■命令不従/ゆーこときカズ

広島県福山にて結成された5人組メタルコアバンドであるゆーこときカズの1stアルバム。物凄い数のライブをこなしている彼等の破壊的なメタルコアサウンドがパッケージされた作品となった。へビィネスとヴァイオレンスさが極限レベルで暴走するサウンドの中にある歌心も見事であり、純度の高い超重金属サウンドの応酬とエモーショナルさの融和によるメタルコアだ。
と言っても彼等は安易にエモ化したバンドなんかでは無い。今作は徹底してブルータルであり超高速メタルコアリフとビートの応酬が機軸になっているし、そのブルータルさの中でこそ感じさせる歌心であり、そのサウンドはどこまでも硬派。第1曲「Blaze Of The Sun」が先ず彼等の名刺代わりにしては強烈過ぎる1曲で、ツインギターが繰り出す高速メタリックリフと絶妙なオカズを交えながら暴走するドラムのビートはメタルコアやメタルのマナーに忠実な王道のサウンドであるけれど、王道でありながらも純粋なパワーとヴァイオレンスさ、その凶悪なサウンドに乗る金築利和のボーカルが凄まじい。金築氏のボーカルはただでさえ荒涼としたサウンドを更に加速させるデスボイスを操り、その中で歌心を感じさせてくれるのだ。負の感情を全身全霊で放出するかの様なボーカルでありながら、時折使うクリーンボイスはゆーことのブルータルでありながらも、楽曲の根底の旋律にあるエモーショナルな哀愁をしっかりと引き出しているし、だからゆーことは全く隙の無い極悪メタルコアサウンドでありながら、ある種のメロウさを見せてくれる。第3曲「630」の疾走するリフとビートの重圧の中でのエモーショナル加減と瞬殺のメタルコアサウンドの暴走具合もそうだし、どの楽曲も妥協の全く無い演奏技術と極悪なメタルコアサウンドでありながら、どこかに取っ付き易いキャッチーさを盛り込んでくるニクさが彼等のサウンドには存在しているし、その中でよりキャッチーな第9曲「Respect Yourself」はブレイクの絶妙な入れ方や金築氏のボーカルから感じられるカリスマ性とゆーことの鉄槌のメタルコアが三位一体となって1mmの隙も無く迫ってくる必殺の1曲。
王道のメタルコアでありながら、サウンドに妥協は全く無く、ストイックに自らの音を鍛え上げたからこそ生まれた狂気が加速するメタルコアには圧倒される事は間違いない筈だ。広島という一地方のシーンから生まれたメタルコアのカリスマは純粋な格好良さに満ちている。ゆーこときカズの金築氏とギターの原田氏と横山氏は現在は桜王というバンドを結成しこちらも広島県福山を拠点に精力的に活動している。