■Despondent Transponder/Fleeting Joys
![]() | Despondent Transponder (2010/03/11) Fleeting Joys 商品詳細を見る |
アメリカはカルフォルニア州の夫婦ユニットであるFleeting Joysの1stアルバム。クリエイションの創始者であるアラン・マッギーの絶賛もあってUKでも高い人気を誇るユニットであるが、マイブラの登場以降本当に多くのフォロワーを生み出しているシューゲイザーというジャンルの中でもここまで堂々とマイブラの音楽性を継承し、正当な後継者として高い評価を受ける彼等の記念すべき1stアルバム。
彼等の音楽性は男女ツインボーカルという編成や徹底的に甘さを追及した旋律や、浮遊感溢れスロウテンポで霧の様に充満するフィードバックノイズの轟音といい本当に正々堂々とマイブラの音楽性を継承している。シューゲイザーとして見ると本当にTHE王道!!と声を大にして言いたくなるし、彼等の音楽性にはマイブラの「Loveless」が根底として存在しているとしか言えない。しかもマイブラの中でも「Only Shallow」といった王道の必殺ナンバーの流れを継承したかの様な楽曲が並ぶ。女性ボーカルの今にも消え入りそうな儚い歌声もそうだし、録音まで「Loveless」の影響を色濃く感じさせる物になっているのだ。こうやって書いているとマイブラの単なる物真似フォロワーに見えてしまうかもしれないけれど、彼等はフォロワーであるのは間違いないが決して単なる物真似ユニットではない。確かに第1曲「The Breakup」は特にマイブラの未発表音源なんじゃねえかって言いたくなりそうなまでにマイブラしてる楽曲だったりするけど、彼等の凄みは本当に本質の本質までマイブラの音楽性を研究し、愛したからこそ生み出せる21世紀に突入してからのシューゲイザーユニットのマイブラというシューゲイザーの帝王に対する熱烈なラブレターとして今作は確かに存在している。彼等以外にもマイブラの影響を受けたバンドは星の数ほど存在してるし、それらのバンドもマイブラの音楽性に憧れ近づこうとしていた。しかし良質なバンドはその流れに身を置きながらも自らのオリジナリティを追及しシューゲイザーというジャンルは細分化していったし、本当にただの劣化コピーで終わったバンドも多いと思う。しかし彼等は正々堂々とマイブラに戦いを挑んだユニットであり、その結果「Loveless」の最終曲である「soon」から繋がる様な作品を生み出したと思う。そしてなによりも彼等の楽曲は本当に単純にシューゲイザーとして甘く濃密で中毒性溢れる旋律に満ちているのだ、録音やフィードバックノイズの作り方がマイブラその物だったとしても、マイブラの持つ霧の中の轟音サウンドというフォーマットを完全に自らの物にし、その上でマイブラの楽曲の根底にある旋律の甘さと美しさを忘れずに継承し、単純な曲の良さで勝負出来るだけの楽曲の完成度を手に入れたのだ。
後にリリースされた2ndである「OCCULT RADIANCE」ではマイブラの流れを受け継ぎながらもより音の幅を広げ攻撃性を高め単なるマイブラ二世じゃない事を彼等は証明したが、それでも今作の価値はやはり大きいと思う。決して色褪せないマイブラの音楽的功績を現代に伝える語り部的作品でもあるし、郷愁の胸を焼きつかされる感傷が今作には確かに存在している。その胸が込み上げる感覚が今作には確かにあるし、それがある時点で本当に十分だと思う。21世紀版「Loveless」として唯一無二の後継者としてFleeting Joysは今作を作り上げたのだ。