■The Caution Children/The Caution Children

アメリカの美し過ぎる激情系ハードコアバンドであるThe Caution Children。09年にはThe Black Heart Rebellionと共に来日を果たし、日本でも知名度を上げたが、今作は08年リリースの彼等の記念すべき1stアルバムである。日本盤のリリースは勿論Tokyo Jupiterからであり、Tokyo Jupiterの最初期のリリース作品でもある。最早ハードコアを越え繊細な美しさを激情として鳴らす彼等の音は既に今作から確かに存在している。
第1曲からクリアな旋律が静かに慣らされ、そこからクリアなままバーストするという彼等ならではなハードコアの手法は健在。ヘビィさや殺気を削ぎ落とし、あくまでもクリアで繊細な旋律の美しさのバーストとしてのハードコアというスタイルを彼等は取っており、そして殆ど轟音系ポストロックにまで足を踏み入れたサウンドスケープと静寂の余韻を最大限に生かしたストーリー性豊かな楽曲構成。静寂の中でリリカルな旋律が波打つ波紋の様に広がり、そこに情感豊かなボーカルが時折入り、感情を刺激していく。静謐さの中で輝きを高めてここぞという瞬間にその輝きを加速させる彼等の音は本当にクリアだし、ベタな言い方になってしまうけれどもここまで「光」や「夜明け」という単語が思い浮かぶハードコアも中々に稀有な存在だとも思えてくる。第7曲「Our Movement In Squares」は特にそのスケールの大きさを知らしめる名曲になっており、のっけからクライマックスとも言うべき激情の光が降り注ぎ、そこに躍動を加速させよりダイナミックな展開を見せ、新たなる誕生への瞬間の期待を高めつつも聴覚には常に美しい旋律が降り注ぎ、アコースティックギターの旋律がポストロック的な展開を見せ、最後は再び光に満ちた激情へと雪崩れ込み壮大なクライマックスを迎える名曲になっている。ハードコアらしい粗暴さを全て捨て去りながらも、自らの激情を徹底して美しく華麗に鳴らす彼等の音には本当に胸が締め付けられるし、それはひそく感動的な物である。
現在のEnvy好きなら間違いなく琴線に触れるであろうハードコアすら捨てた美しくメロウなハードコア。ポストロックの領域に足を踏み入れながらも、その美しい旋律を暴発させる事による彼等のハードコアはとにかく聴き手の心をクリアにしてくれる筈だ。感動的な旋律による涙の音楽。