■浄化水槽 Vol.2(2012年2月5日)@代々木STEPWAY Studio

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 wombscapeとStarlingraidの共同企画として開催された今回のイベントだが、主催の両バンドは何処にも属さないオリジナルなハードコアを慣らすバンドであるし、その2バンドと共鳴する猛者が集結したまさに地下シーンの悪夢の宴とも言うべきスタジオライブ、Starlingraidは実に2回目のライブであるし、ロシア人ボーカリストのローマは今回のライブの為にわざわざロシアから来日するという気合の入れ具合、Starlingraidの音に完全に惚れ込んでいる僕としては絶対に見逃しては行けない企画という事で今回足を運んだ訳だが、出演した全5バンドがそれぞれのベクトルで圧巻のアクトを見せ付けてくれる本当に濃密なライブになったと同時に、日本の地下シーンに渦巻く無限の可能性を肌で体感出来た素晴らしい企画だった。



・Insecure

 1バンド目はドゥーム・スラッジトリオのInsecure。完全に初見の状態でライブを見たが1バンド目から圧巻のライブだった。30分のアクトで演奏したのは2曲というセットリストも凄いが、極限まで削ぎ落とした音数で繰り出されるへビィさを極めたリフは一発で重圧殺確実な破壊力をもっていたし、音と音の隙間を生める歪みまくったハウリングノイズがもたらすサイケデリックな感覚に頭は完全にやられてしまう。特に2曲目に至っては約20分近くの超長尺の楽曲だったし、終わり無く繰り出されるドゥームリフの反復が生み出すへビィさとサイケデリックさを極めた音塊に僕はただ呆然とその音に飲み込まれるしか無かったのだ。歪みまくった爆音サウンドを極限まで削ぎ落としに落としたサウンドスタイルは音数を極端に減らした物ではあるが、その一発の音の破滅的カタルシスは相当だったし、1バンド目から凄い物を見せ付けられた。ドゥーム・スラッジを極限まで追求した異形の爆音ドゥーム地獄が1バンド目から繰り広げられていたし、その音は確実に見る者を彼岸へと連れて行った筈。メンバーさんが音源を持ってくるのを忘れてしまった為、音源を入手出来なかったのだけが心残りだったが、またサイケデリックドゥームの世界を是非体感したい。



・wakamiya

 2バンド目はこちらも初見のwakamiya。3ピース編成でストレートな激情を鳴らすバンドだが、日本人らしい侘寂を完全に物にしたドラマティックな楽曲構成と、美しい旋律を本当に何のギミックも無しに鳴らしていたし、ツインボーカルで繰り出されるポエトリーと絶唱は胸を熱くしてくれる物だ。しかし彼等はただ単純にストレートで美しい激情形ハードコアを鳴らすだけのバンドでは無い。時にはマスロック的なテクニカルなタッピングのフレーズも入れてくるし、ストレートな激情パートと、リリカルなクリーンのパートを絶妙な配分で取り入れている。しかしそれらのアプローチにあざとさは全く感じられないし、それらは自らの激情を表現する為の手法として確かに機能しているのだ。たった4曲のアクトだったが、あの場にいた多くの人を虜にするには十分過ぎる位の魂のアクトだったと思うし、ラストの轟音と共に繰り出される美メロと絶唱のカタルシスに昇天。美しい旋律と魂の叫びとドラマティックさを極めた楽曲構成というシンプルな魅力を持つバンドだが、それを魂の限り真摯に打ち鳴らすアクトに涙腺が緩くなってしまった。




・Alan Smithee's MAD Universe

 3バンド目はエクスペリメンタルプログレバンドであるAlan Smithee's MAD Universe。何度かライブを見た事もあるし、その卓越した演奏技術が繰り出す超次元の音は知っていたが、久々にライブを見たと言う事もあって、改めてその音の恐ろしさを体感する結果となった。坂口氏のプログレに基づいた音階と音色のフレーズが楽曲を構成しているが、それをよりカオティックにし、超絶技巧が繰り出す音符の嵐にまず頭がやられそうになるし、久恒氏のフュージョンやブルースを独自に解釈した上での多くのエフェクターを駆使したエクスペリメンタルな音塊と原田氏の時折鳴らされるリズムマシーンと絶妙に調和しながらも、アグレッシブかつ緻密に繰り出されるビートが楽曲に躍動感を与え、たった3人で鳴らされる音なのに圧倒的な情報量と、それを生々しさ満載で時にぶつかり合い、時に調和しながら繰り広げられるライブは絶妙な緊張感を持ったエクスペリメンタルカオティックプログレとしか言えない独自の音楽だし、それを高い次元で再現する圧倒的演奏技術のライブはやはり別格の物があった。やはり彼等はプログレッシブの先を鳴らす異次元の音を鳴らしている。



