■ “Hope” Japan tour 2011(2011年12月30日)@代官山UNIT

2011年は3枚のアルバムをリリースし、過去最大級のUSツアーと、例年に無い本数の日本での公演と本当精力的に活動してきた日本が世界に誇るへビィロックバンドであるBorisだが、バンドにとって本当に大きな1年になった2011年の締めくくりとも言えるライブは9dwをゲストに迎えて行われた。全くカラーの違う3枚のアルバムをリリースし、今まで以上に多くの人を混乱と興奮に導いたBorisだが、今回のライブでは過去も現在も未来もひっくるめて総括したかの様なアクトを見せ付けたと言えるだろう。世界トップレベルの爆音が確かに存在したのだ。
・9dw
先ずはほぼ時間通りにゲストである9dwのアクトがサブステージにてスタート。9dwは二年半前に見て以来だったが、バンド編成からラップトップとギターの編成に変わっており、よりフロア志向のユニットになってたと言える。僕個人としてはnine days wonder時代の激情系ハードコアが個人的に大好き過ぎて9dwに名義が変わってからのサウンドに少し戸惑いを覚えていた人間であるのだけれど、今回のアクトではフュージョン要素を存分に取り入れながらもよりフロア・クラブ志向になったダンサブルな音に完全にやられてしまった。聴き手のツボを的確に押し、否応なしに肉体が反応してしまうテクノのビートと、切れ味鋭いフュージョン要素を取り入れた反復の美学に基づくギターが織り成すサウンドは本当に快楽へと導かれるし、9dw独自のダンスミュージックは確かに完成されていたと言えるだろう。繰り返すビートと旋律はハイファイかつ有機的でもあるし、決して音数は多くないが、その音色は柔らかであり雄弁でもある。そしてビートの美学が結びついた事によるダンスミュージックに多くの人が心酔してに違いない。ラストはBorisの「Black Original」のリミックスを披露し、完全にフロアの体温を高めて終了。UNITを完全にダンスホールにし、Borisへと繋げてくれた。40分程の独自のダンスミュージックの快楽に自然と体を揺らしていた。
・Boris
9dwのアクトが終了してから20分程してメインステージにて本日の主役であるBorisのアクト。ステージ上に存在するアンプの壁は何度見ても圧巻だが、それ以上に超爆音のへビィロックの破壊力は凄まじかった。メンバーの3人と最早お馴染みのサポートギターである栗原ミチオ氏が登場し、まずはBorisの2011年を代表するへビィロックアンセム「Riot Sugar」から。大量のスモークと爆音で奏でられる重厚なへビィなリフがフロアを完全にBorisのへビィロックの世界へと変貌させる。ストーナーなサイケデリックさとヘビィネスが織り成すサウンドはやはりBorisの持つへビィロックの力を感じさせてくれる。続いてBorisの必殺のへビィロックナンバーである「Korosu」!!!!!!!!!!!!まさかこの曲をプレイするとは思ってもいなかったし、一気に体中の体温は急上昇!ストレートでありキャッチ^でありながらもBorisのへビィロックの代名詞とも言えるこの曲でフロアの人々の体温は本当に上がったし畳み掛ける様に繰り出された「Statement」と序盤からへビィロックサイドのBorisの爆音の暴力がとんでもない音圧で繰り出され、のっけから昇天。
そんな空気を壊す「Attention Please」にてwataの浮遊するボーカルとくぐもったサイケデリックさで揺らめきと神秘性の強い音でBorisがただのへビィロックバンドでは無い事を改めて痛感。へビィさもくわえながらもポップなダンスチューン「Party Boy」で完全に空気をポップサイドのBorisに変えてから繰り出されたのは今年のBorisを象徴する名曲「フレア」!!このBoris史上最もポップな楽曲はBorisが本来持ってるキャッチーさを極めた楽曲であるが、ライブでの爆音アレンジによる演奏は曲の持つポップさを生かしながらも、エクストリームポップとして鳴らされる爆音の力が加速し本来の「フレア」がライブで発揮されていた。しかし「フレア」で大盛り上がりすると思ったけどそうでも無かったのは意外だった。
