■The Sleeping Eye/Iron Age
![]() | Sleeping Eye (2009/08/04) Iron Age 商品詳細を見る |
テキサス州出身のクロスオーバーメタルバンドであるIron Ageの09年発表の2nd。元々はハードコアをやっていた奴等が集まり結成されたバンドであり、そのハードコアの血肉を感じさせながらも、スラッシュ・ストーナー・ドゥーム、更には日本のロック・パンク・ハードコアにも影響を受けているらしい彼等は、それらをクロスオーバーさせながらも、原始的なメタル・ハードコアの暴力を体現したクロスオーバーであり粗暴な傑作を生み出した。
先ず今作を聴くと色々なバンドを思い浮かべる人は多いと思う。BLACK SABBATHといったヘビィロックの創始者から、スラッシュメタルの創始者に数えられるバンド達、 OBITUARYやSleep、それらのバンドへのリスペクトを感じさせながらも、それらの模倣にはなってないし、ただ色々な要素を組み合わせただけでは無く自らの血肉にし、それをドゥーミーでヘビィで引き摺るグルーブを持ちながらスラッシュメタルやハードコアの疾走する暴力的なサウンドを鳴らすという活字にしてみると矛盾している様に見えるグルーブとアンサンブルを完成させているのだ。ギターソロの入れ方やリフの進行なんかは正に王道のスラッシュメタルやハードコアメタルのそれだが、その音階は限りなくドゥーミーだし、刻まれるリフに反してビートをミドルテンポだったり、少し長めの尺の楽曲も多かったり、スラッシュなリフで攻めまくったと思えば急にドゥームになり読経的なボーカルを入れてきたりとパワフルでありながらも複雑に展開していく。ボーカルもブルータルであり彼等のスラッシュでデスなサウンドと相性は抜群。正統派のサウンドとマニアックなドゥームさやブルータルさ煙たさを自在に行き来し、それぞれの要素が持つ攻撃性や危険さを全て飲み込み、それをハードコアや正統派スラッシュに回帰させる事に成功しているからこそ爆音の中で蠢く暴力性は確かな説得力を持っている。音楽性は少し違うけどHIGH ON FIREの様にグルーブが生み出すサイケデリックさとストレートなヘビィロック・ハードコアの原始の力がタッグを組み攻め立て、ジャンルとかそういった概念を放棄し、ただ純粋に粗暴かつ格好良いサウンドを生み出しているのだ。6分間の中で自在に音を行き来しながらもその暴力性は決して揺るがない第1曲「Sleeping Eye of the Watcher」、煙たいグルーブに満ち非常にドゥーミーな第5曲「A Younger Earth」、第6曲と第7曲で組曲になっており、スラッシュの粗暴さで暴走の限りを尽くした上に巧みにブレイクダウン等をし気付いたら殺伐としたドゥームへと変貌しその痛烈な音塊を容赦無く振り落とす「Arcana」、そして今作を総括する第8曲「The Way is Narrow」には完全に粉砕されてしまった。
本当にあらゆる先人達の持つ攻撃性を貪欲に食らい、それを純度100%で自らのサウンドに消化した彼等の音楽はスラッシュ・デス愛好家、ドゥーム好き、ハードコアフリークスを虜にするだけの射程距離の広さを持っているし、多くの音楽愛好家に支持されると思う。しかしそれ以上にバンドが持っている馬力の強さがこいつらの一番の魅力であるし、その豪腕っぷりには平伏すしか無い。また日本盤ではボーナストラックで我等が日本が誇る伝説的バンドであるFLOWER TRAVELLIN' BANDの「Satori, Pt.1」のカバーも収録されており、そちらも聞き逃せない名カバーとなっている。