・wombscape

 トリ前は今回の企画の主催バンドの一つであるwombscape。こちらも完全に初見だったが、一言で言うと何じゃこりゃあ!!ってバンドだった。はっきり言ってしまうとジャンルとかそう言った物で形容するのが本当に難しいバンドだし、カオティックを更に分解し、へビィで静謐で予測不能の展開を繰り出し、完全に負の方向へと突き抜けたハードコアを展開していたのだ。ネガティブな感情に頭がやられてしまったかの様なボーカルと崩壊寸前のギリギリのラインを綱渡りするかの様なアンサンブル。嗚咽と嘔吐物に塗れているかの様なボーカルと同時にへビィであると同時にテクニカルなカオティックサウンドは惨劇の音でありながらもその音をダイレクトに体感すると自然とその高次元の悲しみの感情を殺意と狂気に変換したハードコアに感動すら覚え、生々しいダークサイドに飲み込まれた末に、その奥にある純度の高い音色の優しさすら見えてくるし、どこか物悲しく荒涼とした感覚に襲われ気が付いたら胸に焼きつく感情が頭から離れなくなってしまう。暴発するカオティックパートも、静謐なパートも全てが統率された負の感情というベクトル、カオティックの先を鳴らすカオティックを圧倒的スケールで見せつけ、見る者にある種のトラウマの様な爪痕を残してくれた。しかしながらこの様なバンドでモッシュが起きていたのにはびっくりしたなあ。

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・Starlingraid

 トリはもう一つの主催バンドであるStarlingraid。実に2回目のライブであり、音源で見せ付けてくれた激情もドゥームもカオティックもアンビエントも飲み込んだ最果てのハードコアをどの様に再現するか非常に楽しみであったが、音源以上に爆音にスケールアップされた音は異形さも更に加速しながらも非常に感動的なライブになったと言える。ボーカルと2本のギターとフレットレスベースとドラムという編成で、弦楽器隊は多くのエフェクターを巧みに操りながら、静謐なパートでは時折美しい旋律を入れながらも、不協和音で脳髄を焼き尽くしているし、暴発パートでは単に轟音に頼るのでは無く、ダークさを極めたフレーズを最大限に生かした血の匂いのする音を繰り出し、フレットレスベースが煉獄の蠢きの如しベースラインを弾き、不規則に乱打されるドラムは確かにStarlingraidにしか存在しないグニャグニャに捻れまくったあのビートを完全再現していた。そしてローマは不意に絶唱に不意に囁くというボーカルスタイルで自らの狂気を体現し、音源以上にストレートに伝わるグノーシスコアを目の前で放出しながら、それをより混沌とさせたアクトを見せてくれた。アクト自体の時間は約30分程であったと思うが、見る者の時間軸を完全に崩壊するその音は本当に濃密としか言えないし、僕自身の体感時間は一時間近くはあった。変則的で音の落差を極めまくったグノーシスコアを本当に超次元のスケールで目の前で再現されている。その事実だけでも本当に感動的だったし、ここまで異形さを極めたハードコアがこの世に存在しているという事実が確かに目の前にあった。

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 日本の地下シーンには本当に面白くて衝撃的な音が渦巻いている。その事実を肌で痛感出来る本当に良い企画だったし、スタジオライブとは言えど、本当に多くの人が集結したという事実だけでも今回のイベントには大きな意味があると思う。しかしこの様なイベントが単に音楽マニアが集結する地下集会で終わってしまってはいけないと思うし、日本に存在する今回の企画に参加した様な個性溢れる異形な音を鳴らすバンドが共鳴し、もっと多くの人の目と耳にその音楽が広まって欲しいと心の底から願う限りだ。今回初対面にも関わらずStarlingraidのローマと柳氏とは色々とお話させた頂いたが(ローマがロシア人にも関わらず超日本語ペラペラでびっくりしたりした)音楽を愛するフリークスがもっと増え、この様などこにも属さない音がぶつかり合って新たなシーンを作り上げて欲しいと僕は思う。Starlingraidの次回のライブは未定だが、ローマが僕に言った「また絶対どこかで会うよ。」の言葉を僕は信じたい。
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