■FREEDOMMUNE 0<ZERO> A NEW ZERO 2012(2012年8月11日)@幕張メッセ

 宇川直宏によるライブストリーミングメディアであるDOMMUNEが2011年3月11日の東日本大震災の復興イベントとして立ち上げたFREEDOMMUNE。数多くのアーティストの競演と、それを全世界に向けての配信での中継という画期的なフェスとして産声を上げた。しかし昨年開催のFREEDOMMUNEは当日に会場の川崎市が悪天候に見舞われ、当日にまさかの中止という結末に終わってしまった。そして今回はそのリベンジとして会場を幕張メッセに移し、より大規模な巨大なフェスとして開催される運びになった。自分も昨年のFREEDOMMUNEに参加する予定だったが、開催中止により涙を飲む結果となってしまったので、今回はるばる幕張まで足を運んだ。17時過ぎには会場の幕張メッセに到着し、18時に開場。開場と同時に既にDJ郡のアクトは開始されていたので急いで最初の目当てであるやけのはらのステージへと足を運んだ。



・やけのはら

 DJ、ラッパー、トラックメイカーとして多岐に渡って活動し、高い人気を誇るやけのはらから僕のFREEDOMMUNEはスタート。今回はDJでのセットで、ライブアクトの前にバッチリ体を温めておきたかった。しかしながら序盤は夏らしい緩やかでゆらゆらとした楽曲を中心に流し、屋内にも関わらず爽やかに体を揺らす清涼剤としてのDJプレイが展開。僕自身はクラブミュージックに関しては本当に無知であるのだが、自分が知ってる知らないとか関係無しに、音楽で空気を確かに作れる彼の力量は流石の一言だと思う。そしてトラックの熱量は徐々にテンションを上げて、よりバキバキになる踊れる方向へとシフト。緩やかな空気からのダンスホールへの転換の流れは自然でありながら確かな流れを作り出し、体を動かさずにはいれなかった。凄く楽しいDJだったがライブステージの方の開場が近づいていたので40分程楽しんで離脱。しかし最初から熱いDJだったなあ。



・やくしまるえつこ

 ライブステージであるMAKUHARI BUDOKANの開場待ちの列に並ぶと、聴こえてくるのはドープでドローンなアンビエントなノイズに乗せられる、相対性理論のやくしまるえつこの朗読。そして開場しフロアに入場したら再びやくしまるえつこの朗読が中継されているではないか。今回は夏名漱石作品の朗読と共に、自らの生体データをリアルタイム中継で参加という試みで、やくしまるの心拍数や脈拍を元にアンビエントなトラックを生み出し、それに乗せてまた朗読。確かに試み自体は面白いとは思うけど、ぶっちゃけ変に気取った事やってる様に見えてしまって少し退屈だったと正直に言っておく。どうせなら相対性理論なりソロなりのライブセットで出演して欲しかったなあというのが正直な感想。でもイベントのコンセプト的にはありなのかもしれない。



・タコ

 そして間髪入れずにタコのアクトへ。謎の寸劇からタコの首謀者である山崎春美が登場し、ロリータ順子役として今回参加している女性ボーカリスト鎖帷子レイコ、そして「すみませんでした。」の一言から1曲目はまさかまさかの1stの名曲である「赤い旅団」!!!!!本来ズタズタに切り刻まれたこの楽曲を完全にバンドサウンドにアップデートして演奏し、一気にテンションは最高潮へ。80年代の不定形音楽ユニットとして伝説になっていたタコが、完全なるバンドサウンドで蘇り、統率感皆無だった楽曲郡を現代の形にして蘇らせる。言うならば僕たちが体験出来なかった80年代のアンダーグラウンド・サブカルチャーの狂騒を懐古主義では無く、2012年の物として完全に蘇らせていたのだ。ファンキーさとハードコアパンクさを前面に出し、アングラとかそうゆう物すら抜きにした分かり易い最高の形でのタコの組蘇生は最高の形で成し遂げられていたと思う。佐藤薫を加えての「な・い・しょ・のエンペラーマジック」でのピアノ代わりの音階無視のギターソロにも上がったし、ラストはJOJO広重を加えての狂乱とノイズと奇声が木霊するセッションから「宇宙人の春」という素晴らしい終わり方。確かにタコは80年代の伝説ではあるが、それ抜きにして2012年の新型パンクとして間違いなくタコは存在していた。圧巻の一言。数多くの名曲を2012年の物として蘇生させる40分であった。



・非常階段

 そしてはノイズ界の帝王であるJOJO広重率いる非常階段へ!早速インプロ的に乱打されるドラムと共に突き抜けるノイズの洪水が全てを焼き尽くす。しかしそのノイズはやたらクリアだし、非常に聞き易い物になっていたのは印象的であった。本来なら不快にしかならないノイズを、不快さを残しつつも分かり易いロック色のある物として放出してる事もそうだが、それ以上にJOJO広重氏の一挙一動の湧き上がる歓声。JOJO広重はある種のロックスターなのだろう。アングラのカリスマであるからこそ魅せる貫禄のノイズ絵巻に心が高ぶってしまう。そしてその何をするか分からないという要素を一つのエンターテイメントにしているのも非常階段の魅力であり、JOJO氏は早々にギターを破壊、そして普通にSGに交換していたりというお約束から、終盤にもんじゅ君のキグルミがステージに登場しまさかの「もんじゅ階段」へ!!ノイズギターを放出しながらもんじゅ君と戯れるJOJO氏という異次元の後継にテンションはクライマックス。アクト自体は長くは無かったが、あっという間に突き抜ける非常階段はまさにキングオブノイズの名に相応しいと改めて思った。



