■Ataraxia/Taraxis/Pelicam
![]() | Ataraxia/Taraxis (2012/04/10) Pelican 商品詳細を見る |
ポストメタルを語る上で絶対に外せないバンドであるPelican、ISIS級の人気をこの日本でも誇り、多くの支持者を獲得している彼等だが、多くの人が待ちに待てった2012年リリースの新作EP。傑作4th以来約2年半振りの音源という事もあって本当に多くの人が待ち望んでた彼等の最新作はリリカルかつタイトでヘビィなインスト世界というもう安定してPelicanな音が4曲収録されている。
今回は今までに無い位楽曲がコンパクトで、4曲で約18分という非常にタイトな作品になっている。しかしだからと言って彼等のリリカルさと屈強なアンサンブルは全く揺らがない。第1曲「Ataraxia」少しどんよりとした電子音を取り入れつつも、アコギとキーボードをフューチャーした楽曲で、郷愁と哀愁が静かに流れる1曲、彼等らしいリリカルさと情緒豊かさはやはり健在ではあるけれど、これは新たなアプローチであると思えるし、静謐でありながら水辺の波紋の様に静かにスケールが広がって行く様はやけに物悲しくありながらも美しい儚さを持っている。しかし第2曲「Lathe Biosas」ではもう安定していつものPelicanが炸裂。ヘビィでタイトな4人のアンサンブルの屈強さは楽曲がコンパクトになった事によって更に引き締まり、絶妙なキメとコンパクトな尺の中でもきっちり一つのストーリーを描く表現力、ヘビィでメロウなサウンドが咲き乱れる様は正にPelican節としか言えない彼等の魅力であり、今作でもそれは健在であり更に風格や余裕すら感じさせるレベルだと思う。第3曲「Parasite Colony」ではより重くスラッジさを加速させ、ダウンテンポの重いグルーブを軸に展開する1曲だが、そんな楽曲でも持ち前のリリカルな旋律は全く薄くなってないし、寧ろその重みとリリカルさの対比を効果的に活用している。最終曲「Taraxis」ではアコギのさわやかで涼しげな音色と、不協和音でありながらも妙なリリカルさを持ったエレキが絶妙に調和し、揺らぐ不穏さを演出、その独特の叙情の波から重みを加速させて終盤ではバキバキに歪んだサウンドに変貌し、一気に鉄槌を下すというダイナミックな締めくくりを見せる。
4曲共それぞれアプローチこそは違うが、それでも作品として非常に引き締まったフォルムを持っているし、ポストメタルの雄の貫禄を見せ付けるには十分な作品であろう。今回はEPでの音源リリースではあるが、今作を聴いて来るべき次回作ではどの様な進化を彼等が見せてくれるか楽しみになる1枚。