■Get Some/snot
![]() | Get Some (1997/05/27) Snot 商品詳細を見る |
最早説明不要だと思うし、90年代のヘビィロックを語る上で絶対に外す事の出来ない1枚である。ボーカルのLynnの死によってたった1枚のアルバムで活動を停止してしまったカルフォルニアの伝説的ヘビィロックバンドであるsnotが97年にリリースした唯一のオリジナルアルバム。90年代のPANTERAが作り出したヘビィロックの流れを更新しただけでなく本当の意味でsnotはミクスチャーであった。雑多でありながらsnotがsnotでしか無い証明でもあり、ヘビィロックの歴史に強烈な傷跡を残した。
名刺代わりである第1曲「snot」からこいつらが凡百のバンドが束になっても太刀打ちできないヘビィロックを打ち鳴らしている。ワウを駆使したファンキーなギターとヘビィでありつつもザックリとしたオルタナティブさを感じさせる2本のギターが織り成すリフがヘビィさとグルーブを同時放出し、ゴリゴリのラインを弾き倒すベースの男らしさ、Lynnの怒りと歌心を同居させた素晴らしいボーカル、そして特筆すべきはドラムだと思う。メンバーの中でも郡を抜いて演奏技術が高いだけでなく、乾いたタイトな音を叩きつけながらも、ジャズやファンクのグルーブをヘビィロックに落としつけるだけでなく、オルタナティブロックの直接性も持ち合わせたビートはsnotの核であると同時に、彼等のヘビィロックを基点にした雑多な音を統率し、それを別次元まで引っ張っている。そして第3曲「Joy Ride」は今作屈指のアンセムオブアンセム。疾走感に満ちたサウンドは彼等がヘビィロックとしてだけでなくオルタナの視点から見ても優れたバンドである事を証明するだけでなく、ゴリゴリの音の中にメロディアスさもしっかり入れてくるし、サビでのコーラスワークや終盤のスラップベースのブレイクとか最高にニクい!第4曲「The Box」ではメロウさとシリアスさを前面に押し出し怒りとしてのヘビィロックを体現しているだけでなくsnotの持ち味であるファンキーさとオルタナティブとヘビィの融和という核もしっかり刻み付けているし、ミクスチャー色の強い第7曲「Get Some」の冷え切ったギターフレーズのヒリヒリした緊張感からサビでのヘビィネス大爆発な展開もやたらエモーショナルであるし、今作第2のアンセムオブアンセムである第12曲「Tecato」のごった煮でありながら殺気だった緊張感を保ち、その衝動を殴りつけてくる粗暴さなんか本当に堪らない。そしてラストの第15曲「My Balls」は今作で最もファンキーな1曲。ワウギターにスラップベースを盛り込みつつも直情的なラインを攻めるベース、ビートとグルーブを支配するドラムといったsnotの武器を完全開放し、狂騒のまま終わる。
今作は本当に多くのヘビィロック・ミクスチャーのバンドに影響を与えたと思うし、たった1枚のアルバムしか残していないという事実は残念極まりない。しかしそのたった1枚でヘビィロックを塗り替える大名盤を作り上げてしまったsnotはやはり偉大なバンドであるのは間違いの無い事実だし、snotのトリビュートに参加している面子を見るだけでどれだけのバンドに影響を与えたかは納得出来る筈だ。snotはsnotがsnotでしか無かったから今作が生まれたのも重要な作品なのも必然でしか無い。