■Mondo/LVMEN
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チェコが世界に誇る壮大壮絶激重クラシカルバンドであるLVMENの06年発表の2ndアルバム。1stにて既に壮絶な暗黒世界が展開されており、ド肝を抜かれたが、それから6年の歳月を経て作られた今作はそのスケールをより膨張させ、より重くなりながらも、より美しさを加速させ、激情と狂気の一大巨編とも言える1枚になっている。最早Neurosi辺りのバンドにも負けない壮絶な暗黒世界を描いているだけのただ脱帽するしかない一大傑作。
悲壮感漂うポストロック色が前面に出た第1曲からその叙情性と美しさに惚れ惚れさせられる。不穏さを高め、終わり無くモノクロームの情景がスクリーンに映し出される映画を見ている気分にさせられ、それに繋がる第2曲ではその情景すら焼き尽くすお得意の漆黒の暗黒世界の煉獄が全てを飲み込む。今作では所々でオッサンの声によるナレーションが挿入され、作品に一つの映画の様な感覚をもたらし、静謐なポストロックパートの比重も多くなり、その持ち前の旋律の美しさを生かし、一つのストーリーを作り出す要因になっているが、そこから超宇宙レベルの爆音轟音一大スペクタルな激重クラシカル激情系ハードコア絵巻へと突入した瞬間に全てを打ち砕かれる。悲痛すぎる叫びと共に鳴らされる極上の漆黒から放たれる美しい旋律の轟音。そして焦燥感溢れる静謐なポストロックパートへと雪崩れ込み心臓の鼓動を加速させつつも、その余韻に浸からせずに邪悪で不穏なベースラインが闇に引きずり込みながら悲痛な叫びを聴かせ、そしてピアノの音とスラッジなリフが交錯する激カオティックパートへと雪崩れ込んだ末に、最後は高揚感み満ちた轟音リフの嵐で大団円と第2曲からLVMENの本気を叩きつけられてしまう。1stもそうだが、壮大なスケール感を持ちながらも、彼等の音は粗暴なハードコアのカラーも同時に色濃く出してきており、五感を更新するスケールと同時に肉体にも訴えるプリミティブなバンドとしての力量もとにかく半端じゃない。第3曲は悲痛な叫びが絶望感を煽りながらも、よりメロウさが加速したバンドの音が相反しながらも、絶妙な対比を生み出しつつ、轟音系ポストロックの叡智を感じさせる美しく壮大な音塊にハードコアの血肉をブチ込み、光と闇が交じり合うカオスを音楽で生み出し、破滅へと爆走する。また今作は1stに比べると尺がコンパクトになっており、5分台6分台の楽曲が半数であるが、そうなりながらも、冗長さではなく、根本の部分でスケールを感じさせるから凄い。雷鳴の様なリフが渦巻き、焦燥感を加速させる第4曲、今作で最もハードコア色が色濃く出ており、不穏さから激重スラッジが猛威を放ち、カオティックな激情が正面衝突しまくる第5曲と彼等の持ち味である壮大さを持ちながらもハードコアの肉体的美学を感じさせるサウンドも、美しさと壮大なスケールと同様により加速しており、あらゆる要素を極めたが故に極限の彼方へと到達してしまったのだ。そして壮大なクライマックスの乱打の末に放たれる最終曲で、耽美な破滅への輪舞を描く。本当にどこをどうしたらここまでの音を生み出せるのだろうか。ただ震えるしかない。
1stも手放しで大絶賛させて頂いたけど、今作は暗黒の中に光を生み出し、また暗黒を生み出し、完全なる破壊によって新たな誕生を生み出す作品であると個人的に思うのだ。ハードコアを出発点にしながら、それを極めて極限に行き着いた彼等の存在は決して見逃せる物ではないし、本当に別次元と言う言葉がここまで似合うバンドもいないだろう。ポストメタルだとかスラッジだとか激情だとかそういった枠組みなんて最早不要なLVMENにだけに許された音がここにある。