■蝕の刻・嗚咽する空の内側に/wombscape

先日の浄化水槽でも凄まじいアクトを見せてくれた東京にて活動する5人組であるwombscapeの2011年発表の2ndデモ作品。デモ作品と言う事もあってか収録されているのは僅か2曲だが、このバンドの何処にも属さない異形のハードコアサウンドはこのデモ音源にも確かにパッケージされており、凄まじい完成度の2曲から負の感情がバーストする激情が確かに暴発している。
しかしながら彼等は本当にジャンルで識別するのを拒むバンドだと言える。第1曲「蝕の刻」は変拍子の捻れたビートを基調に進行し、ズッシリと重いリフからテクニカルなカオティックフレーズが飛び出し、急に不穏の旋律を奏でる静謐なパートに突入したかと思えばまたカオティックなパートに移行すると本当に予測出来ない展開を見せ付ける。ボーカルも急に狂気に満ちた叫びを見せたかと思えば、囁きのパートに入ったりと負の感情を撒き散らしまくっている。ポストハードコアやカオティックハードコアの流れを感じる事は出来るが彼等の場合のポストとカオティックはジャンルの定義では無くて、本質的な意味として存在しているし、本当に前衛的で混沌としているハードコアなのだ。それに一聴すると不協和音だらけの旋律だが、その奥底にあるドラマティックでダークな感触は聴き手に美しさすら感じさせてしまうのが恐ろしい所。そして第2曲「嗚咽する空の内側に」は9分にも及ぶ壮大な楽曲。ブリッジミュートの単音フレーズが淡々と刻まれる始まりからメロウな空間的アルペジオが入り込み美しい残響を生み出し、クリーントーンのボーカルが乗り、先程とは打って変わった感傷と静かなエモさを少しずつ増幅させていく。終わり無く続くそのフレーズからリズム隊が入り、その感傷をより明確にし、奥行きあるサウンドを展開し、楽曲の次元を一つ上にまで運んでいく。そんな美しい前半だが中盤になるとヘビィなリフが少しずつ無慈悲に鳴らされ始め、2本のギターのアルペジオが美しく絡み合い、そして一気に美と激情が交互に顔を出し始める。そして終盤になるとその深遠さがダークサイドに堕ち、スラッジな残酷さを持ちながら、残酷な残響がただ取り残され終わる1曲。決して暴発パートには突入しないが、wombscapeが持っている残酷な美しさが前面に出ており、収録されている2曲でwombscapeの魅力は十分過ぎる位に伝わる筈だ。
混沌、絶望、美しさ、残酷さ、構成美、深遠さ、スケール、どれを取っても卓越した物を彼等は持っているし、それをハードコアとしてどこまでも真っ直ぐに鳴らしながら、既存の音では収まってはいない。個人的に末期kularaの様な狂気と残酷さとスケールに近い物を感じたりもしたが、それの模倣なんかでは無いし、独自の方法論で深遠なる世界を生み出している。まだデモ音源しか出していないバンドではあるが、これから先の活動と作品発表は是非追いかけて行くつもりだ。