■Electric Wolves/Castle

AmenraやKidcrashや日本のMelt-Banana等の猛者の音源をリリースしているInitから投下されたアメリカはサウスダコタのポストメタル・スラッジバンドの06年リリースの3曲入作品。これぞスラッジポストメタルとも言うべき激重のリフとグルーブの洪水が容赦無く押し寄せながらも、その残虐さの中にあるメロウさが非常に魅力的である。予備知識無しでユニオンで購入したが大当たりだった。
こうゆう系統のバンドにしては珍しく収録されてる楽曲は6分台と5分台という尺で、ポストメタル系では短めであるが、それ以上に彼等のサウンドプロダクトにはまず無駄が全く無い。冗長さを完全に排除し、激重のリフとグルーブを直情的に放つ続ける。芸術性や構築美といった要素も勿論高まってはいるけど、それ以上に無駄の無いサウンドが放つ直接的なヘビィネスとうねりの破壊力が突き抜けているのだ。そんな残虐さが際立ちながらも、歪みまくった音色の奥底にある繊細な旋律のメロウさとエモさも魅力の一つであり、楽曲の中に輪郭が明確な泣きのギターソロを挟んで来たりもする。暴虐さでは同じレーベルであるベルギー激重神Amenraに通じる物があるが、もっとシンプルで直接的なアプローチをしており、もっとメロウであるのがこのバンドだ。楽曲構成はポストメタルらしく決してシンプルでは無いのに、リフとグルーブで攻める漆黒の音から生まれるハードコアのドラマがそれを感じさせず、全編に渡って暗黒スラッジから生まれたドラマティックさが際立っているから、かなり聴き易いし感情移入もしやすい音になっていると思う。そんな彼等の魅力が詰まった第1曲「Violate」から吹き飛ばされるし、第2曲「Trepidation」ではタイトなビートと共に、情緒豊かな旋律が黒く咲き乱れ、中盤の怒涛のスラッジ地獄から、終盤ではミドルテンポのダウナーさに引き摺り込まれる。第3曲「Wrath」は今作の中で最も重苦しいグルーブが支配する1曲で、ベースの残響音の重苦しさから、黒の洪水へと雪崩れ込み、その中で激情を見せ付けてくる最もタイトでハードコアな1曲。破壊の限りを尽くしながらも最後は胸を打ち抜く旋律が重苦しくありながらその心を突き刺し押し潰して行く。それぞれの楽曲の完成度も凄い高い。
3曲で18分半と決して長い作品では無いのだけれども、それ以上に濃密なスラッジ系ポストメタルが炸裂しており、緩やかに堕ちる感覚と共に、落下するスラッジリフと、ナヨさ皆無でありながらも、見えてくる情緒豊かな旋律のメロウさと正統派でありつつも、高い完成度を持つバンドであると言える。漆黒の美しさとうねりが支配する激重作品だ。