■Against Again/Swarrrm

神戸が生んだ生ける伝説であるSwarrrmの00年発表の1stアルバム。彼等はグラインドコアバンドであるが、同時にグラインドを枠では語る事が不可能なバンドでもある。その暴走するビートは正にグラインドのそれだが、同時に激情・カオティックハードコアの域にまで達した超エクストリームサウンドが炸裂し、悲壮感に満ちた痛々しいサウンドと旋律は聞き流す事など不可能。正座してスピーカーと向き合って対峙しなければいけない感覚にまでなる作品だ。
その暴走するビートは確かにグラインドコアだし、曲も決して長くは無い。しかし再生した途端にエクストリームさを極めた不協和音塗れなのにやたらメロディアスかつカオティックなギターワークが炸裂し、デスと高音シャウトを巧みに使い分けるボーカルは一歩間違えれば崩壊寸前の緊張感を作り出し、涎を撒き散らしながらのた打ち回っているかの様だ。泣き叫ぶかの様な旋律を放出するギターも相乗効果を作り出し、どこまでも痛みと悲壮感で奈落へと落ちていく様な高速落下カオティックグラインドコアとなっている。どの楽曲も1mmも情けなんか無いし、とんでもない音圧で目まぐるしく展開される悲しみのハードコアは嫌でも耳にこびり付いてくるし、痛烈ではあるが、だからこそ人間の闇と自らの心を打つ感動的であり泣けるグラインドコアになっている。序盤の4曲は特にその破壊力に満ちているし、時折グラインド色の色濃いパートを挟みながらも基本は泣き叫びまくるサウンドだし、卓越した演奏技術を誇りながらも崩壊寸前の混沌と言えるアンサンブルは本当にエクストリーム。不協和音塗れの音色から悲しみへと連なるダウナーな第9曲「Pain」の様な楽曲を挟みながらも、どの楽曲の軸は全くブレずにカオティックグラインドだし、その圧力こそ彼等の魅力だ。しかしそんな楽曲を差し置いて今作屈指の大名曲に仕上がったのはタイトル曲でもある最終曲「Against Again」だ。今作で最もギターは赤眼で泣き叫び、リズム隊も決してグラインドさを前面に出してはいないけどカオティックなビートとグルーブを作り上げ、複雑な楽曲構成も悲壮感を重ね合わせてドラマティックにしてしまっている。そしてボーカルも今作屈指の狂気の沙汰を見せ付ける。正にSwarrrmの代名詞とも言える名曲だ!
グラインドコアを基調にしながら、その枠を破壊しカオティックな激情の殺気と憎しみをSwarrrmは今作で見せ付けている。赤黒い血飛沫と血の涙を彼等のサウンドから感じるし、だからこそ僕は今作を聴いてると涙腺が崩壊してしまいそうにまでなる。人間の奥底の負の感情を肯定し許される感覚すら今作の旋律から僕は感じるし、だからこそSwarrrmはただのグラインドコアじゃなく、本質的な意味で激情を鳴らしているのだ。