■Three Years In The Desert/ZANN

FUNERAL DINERやTrainwreckともスプリットを出しているドイツのメタリック激情系ハードコアバンドであるZANNの06年発表の6曲入りの1st。破滅的ヴァイオレンスさ、混沌へと暴走するパワー、壮大なスケールと激情系ハードコアとして重要な要素を確かな血肉にし、それをメタリックなサウンドで放出する彼等のへビィネスを追及した先の激情がパッケージされた作品に仕上がっている。
先ず作品全体が中々壮大なスケール感に満ちており、確かな世界観に裏付けされたサウンドを放出しているといえる、しかし自らの暗黒ハードコアをビルドアップしたからこそ生まれる世界観とスケールであり、サウンドの方は全く妥協を感じさせない。メタリックと言うよりスラッジの域にまで到達しているギターリフと不協和音を奏でるギターの対比も見事で自らの暗黒世界を高い次元で再現するのに一役買っている。またスラッジなパートと暴走するヴァイオレンスハードコアパートを巧みに織り交ぜる事によってカオティックさも増幅させ、暴虐のダークサイドとしての激情を鳴らしている。しかも彼等は壮大でありながらも楽曲の尺は長尺にはなっておらず、4分台や5分台の楽曲で徹底してスラッジさとダークさを極めているからこその世界観が生み出されているのだ。特にスラッジパートを超えてからのヴァイオレンスな激情へと移行する瞬間に開放されるドメスティックさのメーターを振り切りカオティックな衝動の嵐が渦巻く様は聴き手の脳髄に邪悪なる刻印が焼きつくのは間違い無い筈だ。収録されている楽曲の中で大きな音楽的路線の変化は無いが、それでも徹底的に登場するスラッジなリフの破壊力は確かな物があるし、そのスラッジさとカオティックさの落差はその筋の音を愛する人からしたら涎を撒き散らしたくなるぐらいのカタルシスを確実に与えてくれる筈だ。暴虐としての激情を徹底的に追求し、美メロや静謐なパート等は全く登場しない、ただヴァイオレンスさを極めたハードコアとしてZANNはどこまでもその悪夢の様な情景を聴き手に見せ付ける。
数多くの猛者とスプリットを出した経験もあってか、ZANNは漆黒のベクトルを極めようとする激情として大きな力を持ったバンドだと言えるし、ヴァイオレンスさの先の世界へと繋がっている激情の殺意は漆黒の濁流と毒ガスを同時に撒き散らしたサウンドだと言える。作品全体で徹底して鳴らされる奈落と深淵にあるハードコアは破滅的で美しい。