■Tokyo Blue/stereo type
![]() | Tokyo Blue (2012/04/11) stereo type 商品詳細を見る |
静岡県三島市にて結成された3ピースインストバンドであるstereo typeの2012年リリースの最新2ndアルバム。ミックスとマスタリングは9dwの林田氏が手がけている。1stにて絶妙な平熱と微熱の狭間のエモーショナルさを卓越した演奏技術のスリリングさを用いて表現していた彼等だが、その熱量は変わらず今作では更に深く踏み込み、より幅広くなった彼等の表現に確かな進化を感じさせてくれる作品になっている。
マスロック的要素を飲み込み目まぐるしく変化していく風景を描き、深夜のドライブの移り変わる情景の様なサウンドが今作にも存在しているが、前作はマスロック色の強いサウンドでそれを描いていたが、今作では更にポストロックバンドとしての表現の懐の大きさや渋さといった要素も見せてくれている。第2曲「東京ブルー」では序盤は変則的かつ鉄壁のビートとテクニカルなマスロックを飲み込むギターフレーズで構成された鉄壁のアンサンブルで目まぐるしい展開を見せるというstereo typeならではのサウンドを展開、これまで通りクリーントーン主体のギターの音で構成されているが、絶妙にギターの音色の幅を広げて更なる変化を加えていたりと、ポストロックの叡智を更に盛り込んでいるし、中盤から後半にかけてはスリリングさをより加速させた上でそこから情緒豊かなギターフレーズがエモを生み出しスケールを拡大させながらも、あくまでも壮大にはしないで、平熱の中で微かに膨張する熱みたいな物を感じるのだ。第3曲「隣り合う緑」ではシンセを取り入れたり、終盤で更に轟音系ポストロックなシューゲイジングするギターサウンドをあくまでも彼等の熱量とスケールで見せていたりしているし、よりポストロックバンドとしての幅を広げたのをアピールしつつ、あくまでもスリリングな3ピースならではアンサンブルを基調にしているし、そこにある肉体的なアンサンブルの切れ味は全くブレを感じさせない。第4曲「海ファズ」は特に秀逸な1曲になっており、深海の奥深くから、クリアの視界を徐々に濁らせ、そして最後はそんな深海をファズの歪みまくったサウンドで濁らせまくり、淀んだ情景へと変貌していく。揺らめきを冷徹さで表現するこの曲には彼等の大きな成長が見られる。更に第6曲「午前二時のジャンクション」では打ち込みを導入し、ドリームポップ等の要素を感じさせる楽曲に仕上げているという新たな試みにも挑戦している。そこからスリリングさを全開にした第7曲「飛ぶ鳥と共に走れ」へと雪崩れ込む流れは個人的にかなり好きだったりする。ディスコードかつ冷徹なギターワークが冴えまくっている第9曲「絶望病」、そして緩やかに引いたと思えばまた焦燥感へと変貌する第10曲「渋谷まで」のエンディングも寄せては返す今作の流れを見事に締めくくっている。
今作で彼等はバンドとして大きな前進を果たしたと思うし、国内ポストロック・マスロックのバンド勢の中で飛び抜けた実力を持つ彼等が更なる飛躍を見せるのはもう間違いの無い確定事項だと思うし、「Tokyo Blue」というタイトル通り、深夜の東京の情景を描いたかの様な今作は平熱の中の狂気をアンサンブルで描く彼等だからこそ生み出せた作品だと言えるだろう。この切れ味の鋭さはやはりstereo typeならではである。