■DEAR FUTURE/COALTAR OF THE DEEPERS
DEAR FUTURE (2011/08/31) coaltar of the deepers、Ringo Deathstarr 他 商品詳細を見る |
現在では様々な方面での音楽活動で知名度を上げているNARASAKIという男だが、彼のメインの活動であるCOTDの2011年に発表したシングルは2011年を代表するアニメとなった「輪るピングドラム」のエンディングであると同時にそれをURBAN DANCEの成田忍や2011年を代表するバンドとなったRingo DeathstarrやSECRET SHINEの手によるカバー、更にはagraphのリミックス、声優の堀江由衣がボーカルを担当する渋谷慶一郎とWATCHMANのリミックスまで収録した全7曲の豪華面子による豪華な内容のシングルになっている。
まずCOTD自身の原曲であるが、今まで様々な路線で多彩な作品を多く発表したCOTDが自らの代名詞と言えるシューゲイザーサウンドに回帰した楽曲となっている。甘い旋律が幻惑の中で揺らぎながらも、メリハリのついた音は確かな輪郭を感じさせながらも、決してそれは掴ませないし、COTD特有のシューゲイザー×スラッシュメタルでは無く、純度の高い蜜の様なシューゲイザーであり、自らの原点に回帰すると同時により純度を高めた楽曲をここで放ってきた。決して派手では無いが、COTDの核はアニメからCOTDを知った人にも十分に伝わる良曲となっている。シンプルでありながらもCOTDの持つポップネスを全開にした音は多くの人々を虜にしたに違いない。そして原曲以外のカバーやミックスも負けじと高い完成度になっているのも見逃せない。元の楽曲の核をしっかりと守りながらもそれぞれが好き勝手に自らの音に更新しているのだ。コズミックかつテクノポップの要素を持ち込んだ成田忍、原曲以上にシューゲイザーしまくり轟音が楽曲の旋律と見事なシンクロを見せるRingo Deathstarr、情緒豊かでありながらもタイトなビートを重視し、その中でよりミニマルかつコズミックになった渋谷慶一郎、こちらもシューゲイザーなアレンジになっているが、無機質さの中に静かに息衝く躍動の息吹が妙に耳に残るSECRET SHINE、完全にミニマルになり、深海に沈む様な歌物エレクトロニカへと変貌させたagraph、今作である意味最もキャッチーかつ幾重の電子音が彼方にある未来へと駆け抜けるWATCHMANと本当に多彩なカバーとミックスが並ぶ。全7曲がDEAR FUTUREという一つの楽曲でありながら、それぞれが料理した楽曲は再びCOTDのDEAR FUTUREへと戻る様な輪廻すら感じる。元の楽曲の出来が良いのも、それぞれが自らの音にしながらも原曲の世界を破壊してはいないからというのが大きな要因だと思うけど、7つのDEAR FUTUREはパラレルワールドでありながらも一つの点から7つの線となっている。
今作はアニメの世界観とも実にリンクした楽曲でもあるが、アニメソングとして以前に未来というテーマを実に見事に体現した作品であるし、本家の原曲もそれを調理したクリエイター達もその未来という幻惑の世界をそれぞれのやり方で表現している。単に同じ楽曲が7つ入ったシングルではなく、それぞれが魅せる未来をテーマにした音の世界は確かな幻想と創造の世界を描いている。今作はタイアップもあってか高いセールスを記録したが、ピングドラムを見てCOTDを知り虜になった人は是非とも他のCOTDの作品にも触れて欲しいし、COTDの新曲として触れた従来のファンはタイアップのアニメの方も見て欲しい(アニメの方とも実に見事にシンクロしている)、たった一つの楽曲が生み出した多元的パラレルワールドがそこにはある。