■Ukte/While I'm Alive

去年しっかり聴けていれば間違い無く年間BEST入りを果たしていたであろう1枚。今作はフィンランドのポストメタルバンドであるWhile I'm Aliveの2011年発表の5曲入りの作品。音自体は決して極端にヘビィなバンドでは無いが、ポストハードコア、ポストロック、スラッジ等の要素を存分に盛り込み曲の中で目まぐるしく変化していくタイプの音楽性なのだが、それは単に色々な要素を掛け算したのではなく、その要素の持つ長所を見事に生かし自らのサウンドをスケールアップさせる。そしてその独自の方法論をポストメタルとして帰結させているのだ。
彼等の持ち味は何と言っても目まぐるしく変化する展開を繰り出しながらも、それをあざとく感じさせずに一つのストーリーとして帰結させる構成力にあると言える。第1曲「A Solitary Deathbed Conversation」は凄い分かりやすく彼等のサウンドが表に出た1曲であり、冒頭は高速で突っ走るポストハードコアサウンドを展開しテンションを加速させたかと思えば、急にヘビィネス色の強いパートに入り、そこからポストロックパートで焦らしに焦らし、その先にあるのはリリカルかつスラッジなポストメタルの壮大なストーリーへと雪崩れ込む1曲。10分近い尺も手伝っているのもあるが、それぞれの音楽的要素を巧みに導入し、操り、それを一つの組曲として鳴らしているからこそ、プログレッシブな宇宙へと導くポストメタルとして完成している。またそれぞれの楽曲が違うカラーを持っているのも作品全体の魅力を高めている大きな要因になっている、スラッジかつカオティックなポストハードコアを前面に押し出し聴き手の魂を燃え上がらせる第2曲「Neon Jihad」ではバンドの馬力の強さをアピールしているし、第3曲「Celebrated Fall」ではよりスラッジコアに接近した漆黒のサウンドを展開する武器の多さとそれの使いどころを完全に把握した上での緻密さ。「Celebrated Fall」でもスラッジパートと不穏で重苦しいポストロックパートの落差を完全に生かし、最終的には全方位に広がる音の波動を体感させるスケール感に満ちたサウンドを展開する幅の広さ。それを無理矢理な形で詰め込むのでは無くて、本当にごく自然な物として楽曲の中で息づいているのだ。アンビエントな小品である第4曲「Mantra」で聴き手に安らぎを与えながら、トラッドなボーカルで作品全体の不穏さも保つ楽曲を盛り込んだりする創意工夫も買いたい所。そして第5曲「Sparkwood and 21」で13分近い壮大な楽曲で止めを刺す。スラッジとカオティックが正面衝突したプログレッシブメタルの事故現場を見せつけまくった末に待ち構えるのは、同じギターフレーズが反復しエネルギーを高めた先の無限に広がる音色が生み出す荒涼とした宇宙の風景だ。そしてそれを完全に崩壊させて無として終わる。
今回初めて彼等の音に触れたが、プログレッシブな要素をここまで生かしたポストメタルを展開し、それでいて冗長さを感じさせないポストハードコアのパワーとポストメタルの叡智を完全に生かしたサウンドには打ち抜かれた。ヘビィさも構成力もスケールも美しさも完全に生かしたアンサンブルが生み出すのは途方も無い宇宙だ。また今作は下記リンクのbandcampにて視聴&フリーダウンロード可能になっている。
While I'm Alive bandcamp