・salyu x salyu with 小山田圭吾+鈴木正人+あらきゆうこ

 そして引き続きMAKUHARI BUDOKNAにてsalyu x salyuのアクト。salyuとsalyuと同じ髪型で同じ衣装の3人のコーラスのメンバーが4人並び、まるでsalyuが4人いるかの様な佇まいのニクさ。そして不規則な輪唱から始まる「ただのともだち」からアクトはスタート。予想以上に最小限にまだ抑えた音数はsalyuのボーカルを最大限に生かす為の楽曲構成であり、あらきゆうこのドラムが静かにボトムを作り上げる。ファンクやポップスを飲み込んだ音は正に小山田圭吾ならでは。クリアな音と共に導くsalyuの歌声がとにかく澄み切っていて、声の力で会場をクリアな空気にするという別格な時間を作り出していた。同じステージでタコや非常階段という狂騒の時間が繰り広げられていたが、それを完全に打ち消し、純粋なポップネスが至福の音と歌を届ける。ファンキーな楽曲で踊らせながらも、ソウルフルで透明度に満ちた一時間は本当に心が豊かになる瞬間であった。



・不失者

 そしてそろそろ日付が変わろうとする時間に不失者のアクト。これだけ大きいステージで不失者が見れるというのも驚きだが、ベースが元ゆらゆら帝国の亀川千代氏!!!!!そして始まった不失者のアクトだが、ベースとドラムとギターボーカルという編成の限界の限界に挑み、ギリギリでロックのフォーマットを保ちながらズタズタになったサウンドフォーマットで繰り出される極北の音。灰野氏はアンプ3台でヒステリックなノイズを繰り出し、そして叫ぶ。時間軸は歪み、全てを切り裂くギターとボーカルの悲壮感と緊張感にただ立ち尽くし静かにそれを見守るしかなかった。ギターを使用しない、ベースとドラムのみの楽曲では、ただ灰野氏の狂気の叫びが木霊する。難解ではあるが、それでもどこかに掴み所を用意してはいるし、何よりも空気を凍りつかせる冷徹さの規格がどこまでも徹底していた。流石に一時間は少し疲れてしまったが、それでも極限世界には圧倒された。



・小室哲哉

 そして一時代を築いたTKのアクトへ、フロアはこの日最大の超満員でステージに並べられたシンセのよる要塞セットだけで否応無しに期待は高まる。そして始まった瞬間のギラギラした極彩色のシンセの音色の洪水と、猿でも乗れるバキバキのビートの音圧が攻めてくる。一気にフロアは最高潮に陥り、ダンス天国へ!!時代を築いた人間だからこそ、多くの人々を楽しませるという点に関しては本当にストイックだと思うし、徹底しているからこそのTKサウンドの真髄が全開になっていた。そしてTM時代の代表曲である「Get Wild」でフロアのボルテージはMAXに!!僕自身も飛び跳ねたりしながら踊り狂ったし、TKサウンドにキヨシローの名曲「JUMP」をマッシュアップしたり、浜ちゃんだったりと伝家の宝刀をこれでもかと繰り出しまくるサービス精神には本当に感服であった。間違いなく今回のベストアクトであったし、ここで大分体力を使ってしまった。



・七尾旅人

 いよいよ終盤に差し掛かったという時間で七尾旅人のアクト。序盤は同じステージでアクトを繰り広げたTK作曲の華原朋美の代表曲である「I'm proud」と鈴木あみの代表曲である「Be Together]を弾き語りするという謎な離れ業を繰り出す。TKリスペクトなのか煽りなのか分からない謎のスタート、その後は電気グルーヴの名曲「虹」を弾き語りし、名曲をより心に染み渡る物へとしていた。どこまでも掴めない歌うたいは、その後も緩くマイペースに自分の楽曲をただ淡々と弾き語っていく。シンプルだからこそ響く優しい歌に、長丁場のイベントで疲れを見せていた人もほっこりしていただろうし、優しさだけでなく、確かな強さも旅人の歌には存在していたとも思う。そしてラストはやけのはらが参加し「Rollin' Rollin'」を披露。終わりに近づくイベントの中でこのアンセムオブアンセムは卑怯過ぎるけど、終わり行く夜にそれぞれが想いを馳せたのではないだろうか。



・Manuel Göttsching

 そして大トリはクラウトロック・テクノのゴッドファーザーであるManuel Göttsching。永遠のマスターピースである「E2-E4」を再現する「E3-E11」のセット。爽やかで瑞々しい音色が終わり無くループし、世界を浄化する音色の反復の美学を徹底して突き詰めたから生まれた大作の完全再現。本当に音が気持ちよすぎて堪らなかったけれど、流石にオールナイトのイベントのトリだったので体力的に完全に限界を迎えていたので30分程観て、始発に合わせて会場を後にする事に。もっと早い時間に出てくれたらもっと楽しめたのにっていうのが正直な感想ではあったけれども、たった30分の「E3-E11]でも、Manuel Göttschingの生み出した名曲を味わえたのは幸福だと思う。そして帰りの電車でやっぱ無理してでも最後まで観れば良かったと思ったのは言うまでも無い。



 そんな感じで約12時間に渡るイベントをマイペースながらに満喫させて頂きました。無料フェスっていうのもあってか、一部の客のマナーの悪さには少しうんざりだったが(禁煙のフロアで煙草吸ってるアホがいたのは流石に愕然とした)、それでも素晴らしい音を楽しむ濃密な夏を過ごさせて頂きました。少しでも足しになればと復興の募金の方にも寄付をさせて頂き(幼女が持っていた募金箱に迷わずお金を入れたのは言うまでもない)、楽しい夏の一大イベントになったと思います。ただオールナイトのイベントに慣れてないのもありまして、後半は結構体調悪くなってしまったのだけが惜しい。一先ず宇川さん本当にお疲れ様です!!
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