「Spoon」でポップサイドのBorisを見せつけ終わってからは爆音のサイケデリックゾーンへ突入!「Missing Pieces」では本当に大量のスモークがステージを覆い、栗原ミチオを加えた音になった事により楽曲の本来の大音量の美しいサイケデリックの世界へ。音源よりも圧倒的に脳を揺らす超音圧のフィードバックノイズの濁流が脳髄を溶かし、本気で時間感覚を麻痺させる永遠の様な音塊にただ包まれるしか無くなってしまった。そのへビィさをコンパクトに切り替えた「Window Shopping」、Takeshiとwataのツインボーカルが妖しさと色気を見せる「トーキョーワンダーランド」を通過した先は再びBorisのへビィロック天国へ突入!「1970」の煙たいリフの応酬から必殺の激ストーナー「PINK」と畳み掛け、体が震える程の大音量のへビィロックが再び肉体の中の血液の温度を上げる上げる!その流れをまた破壊し、「Aileron」では今回のライブでも一番の轟音世界へ。照明とスモークの視覚的効果も加わり、無へと還されてしまうかの様な破壊と創造の世界がそこから見えてしまった。そして本編ラストの「Looprider」でスモークと轟音が晴れた先のクリアな世界へと導いていくという本当にニクい終わり方をしたのも印象的であった。
アンコールでは新代田FEVERでのワンマンでは削られてしまったらしい「Rainbow」!!「Korosu」以上にこの曲をやるとは思わなかったし、それだけこの日のライブはBorisにとって大きな意味があった事が伺える。wataの絶対零度の消え入りそうな声と共に淡々とした空気はアンコールらしく無いなとは思いながらもBorisらしいと言えばらしかったりもするから困る。そして最後の最後に演奏したのは「決別」。全ての感覚を呼び起こし、澄み渡るクリアさと神々しさを最後の最後で体感し、その震える空気やスモークの先にある4人の姿すら神秘的であったのだ。
セットリスト
1.Riot Sugar
2.Korosu
3.Statement
4.Attention Please
5.Party Boy
6.フレア
7.Spoon
8.Missing Pieces
9.Window Shopping
10.トーキョーワンダーランド
11.1970
12.PINK
13.Aileronm
14.Looprider
en1.Rainbow
en2.決別
今年の2月にI'LL BE YOUR にてBorisのアクトを見た時はバンドも不調だったのか正直言うとかなり消化不良のライブになってしまったのだけれども、それを余裕で吹き飛ばすアクトだったし、精力的に活動した2011年を締めくくるに相応しいライブだったと言えるだろう。AtsuoがMCを雄弁にしたのも印象的だったし、アンコールを含むと約2時間にも及ぶ壮大なアクトは日本が世界に誇るべきバンドの貫禄と、Borisだからこそ放つ事の出来るへビィロックの可能性を見た。ストーナーもポップのサイケデリックも全て飲み込み、誰も追いつけない最果てのへビィロックを鳴らし、それをライブにて完全に見せ付けてくれたのだ。しかし一つだけ不満があるとすれば、集客が正直言ってあまり良くなかった事だ。年末という時期を考えれば仕方ないのかもしれないけど、キャパ650人のハコで人があまり多くないのを目にしてしまうと少し憤りも感じる。もしBorisのライブをまだ見た事が無いのであれば、本当に死ぬ前に一回は見て欲しい。世界トップレベルの実力と人気がBorisにはあるし、日本が誇るべきバンドであるのに、多くの人々がBorisの存在を知らない世界と日本での歪みはいち早く修復されて欲しい限りだ。だってそれだけの力をBorisは持っているし、それを今回のアクトで改めて実感したから。本当に凄いバンドが日本にはいる。大音量で放たれる音とスモークの向こう側の世界をもっと多くの人に目にして欲しい限りだ。