■Discography 1994-1997/Anasarca
![]() | 94-97 Discography (2002/04/16) Anasarca 商品詳細を見る |
全ての音が泣いている。Anasarcaが放つ激情は言葉にするとその一言に尽きると思う。94年~97年と言う激情系ハードコアがまだ市民権を得ていなかった時代に活動し、僅か3年の活動期間で激情の名曲を残したワシントンDCのバンドであるAnasarca。今作はAnasarcaが僅か3年間の間に残した7曲の名曲を収録したディスコグラフィー盤である。
彼等の音は激情系でありながらもエモの近い感覚を持ち合わせ、かといってメロディアスさを前面に押し出している訳ではなく、金属的なギターの音とストップ&ゴーを繰り返すビートはワシントンのバンドらしいポストハードコアの毛色が相当強く出ているし、ヘビィさで押し切る訳でも、メロウさを過剰に出す訳でも無く、ポストハードコアサウンドを機軸にしているからこそ生まれるエモーショナルさが彼等の魅力だ。そして忘れてはいけないのはその泣きの旋律の魅力である。ギターフレーズこそザクザクとしていて荒涼とした物ではあるけれども、その旋律は一々胸に来る切なさがあり、その刹那の瞬間の悲しみや哀愁を一つの激情として体現している。そしてしゃがれ声での叫び、ミドルテンポで進行する楽曲、しかし時にBPMを早めてバーストしたりもするし、そこからテンポを落として緩急を付けたりもする。基本的に本当にポストハードコアその物なサウンドでありながらも、その当時の空気を吸い込み、それを確かな形にしていると思うし、現在でも色褪せない物だ。そして絶妙に絡むコーラスワークがまた楽曲を見事に盛り上げてくれる。特に第1曲「East Bunk Hill」はこのバンドの魅力をダイレクトに伝える名曲だし、第4曲「Stationary People」の硬質なサウンドがバーストし、タイトなギターワークとビートがシンクロしながらも、そこにある蒼い衝動が迸り、次第にメロディアスかつドラマティックになっていく様は思春期の淡い美しさを感じる。特に気に入っているのは第5曲「Enginize」ザクザク進行するギターリフとコーラスのかかったアルペジオの絶妙な絡み、そしてついシンガロングしたくなる激アツなコーラスワーク!!加速する哀愁!!本当に堪らない。
90年代前半から後半にかけて活動したバンドであるし、激情系でありながらもワシントンDCの当時のポストハードコアの空気を思いっきり吸い込んでいるサウンドではあるが、その蒼い旋律と魂の叫びは間違いなく激情であるし、激アツなギターワークとコーラスワークは激情好きだけで無く、エモ好きやポストハードコア好きも確実に虜にすると思う。胸を掻き毟る激情必聴盤だろう。