■I'm not fine, thank you. And you?/54-71
![]() | I'm not fine, thank you. And you? (2008/09/19) 54-71 商品詳細を見る |
ヒップホップからポストロックまで様々な音を飲み込み完全にオリジナルな音を作り出している54-71の2008年発表の作品。プロデューサーにshellacのスティーブ・アルビニを迎えた今作は、今までの54以上に即効性と攻撃性に溢れたサウンドに仕上がった。静謐な緊張感だけでなく、ヘビィなフレーズでのダイナミックさも兼ね揃えたサウンドはより分かりやすい形で54の音を知らしめる物になっている。
第1曲「ugly pray」から54の大きな躍進が目に見えてくる。静かに鳴らされる音数の少ないサウンドの隙間が作りだす空気が54のサウンドの売りであるが、のっけからハウリングするギターフレーズとダイナミックな攻撃力をもったリフで攻めてくる。ビンゴ氏のスポーキンなボーカルはミクスチャーロック的な攻撃力と説得力をもっているし、リズム隊の鉄壁っぷりは健在!しかし空間を一気に埋め尽くす音が雪崩れ込む瞬間にまた空気を変化させていく。第4曲「cracked」や第6曲「that's the way」の様にタイトなリズムとダンサブルなリフが絡みつく曲は新機軸を感じる部分だ。躍動感のあるベースとは対照的にタイトに変拍子を乗りこなすボボ氏のドラム。しかし今まで以上にビートのハネとコシの強さを見せ、54風のダンスチューンに仕上げている。今までのサウンドの緊張感は壊さずにサウンドの幅を広げたのは見事!最初期の名曲のセルフカバーである第5曲「ceiling (detuned)」や過去の54に近い感触の哀愁ナンバーである第7曲「bloomin' idigod」でもダイレクトにビルドアップされたサウンドの進化をしっかりと感じさせる物になっている。そして名曲「Life」のセルフカバーである第8曲「life is octopus」にて今作に於ける54-71の進化を見事に総括している。以前よりもダイナミックかつヘビィになったのに、以前以上にヒリヒリとした空気感。ビンゴ氏はより絶唱し、ノイジーなまま今作は終わる。
54は完全にオリジナルな音を鳴らしているが故に、終着点のサウンドになっている様にも思えた。しかしよりシンプルに、よりヘビィにバンドとしての音を鍛え上げた事によって、更なる進化を遂げたと言えるのではないだろうか。ヘビィロック的な強さも手に入れた今作は、長い沈黙を破るに相応しい傑作となった。