■Tagad/Tesa

バルト三国の一つであるラトビアから届けられた美しい激重狂騒曲、Tesaはトリオ編成とは思えない重厚なアンサンブルを美しく鳴らしながらも、それを激情・ポストメタルを通し、振り注ぐ激重の轟きとして鳴らすバンドだ。今作はTesaの06年発表の1stアルバムであり、遠い異国から美と激重を高めたポストメタル作品となっている。Part17からPart77まで組曲の様な7曲が織り成す壮大な物語。
楽曲自体はポストメタル系のバンドでは非常に珍しくコンパクトな楽曲が多く、必要な音のみを絞り出し、それで楽曲は構成されているが、その無駄の全く無い洗練されたフォルムの中で、嵐の様な音が吹き荒れているのが彼等のサウンドだ。序盤ではアルペジオのフレーズを巧みに盛り込みつつもいきなり美轟音吹き荒れる展開がクライマックスへと爆走しドラマティックな旋律と共に胸を打ち抜きながらも、ポストメタルらしい振り落とす激重リフの重みを全く忘れず、旋律の持つ美とアンサンブルの持つ重厚さとリフとビートの重みが三位一体で攻めてくるから本当に堪らない。そして美轟音からスラッジ・激情の禍々しさまで雪崩れ込みながら、不穏のフレーズのメロウさを際立たせ焦燥感を掻き立て、暴発のパートでその膨張させたエネルギーを全放出するというスタイルは王道の轟音系ポストロックやポストメタルならではの構成ではあるが、ハードコアとポストメタルを行き来しながら、その点と点は確かな一つの線になる。また随所に盛り込まれている空間系エフェクターによるハウリング音の膨張がそのドラマティックさの中に混沌を落とし込んでいる点も見逃せない。作品も後半に入ると美しい旋律をより前面に押し出しポストロック要素の強くなったパートも出てくるが、そこに説教臭さは微塵も無く、反復するフレーズが音圧を強め、そして混沌へと雪崩れ込む。反復するフレーズの高揚と共に増す破壊力を生かし、ポストメタルから宇宙へと雪崩れ込む第5曲「Part 57」は本当に今作の中でも格別の1曲に仕上がっていると言えるだろう。そして終盤は激情の色をより高めた第6曲「Part 67」でその美しい余韻すら吹き飛ばす暴力性と、マス要素を盛り込んだギターフレーズが焦らしつつも、突き抜ける音と共に宇宙へと飛び出したその音を爆発させ、最終曲「Part 77」では静謐さを前面に押し出し、そこから轟音系ポストへと繋がり、飛び散る音の破片が美しい光を生み出すという何ともニクい結末を迎える。
贅肉を削ぎ落とし、シャープな楽曲構成の方法論を取りながらも、随所に盛り込んだ激情やポストロックのエッセンスを巧みに生かし、エネルギーを膨張させては爆発させるを繰り返すTesaのポストメタルサウンドは大きな感動と破壊力を美しく鳴らし、それが聴き手の心臓を確実に貫いてくる。旧ソ連のポストメタル・激情はRekaをはじめとして本当に良質なバンドが多いが、彼等もまたそんな猛者達に負けず劣らず魅力的な音を鳴らしている。また今作を含む今までにリリースした作品はは下記リンクのオフィシャルサイトで試聴&フリーダウンロードが可能になっている。
Tesaオフィシャルサイト