■Split/heaven in her arms×yumi

国内激情最高峰として名高いheaven in her arms。2ndアルバム「幻月」以降は精力的に海外でもライブを行っていたりする彼等だが2012年に入ってリリースされた新音源はシンガポールの激情系ハードコアバンドであるyumiとの7インチスプリットであり、今作ではそれぞれが1曲ずつ提供する形となっている。プレスは300枚限定。そしてそれぞれがあまりにも美しい激情を見せてくれる1枚となった。
まずheaven in her armsは「白夜の再結晶」という新曲を提供。昨年リリースされたAussitôt Mortとのスプリットではかなりカオティックハードコアに振り切れた楽曲を提供していたが、この「白夜の再結晶」はHIHA至上最も美しい1曲と言って良いかもしれない完成度を誇っている。スケールの大きさは2ndである「幻月」の流れを受け継ぎながらもピアノの音をフューチャーし、歪みながらもクリアで美しい音色が交錯し、楽曲の後半まではケント氏はポエトリーリーディングを披露。徐々に歪む音色がスケールを加速させシューゲイジングして行く様は彼等の名曲である「赤い夢」を彷彿とさせるけれども、ケント氏がハイトーンのシャウトを見せた瞬間に、それらの音が光を描く轟音としてタイトルに相応しい美しい純白の結晶を生み出していく。驚きなのが今までは徹底して赤黒い闇の中から美しさを見せていたHIHAがここまで光を感じさせる楽曲を生み出したっていう点だ、相変わらず楽曲その物はシリアスではあるけれども、歪みながらも3本のギターが持つ輝きが反射し合っている様のスケールは圧倒的だ。だからこそこれから先にリリースされるであろう3rdアルバムが非常に楽しみで仕方が無い。
一方のyumiであるが、僕は今作で初めて彼等の存在を知ったのだけれど、激情系であると同時にポストブラックメタルを感じさせるトレモロリフと叫びは中々にダークで良い。トレモロリフの洪水から始まりつつも、静謐なパートもしっかりと盛り込んできたり、その旋律は紛れも無く激情系ハードコアのそれには間違いは無い。そしてそこから暴発するパートへ突入するカタルシスは中々の物がある。DeafheavenやGottesmorderみたいにポストブラックの中から激情を感じさせたり、Coholみたいなブラックメタルを前面に出しながらの激情とは違って、あくまでも激情系ハードコアのフォーマットの中でポストブラックの色をアクセントに加えているといった感じの印象だ。だからこそストレートに悲壮感が伝わってくるし、同時にそのダークさを粗暴なハードコアとして鳴らしつつもスケール感を同時に演出も出来ていたりする。これは予想外に良いバンドだったと思うし、これからも色々チェックしていくつもりだ。
たった2曲入りの7インチではあるが、どちらも素晴らしい激情系ハードコアを聴かせてくれる1枚であるし、今作にはダウンロードコードも付属されているからレコードプレイヤーを所持してない人にも是非とも手にとって欲しい作品だと思う。正直に言うとHIHAの新曲目当てで今作を購入したが、HIHAは新たな進化を感じさせる必殺の1曲を提供しているし、yumiも近年東南アジアで地味に盛り上がり始めてる激情系ハードコアシーンの真髄を感じさせるナイスな1曲を提供したと思う。それぞれのバンドの今後のアクションには是非とも期待したい限りだ。