境界性人格障害ハードコアなんて呼ばれたりもするのだ。第2曲「繰り返し…そしてまたその繰り返し…」は泣きの旋律から始まり、メタリックなリフが無慈悲に刻まれる作品であるが、フラットなテンションで少しずつメロウさを増していく楽曲に比例する様に板倉氏のボーカルと言葉の救いようの無さは加速しているし、終盤での激情パートでそれが爆発する構成なんかはハードコアバンドとしての構成の美学も感じさせながらも、ダークサイドに全てが振り切れている。今作で最も激情の色が強い第3曲「自我と煩悩」なんか屍の真骨頂とも言える鬱病ハードコアだし、人間の内面に潜む精神の猛毒に埋め尽くされ、胸を打つメロウな旋律と負の感情が外側にも内側にも放出されていく様は救いが無いかたこその美しさがあるし、それに飲み込まれそうになるし、飲み込まれたままでも良いとすら思ってしまうサウンドと世界観は彼等にしか生み出せない物である。今作に収録されている楽曲はサウンドのスタイルも一貫しているが、それ以上に世界観も徹底しているし、何処を切っても救いは無いし、ネガティブ極まりない脳内世界に引き擦り込まれるだけだ。



 ダークサイドのハードコアとして屍はやはり絶対的な存在であるし、ハードコアの肉体性と板倉氏の精神世界が見事に結びついたからこその音は高い純度で結びついている。ネガティブさを極めたからこその激情の音は屍の最大の魅力であるし、それは本当に多くの人に評価されるだけの物であるし、屍が屍である証明でもあるのだ。
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メジャーの物からマニアックな物まで良い音楽を幅広く紹介してこうと思ってますが、ハードコアとかが多目だったりします。他にもコラム書いたりもしています。

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