■Year One/Adorno

ポルトガルから登場した4人組エモーショナルポストハードコアバンドであるAdornoの07年から08年の間に発表された音源をコンパイルした全9曲入りの編集盤が今作だ。ポルトガルというとあまり馴染みの無い人が多いかもしれないけど、高い楽曲の完成度と激泣きの激エモの歌と旋律、巧みに空間系のエフェクターを駆使し、楽曲の深みをより明確にするアレンジセンス、純度の高いエモーショナルサウンドを聴かせてくれるナイスなバンドだ。
彼等の音楽性は中々ハイブリットな物になっており、DaitroやRaeinの様なメロディアスで青く繊細な激情系ハードコアの流れと、Kidcrashの様な緻密な音の配列を生かした繊細さと知性を持つエモーショナルロックのバンドの流れも汲んでいるし、2本のギターの絡みなんかはポストハードコアの流れも感じる。実に正統派なエモーショナルロック・激情系ハードコアの流れを受け継ぐバンドでありながら、その巧みなアレンジセンスや絶妙に取り入れられるキメやブレイクやギターフレーズの音作りといった細かい部分にまで気を配りまくったアレンジなんかは本当に緻密だし、非常に知性豊かでIQ高めな音を鳴らしている。しかし彼等に説教臭い要素は全くと言って良いほどに感じられない。泣き叫びながら心の奥深くにまで突き刺さるボーカル、そして楽曲の骨組みとなっている旋律がとにかく聴き手を泣かしにかかってきている。緻密なセンスを持ちながらも、それを最大限に生かした歌心と泣きに満ちた激情サウンドは本当に心の琴線を嫌になる位に刺激してくるし、そしてもうあざとさすら感じてしまう泣きのアルペジオの流線型から一気に感情がフルスロットルになる展開とかエモ・激情好きのツボをムカつく位に分かっているから本当にずるいと思う。
ポルトガルという異国から登場したAdornoだが、彼等もやはり純度の高い激泣きのエモーショナルサウンドを奏でるバンドであり改めてヨーロッパのエモ・激情のレベルの高さを思い知らされてしまった。日本では残念ながらあまり知名度が高くないバンドかもしれないけど、メロディアスな激情系ハードコアやエモ・ポストハードコアを愛する人には本当に150km越えの直球ストレートなバンドだと思うので是非ともチェックして欲しい限りだ。