■Cruel Cross/Suspiria
![]() | CRUEL CROSS (2008/11/26) SUSPIRIA 商品詳細を見る |
ハードコアの先を目指す素晴らしいバンドは多いが、大阪が生んだ異形のハードコアバンドであるSuspiriaは日本のバンドの中でもハードコアでありながらそれをブチ壊すバンドとして本当に突き抜けている。今作は08年にリリースされたミニアルバムでリリースは勿論危険音源発信レーベルであるless than TVから。更に今作からはOUTO、RISE FROM THE DEADでも活動していたハードコア界の猛者であるMOTS氏が加入しギターを弾いている。
先ず彼等をハードコアと言って良いのかと思う。音を聴けば確実にハードコアパンクのそれを感じるのだけれど、彼等はそこに無茶苦茶多くの要素をブチ込みなくっているから、単なるポストハードコアでは片付けられないのだ。プログレ、民族音楽、オペラ等の要素を貪欲に食らい、それをまたハードコアとして鳴らすサウンドも、メンバーにコントラバスがいるというバンド形態も異質極まりないのだから。今作は民族音楽的でありアンビエントな1分未満の小品が収録されており、それを除くと実質3曲入りの音源なのだが、その3曲に詰め込まれた混沌は膨大なエネルギーとして放出される。第2曲「Aphasic Venus」から先ず圧倒的エネルギーが禍々しく雪崩れ込む。ギターフレーズ等はハードコア色を感じさせながらも、時折絶妙な場所に入れてくる自由度の高いフレーズや自在に動き回りながらも直情的なドラム、重みのあるグルーブを生み出しながら、楽曲に怪しさを加えるコントラバス、完全にプログレに入った脳に焼きつくキーボードが時にインプロパートでは不穏に混沌をそれぞれが幾重にも重ね合わせ、その先の暴発するパッションへと雪崩れ込む。クロスオーバーする要素と楽器隊の4人の強烈な演奏は自然と統率されているし、ボーカルの吉田氏の泣き叫ぶかの様なボーカルが乗りハードコアバンドとして激烈な音となるのだ。プログレとハードコアを繰り返す第3曲「Cruel Cross」でも暴走するサウンドを絶妙な匙加減でまとめ上げ近作で最も即効性のある攻撃的な音を展開している。特筆すべきは第5曲「Pathos House」は正にハードコアオペラとも言うべき圧巻のスケールと、古き良きプログレを完全にハードコアに持ち込んで終いにはトライヴァル要素まで付け加えてしまったせいで儀式的で呪術的なサウンドプロダクトとなり壮絶な7分半となってしまったのだ。
ハードコアの形を守りながらもその先を目指した先にあったのはまるで少数民族の儀式の様でもあり太古の神へと呼びかける様な壮絶なサウンドだった。彼等はその異形のハードコアを僅か5曲で壮大なスケールで体言し一度聴いたら忘れられないだけのインパクトを持った音にしている。驚きと発見に満ちた新世界のハードコアとしてとんでもない熱量を持った作品になっている。