■Skylight/Atoma
![]() | Skylight (2012/04/03) Atoma 商品詳細を見る |
スウェーデンのSlumberというデスメタルバンドの解散によってそのSlumberのメンバーを中心に結成されたゴシックメタルバンドであるAtomaの2012年リリースの1stアルバム。僕はSlumberの方は未聴ではあるが、耽美で開放感に満ちた神秘的な音を鳴らしており、メタル要素も味付け程度にはあったりはするが、ゴシックの空気を持ちながらも、高揚感に満ちたサウンドスケープで宇宙的サウンドを鳴らす作品になっている。
イントロダクション的な位置にある第1曲「Atoma」から異次元への幕開けを告げており、パーカッシブなビートと、やたら壮大なストリングス的な音色等を用いており、途中から打ち込みの電子音も入り込み、そこにはまろやかで耽美な歌声が入り込むというなんとも異質なオープニング。第2曲「Skylight」にてそのスケールを拡大。やり過ぎな位に壮大なシンセの音色と、手数多目で攻めるドラムが楽曲を引っ張り、グロウルボイスを用いるというゴシックメタルバンドらしい要素を持っていながら、クリーントーンで伸びやかに歌い上げるパートになるとおぞましさは鳴りを潜めて、一気に美しい旋律が輝き始める。メタリックなバッキングのリフ等を用いてはいるけど、メインはシンセとリードギターの旋律だし、5分間の中で明確な起承転結を発揮し、非常にドラマティックに仕上げている事もあって、メタラー以外にも受け入れられる要素は十分にある必殺の1曲に仕上がっている。ゴシックメタルらしい、やり過ぎ感がある泣きメロを用いていながら、それを緻密なアレンジによって宇宙的サウンドの宇宙へと導く手腕が発揮されてる。続く第3曲「Hole In The Sky」ではメタリックなバッキングとシューゲイジングするトレモロの音と、スペーシーなシンセの音色が奇妙な調和を果たし、そこに美しいボーカルが乗り見事な輝きを放つ。第4曲「Highway」では淡く美しい女性ボーカルとデュエットを果たし、ピアノが天上の旋律を奏でて、轟音ギターがそれを加速させていく様には最近のAnathemaにも負けない耽美さと美しさがあると思う。第6曲「Resonance」はシンフォニックさを高めたメタルサウンドを展開し、ゴシックドゥームバンドの様なサウンドスケープをより重厚なアレンジで仕上げ、泣きのギターソロと天から降り注ぐシンセが美しく調和する終盤の流れは鳥肌物だし、第8曲「Rainmen」にてゴシックとシューゲイザーサウンドの見事な融和を果たした壮大な神秘的世界に心が浄化され、聴き手はその美しさにただ酔いしれるだけになってしまうだろう。クラウトロック的シンセの反復と女性ボーカルの歌声から大気中で輝く粒子の舞の様なサウンドへと雪崩れ込む最終曲「Cloud Nine」と、楽曲の幅の広さもありながらも、それを決して冗長にはせずに4分台5分台でまとめて、その中で一つの物語を描くAtomaというバンドの手腕の凄みが発揮された作品になっている。
ゴシックメタル作品ではあるが、シューゲイザーやクラウトロック等の要素も取り入れ、メタリックなリフの重みもありつつも、美しい旋律と過剰なまでに重厚なシンセが見事に高揚感を生み出し、高次元のサウンドスケープを発揮し、肉体と精神の両方に効果的な魂の解放を導く音楽になっている。ゴシックメタルを基盤にはしているが、ゴシックメタルの範疇だけでは収まらないオリジナリティ溢れた作品であると思うし、これは幅広いフリークスの評価される作品では無いかと思う。2012年の注目作品なのは間違いない筈だ。