■Deep Space/Model 500
![]() | DEEP SPACE : MODEL 500 (RS95066RM) (2008/06/03) MODEL 500 商品詳細を見る |
デトロイトテクノ界のパイオニアであるJuan AtkinsのソロユニットであるModel 500の95年リリースの作品。レコーディングはドイツのベルリンで行われている。タイトルとジャケットそのままの正にスペーシーかつディープなデトロイトテクノであり、単にテクノの範疇では収まらない雑多な要素を統率し、聴き手の五感をフル稼働させ、静かに広がる星の輝きを連想させる至高の作品に仕上がっている。
今作の音はまずミニマルな手法に基づいて構成されており、それでいてハウスやテクノの要素をしっかりと盛り込んでいる。シンセの若干揺らいだ音色を反復させ、無駄な音を完全に削ぎ落とした物ではあるが、その少ない音の音色を軽やかかつ静かに広げていく手法だ。第1曲「Milky Way」からタイトル通りの甘いメロウな旋律の反復が神経を通過し、柔らかに世界を広げ浸透し、そこから深遠なる宇宙への旅路は始まる。また今作の音はファンキーかつコズミックでもあるし、ミナマルさを前面に押し出しながらもそのビートはどこか重いグルーブを感じさせる第2曲「Orbit」はそれを強く感じさせてくれる。女性ボーカルをフューチャーした第3曲「The Flow」では艶やかな音色で脳を溶かし、持ち前のミニマルさを前面に出し、同時に揺らぎが宙を彷徨うような感覚に陥らせる第4曲「Warning」と本当に楽曲毎に確かなカラーを持っているし、持ち前の雑多さをそれぞれの楽曲で十分に生かしている。それらの音は深遠なる宇宙へと繋がっているという点で統率され、幻惑の世界へと引きずり込まれる。より深みへと入り込んだミニマルテクノである第6曲「Starlight」、メロウな旋律が精神の高揚を否応なしに引き起こす第8曲「I Wanna Be There」、今作で最も深みを重みを持ったグルーブに満ちた最終曲「Lightspeed」と全編通しての楽曲の完成度は本当に高く宇宙の果ての果てへと軽やかにワープし、飲み込まれる精神世界のディープゾーンを旅するかの様な擬似体験を今作を聴く事で味わう事が出来るのは保障する。
デトロイトテクノというジャンルに関してはあまり馴染みが無かったのだが、今作の深遠なる音の世界はデトロイトテクノに明るくない僕も引き込まれたし、今作を再生する事によって聴き手の世界は間違いなく宇宙へと変貌する。スペーシーとかそうゆう類の言葉で語られる音楽はジャンル問わず多いのだけれど、今作は正に宇宙へのパスポートであるし、煌きの中で漂う感覚を味わう事の出来る傑作だ。